フィデリティの看板ファンドの1つ、「グロース・オポチュニティーズ・ファンド」はどんな銘柄を買っているのか?
前回の記事では、日本で人気の「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド」(本体は米国の「フィデリティ・アドバイザー・グロース・オポチュニティーズ・ファンド」)を取り上げました(以下、「グロース・オポチュニティーズ・ファンド」と略)。
【前回の記事】
●半導体メモリー株はピークを打ったのか? 否か?──フィデリティの看板ファンドの1つ、「グロース・オポチュニティーズ・ファンド」を分析する【前編】
前回は、このファンドがAI関連銘柄を全体の72%保有しており、この夏までに半導体メモリー株の保有を倍増させ、それが全体の7%を占めるまでになったという話などをご紹介しました。
今回は、このファンドの「クセ」を紹介し、7月末までにファンドが買った銘柄を、読者が調べる価値のある銘柄リストとして挙げてみます。
結論を先に言います。このファンドの成績は良いです。ただし「先回り」型ではなく、「走り出したテーマに乗る」型です。乗るのがうまいファンドはテーマが続く限り強く、テーマが折れる時に差が出ます。
フィデリティ・アドバイザー・グロース・オポチュニティーズ・ファンド公式ページ 出所:フィデリティ公式サイト
(1)グロース・オポチュニティーズ・ファンド、11年分の保有銘柄が語るそのクセとは?
グロース・オポチュニティーズ・ファンドは、ベンチマークを上回る期間が長く、私が分析した結果でも大きな失敗は見当たりませんでした。
ただ、11年分の保有銘柄を並べてみると、その性格が見えてきます。
2022年のエネルギー・資源株への転換、2025年春の現金4%と守りの銘柄、2026年春から夏の半導体メモリー株買い。いずれも相場のテーマが走り出してから乗る動きでした。
この春に買い戻したユナイテッドヘルスとウーバーは、7月末までに再び全売却。判断が早いと言えば聞こえはいいですが、メタの77%暴落を持ち続け、スペースXを上場の7年前から仕込んだウィル・ダノフの「相場が我に返る前に張り、腰を据える」型とは違うことがわかります。
[ウィル・ダノフに関する参考記事]
●「年率14%を35年」──一見、地味な数字がテンバガー以上のものを生む理由とは? ピーター・リンチのDNAを受け継いだウィル・ダノフのコントラ戦略
(2)AI強気派の「教科書」と照らしあわせてみると…
AI強気派の教科書とも言えるのが、元オープンAIのレオポルド・アッシェンブレナーが2024年に書いた論文「シチュエーショナル・アウェアネス(Situational Awareness)」です。
[レオポルド・アッシェンブレナーに関する参考記事]
●【シリーズ連載:エネルギーから知能へ】第1回 人類は大昔からエネルギーを知能に変換してきた。AIが史上初なのはこれを脳を経由せず大規模に行っている点
レオポルド・アッシェンブレナーの論文「シチュエーショナル・アウェアネス(Situational Awareness)」
その主張は、AIへの投資は数兆ドル規模という戦時さながらの産業大動員となり、GPU、データセンター、そして、電力の順に供給が逼迫する、というもの。
グロース・オポチュニティーズ・ファンドはこの論文の「需要の章」──GPUとクラウド大手──は完全に信じています。
一方、論文が本当の制約と呼ぶ電力への投資はファンド全体の2%程度、AI開発企業(アンソロピック、オープンAI)は1%未満。
また、半導体メモリー株への買いは論文の「供給制約」の論理に合っていますが、これは株価が2~3倍になってからの買いで、この夏にかけてそれをさらに2倍にしたことは、前回の記事でも書いた通りです。
【前回の記事】
●半導体メモリー株はピークを打ったのか? 否か?──フィデリティの看板ファンドの1つ、「グロース・オポチュニティーズ・ファンド」を分析する【前編】
方向性は正しく、波に乗るのは一歩遅い──それがこのファンドの性格なのです。
そして、前回の記事にも書きましたが、私自身は半導体メモリー株がサイクルの天井にあると見ています。つまり、この点については、私は論文にもファンドにも逆らう立場であることを明記しておきたいと思います。
(3)新規・積み増しは「調べる価値がある銘柄リスト」
ファンドの買いは、買い推奨ではありません。ただ、年間数百社の経営者に会う調査部門が「今、時間を使う価値がある」と判断したリストではあります。2~7月に当局へ提出された書類や開示資料から、それらの銘柄を拾ってみたいと思います。そして、拾い出した銘柄をいくつかのタイプに分類して以下、ご紹介します。
なお、グロース・オポチュニティーズ・ファンドと並んでコントラファンドもフィデリティの看板ファンドの1つですが、そのコントラファンドと比較した分類も設けました。
[コントラファンドに関する参考記事]
●「年率14%を35年」──一見、地味な数字がテンバガー以上のものを生む理由とは? ピーター・リンチのDNAを受け継いだウィル・ダノフのコントラ戦略
●コントラファンドも揃って持っている銘柄(フィデリティ社内で意見が一致している可能性が高い)
●インテル(INTC)──春に新規買い、夏に倍増させて0.6%。コントラファンドは0.8%。アメリカ国内での半導体製造という国策テーマ。
●セレブラス・システムズ・インク(CBRS)──エヌビディア以外のAI半導体新興企業。IPO直後の0.9%から7月末には2.3%へ。コントラファンドも保有。
●ビザ(V)──1.4%から1.9%へ買い増し、コントラファンドは1.3%。AIブームと無関係に稼ぐ「通行料」ビジネス。
●下げている株を拾った例(逆張りの練習問題)
●インスメッド(INSM)──希少肺疾患の薬。夏に保有を倍近くに。
●ロブロックス(RBLX)──株価が87ドルから47ドルに下がる1年で株数を約6倍に。夏には一部利食いしたが、なお1%。
●「AIの配管」の入れ替え
●減らした銘柄:コヒーレント(COHR)、アリスタ・ネットワークス(ANET)、ルメンタムHD(LITE)、セレスティカ(CLS)。春に一斉に買った光通信・ネットワーク株だが、夏には選別に入っている。
●7月に登場した新顔
●スノーフレーク(SNOW)、データドッグ(DDOG)(春に売却、夏に買い戻し)──保有割合は小さいが、AIでソフトウェア株が「終わる」とは見ていない印。
私が慎重な半導体メモリー株(マイクロン・テクノロジー(MU)、シーゲイト・テクノロジーHD(STX)、ウエスタンデジタル(WDC)、サンディスク(SNDK)、SKハイニックス・インク(SKHY))は、以上のリストからあえて外しています。
ファンドが買ったから正しいとは限りません──それは今回の記事、前後編を通じて言えることです。ただ、このようにしてファンドが買った銘柄を分類、整理して見てみると、読者のみなさんにとって示唆を受ける点があったり、考える材料になったりするのではないかと思います。
詳細な分析結果──全保有銘柄、指数に対するアクティブウェイト、株数ベースの売買──は「paultsai.net」に掲載します。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査に12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語に堪能。米国株などの資産運用について助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』発売中。
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