80年前、田舎の一軒の自動車販売店から始まった会社が、自動車小売企業として全米最大の売上高を誇る存在に
1946年、オレゴン州アシュランドという小さな町で、デボー家が一軒の自動車販売店を開きました。その店の名はリシア・モーターズ(Lithia Motors、ティッカー:LAD)。
同社が1996年に上場したとき、売上高はまだ1.4億ドル。それから30年、買収に次ぐ買収で全米をロールアップし、今や455拠点・54ブランド・売上高376億ドルという、売上高で全米最大の自動車小売企業に育ちました。
80年前に田舎の一軒の店だった存在が、アメリカで売られる新車のおよそ100台に1台を売る存在になった──それ自体が、米国資本主義の1つの物語と言えるでしょう。
リシア・モーターズ公式サイト
予想PERはおよそ9~10倍程度。株式市場は「成長なき市場の、景気に振り回される薄利の車屋」としか評価していない
ところが株式市場での評価は、時価総額わずか72億ドル。予想PERはおよそ9~10倍程度で、S&P500の平均予想PERの半分にも届きません。
リシア・モーターズ(LAD) 3ヵ月足 出所:TradingView
同社の舞台となる米国新車市場ですが、6月の年率換算販売台数こそ1670万台で前年比プラス4.5%と底堅さを見せた一方、年初来ではマイナス2.5%。これは要するに「成長しない市場」です。
おまけに米国を走る車の平均車齢は13年近くまで伸びており、消費者は高い金利と車両価格を前に、古い車に乗り続けているのです。株式市場がこの会社を「成長なき市場の、景気に振り回される薄利の車屋」として値付けするのも、一見すると無理はありません。
年次報告書と業界データをていねいに読み込むと、株式市場が見落としている4つの重大なポイントが見えてくる
しかし、年次報告書(Form 10-K)と業界データをていねいに読み込むと、この見立てには重大な見落としが少なくとも4つあることに気がつきます。
(1)「車を売る会社」は仮の姿──粗利の3分の2は別のところから生まれており、しかも経営陣いわく「その中核部門には処理能力を大きく増やせる余力がまだ眠っている」
(2)経営陣は昨年(2025年)、ある価格で発行済株式の1割超を買い戻した。その価格は、奇しくも今の株価とほぼ同じ
(3)最大の懸念とされるのが米国自動車市場でのEV化進展。しかし、補助金失効後、米国のEV販売シェアは8.1%から5.3%へとむしろ後退し、代わりにハイブリッド車が22%へ急伸した──この数字が意味するもの
(4)そもそもこの業界の株は、昔から1桁台のPERで取引されてきた。では「安さ」の本当の源泉はどこにあるのか──多くの人が誤解しているのはここだ
ウォール街が「車屋」と呼ぶこの会社の中には、まったく別の会社が隠れている
平均車齢13年の「老いた車社会」は、実は車を売る会社ではなく、車を直す会社に追い風です。
そして、直近の決算が減益続きで悲観が支配的な今こそ、この会社の本当の収益構造と資本配分は検証する価値があります。ウォール街が「車屋」と呼ぶこの会社の中に、まったく別の会社が隠れているのです。
本稿は情報提供を目的としたものであり、特定の証券の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』発売中。
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