日本郵政が株式売出しと自社株買いを発表しました。通常、この手の売出し時には海外ヘッジファンドの売り浴びせ(大量に空売り→売出された株で返済する)で暴落するのがお決まりですが、さすがに財務省が睨みを利かせているからか予想に反して株価は維持されています。「なんなら買ってみようか」と思っている人もいるかも知れませんが……刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』の解説を読んでからも遅くはないと思います。
政府が保有している株式を放出、
保有率は80.49%→57%まで下がる
今回の株式売出しは国内分が最大7億9207万株(万株以下は切り捨て、以下同じ)、海外分が最大1億9801万株で合計9億9009万株。発行済み株式数の22.0%に相当します。売出人は財務大臣で、放出されるのは政府保有分です。売出価格は9月25~27日のいずれかの終値で決定。その4日後に払込みが完了します。
さらに日本郵政は、政府保有の日本郵政株を最大1000億円分買い取り(自社株買い)ます。買入期間は9月13~22日で売出価格の決定より微妙に先行していますが、これは政府保有分が日本郵政に移行するだけで需給には影響しないはずです。
この株式売出しと自社株買いによって国庫には1兆4000億円ほどが入る予定で、全額が東日本大震災の復興予算(総額4兆円)の一部に充てられます。
ご存知のように、日本郵政株は上場前は100%政府が保有していました。新規上場時、政府は日本郵政株の11.0%を市場に放出。と同時に、日本郵政は同時上場した子会社のゆうちょ銀行(7182)とかんぽ生命(7181)の株式を売り出して、その売却代金約7300億円で政府保有の日本郵政株(8.51%)を自社株買いしました。これにより国庫には1兆4000億円が入り、政府保有の日本郵政株は80.49%まで下がったわけです。
今回も政府保有株の放出と日本郵政による自社株買いで1兆4000億円が国庫に入り、政府保有の日本郵政株は発行済株式数の57%前後まで下がります。最終的には政府は保有割合をNTT東日本・NTT西日本と同じように33.4%まで(つまりあと24%ほど)下げるはずで、現在の株価が維持されれば復興予算の4兆円を賄えることになります。
日本郵政単独の時価総額は3911億円!?
ゆうちょとかんぽを手放せばやばいことに
ところで今回、日本郵政はゆうちょ銀行とかんぽ生命の売り出しを行いません。そもそも当初の郵政民営化法案では、ゆうちょ銀行とかんぽ生命だけを上場させていずれは全株を売り出し、日本郵政に関しては当面上場させないことになっていたはずです。ところが、新規上場直前に急きょ日本郵政も含めた親子3社同時上場となったため、矛盾が残ってしまっています。
日本郵政は現時点でゆうちょ銀行の74.15%、かんぽ生命の89%を保有しています。9月12日終値で計算した日本郵政の両社の保有分時価総額は、合計5兆7874億円となります。
これに対して同日の日本郵政の時価総額は6兆1785億円で、単純に保有している両社の時価総額を差し引くと3911億円(1株=87円)しか残りません。しかも、日本郵政は株価を維持するために両社から年間1兆円以上の代理業務手数料を吸い上げ、株主に年50円の配当(利回り3.78%、総額2250億円)を支払っています。
今後、日本郵政がゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式を1株も売り出さないならこれでいいのかもしれませんが、当初の予定通りいずれ全株を売却してしまうなら、日本郵政の企業価値は大幅に減少することになります。
もちろん、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式を売却した代金は日本郵政に入りますが、まず間違いなく何らかの形で政府が吸い上げてしまうでしょう。奇跡的に売却代金が日本郵政に残されたとしても、どうせまたロクでもない海外企業の買収に消えてしまいかねません。だったら政府が吸い上げた方がマシです。
今にして思えば、国営企業でありながら日本国民に何の恩恵もないオーストラリアの物流会社をとんでもない高値で買収したり、野村不動産を勝手に買収しようとしたことも、すべてはゆうちょ銀行とかんぽ生命を売却した後の日本郵政の企業価値を(つまり株価を)維持するための「悪あがき」だったことになります。
ということはつまり、日本郵政のトップも財務省など関係官庁も、これから株式を売り出す日本郵政の企業価値が、近い将来大きく棄損してしまう可能性があることを認識していることになります。
そんな日本郵政株が、まもなく最大9億9000万株も売り出されます。
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