私たちは「お金のために働く」という呪いにかかっている
1992年にアメリカで出版されたある本のタイトルは、投資とは何かを考えるうえで、今でも私の原点になっています。
"Your Money or Your Life"(※)――直訳すれば「あなたのお金か、あなたの命か」。日本語では少し過激に聞こえるかもしれませんが、この問いは実に核心をついています。私たちは何時間を「お金のために」使い、何時間を「自分のために」使っているのでしょうか。
(※編集部注:書籍『Your Money or Your Life』の邦題は『お金か人生か 給料がなくても豊かになれる9ステップ』(ダイヤモンド社刊))
[参考記事]
●FIREムーブメントの原点となった古典的名著『Your Money or Your Life』(お金か人生か)が説く「最大の満足感をもたらす点」とは?
日本は世界有数の貯蓄大国です。
家計の金融資産は2350兆円を超え、その約半分が現金・預金として眠っています。これだけの金融資産を貯め込むには相当な努力が必要だったでしょうが、その努力は報われているでしょうか。
メガバンクの1年もの定期預金金利が0.4%程度という時代、貯め込んだお金はロクに働いておらず、ただ、眠っているだけです。「お金に働いてもらう」という発想に切り替えなければ、どれだけ節約しても、資産はほとんど増えません。
「FIRE」を「早期引退のライフスタイル論」として捉えるより、「お金との関係を再定義する哲学」と私は捉えている
近年、「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」という概念が注目を集めています。
私はこれを「早期引退のライフスタイル論」として捉えるよりも、「お金との関係を再定義する哲学」と捉えています。
FIREの中核には、年間生活費の25倍の資産を形成し、年4%ずつ取り崩せば資産が尽きない、という計算式があります。もし、年間生活費が360万円なら、9000万円の投資資産があれば「経済的自立」を達成できる計算になります。
もちろん、これは単純化した試算であり、インフレ率や金融市場の変動によって、数字は変わってきます。
しかし、大切なのは数字そのものではなく、「いつまでに・いくら必要か」ということを自分の時間軸で考えるという習慣です。老後の不安に漠然と備えるのではなく、具体的なゴールを設定することで、投資は「ギャンブル」から「計画」に変わるのです。
「時間」は最も平等に与えられた資産であり、株式への長期投資を行えば、特別な才能がなくても誰でも資産形成が可能だ
投資における最大の武器は「時間」です。
複利の力は、時間が長ければ長いほど大きく働きます。100万円を年率5%で運用した場合、10年後には約163万円、20年後には約265万円、30年後には約432万円になります。
増えた分だけを見ると、最初の10年より最後の10年のほうが絶対額がはるかに大きくなっています。これが複利の「後半加速」と呼ばれる性質です。
金融資産に占める現金・預金の比率が高いことからもわかる通り、日本では「投資は怖い」「損するかもしれない」という心理的ハードルが高くなっていると思います。
しかし、データを見ると、米国株式市場は過去100年間で平均年率約10%のリターン(※)を出しています。
(※執筆者&編集者注:S&P500指数およびその前身となる指数の平均年率リターン)
S&P500指数、約100年間の長期推移(S&P500 年足) 出所:TradingView
株式市場は短期では大きく上下することもありますが、10年・20年・30年という長期では、「持ち続けること」が最も確実な戦略だったというのが歴史から見えてくる答えです。米国株式市場の数字を挙げましたが、日本人投資家が米国株へ投資することも今や容易な環境となっています。
「お金のために働く」のではなく、「お金に働いてもらう」──この発想の転換が、長期投資の出発点になるのです。
投資は特別な才能がある人のためだけのものではありません。このことを伝えたい、というのが当コラムを私が書き始めた動機の1つでもありました。
時間を味方につければ、誰でも資産形成は可能です。必要なのは、始めることと、続けることだけです。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』発売中。
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