闇株新聞[2018年]

トランプ大統領が仕掛ける貿易戦争は米国自身の首を締める!闇株新聞が注視する「米国保護主義の結末」

2018年6月8日公開(2022年3月29日更新)
闇株新聞編集部
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事
闇株新聞プレミアムメールマガジン 20日間無料!

米国がEU、カナダ、メキシコに対し、鉄鋼・アルミの追加輸入関税を発動しました。EUとカナダはすぐさまWTOに提訴するとともに報復措置を発表、メキシコも報復関税を準備中です。アメリカファーストを掲げてなりふり構わぬ国内保護政策に突き進むトランプ政権ですが、刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』は「この措置はいずれ米国自身の首を締めかねない」と解説しています。

トランプ大統領が仕掛ける貿易戦争は米国自身の首を締める! 闇株新聞が注視する「米国保護主義の結末」

「安全保障上の脅威」で一方的な輸入制限
EU・カナダ・メキシコは報復関税で対抗

 米国は6月1日、EU・カナダ・メキシコに対し、猶予していた米国通商拡大法232条(鉄鋼25%・アルミ10%の追加関税)の発動に踏み切りました。鉄鋼メーカーはもちろん鉄鋼を扱う自動車メーカーなども事業戦略の見直しを迫られます。

【トランプ政権の鉄鋼アルミ追加関税】
トランプ政権は3月23日、鉄鋼とアルミニウムの輸入が「安全保障上の脅威になる」との理由で、米国通商拡大法232条の輸入制限を発動しました。全世界が対象で日本や中国には即日実施されましたが、ブラジルや韓国との間では個別に数量規制で合意、EU、カナダ、メキシコに対しては通商交渉での譲歩を求めて適用を猶予していました。

 こうした一方的な輸入制限はWTO(国際貿易機関)のルールに違反しますが、安全保障が理由の場合は例外が認められています。トランプ政権は自動車や自動車部品に対しても同じく「安全保障上の脅威になる」として適用の検討を始めたようです(実施まで約1年の調査期間が必要)。

 これを受けEU、カナダ、メキシコは一斉に対抗措置に動き出しました。EUとカナダはWTOに提訴すると同時にそれぞれ総額28億ユーロ(約3600億円)、最大166億カナダドル(約1兆4000億円)の報復関税を発表、メキシコも鉄鋼や農作物に報復関税を準備しています。

 事態は一気に「貿易戦争」の様相を呈してきました。

 6月1~2日、カナダ西部のウィスラーでG7財務相・中央銀行総裁会議が行われましたが、主題になるはずだった南欧リスクの議論はそっちのけで、輸入制限を拡大した米国に批判が集中しました。

 しかしムニューシン財務長官は「通商問題は担当ではない」と逃げ(ウソです)、麻生財務大臣も「日本もWTO提訴を準備している」と発言していました。

 米国は中国に対して「知的財産権侵害に対する制裁」として、通商法301条により6月15日までに1300品目・500億ドルに相当する中国からの輸入製品に、一律25%の関税を課す準備を進めています。なぜ6月15日かと言えば、米朝首脳会談(6月12日)における中国の介入を牽制するためであり、今後の進展は予断を許しません。

貿易戦争上等のトランプ政権だが
想定超のインフレで経済を疲弊させかねない

 トランプ政権がここまで強硬な通商政策を進めるのは、大統領選(2016年11月)の公約であったこと、また本年11月の中間選挙に向けて支持層の国内産業を保護するためです(トランプ大統領は通商交渉で相手国が「簡単に折れてくる」と見くびっていたフシがあります)。

 だとすると、対米貿易黒字が昨年680億ドルを超え、その大半が自動車関連である日本もさらなるターゲットになることは間違いありません。1年の調査機関の後に自動車と自動車部品に輸入制限がかかるのは、避けられないかもしれません。

 このまま世界が「貿易戦争」に入ってしまうと、世界の金融市場はどうなるでしょう?

 常識的には「米国の貿易赤字が減り、国内産業が活発化するため、米国景気拡大・ドル高・米国株高」となりそうですが、実はそれほど単純ではないかもしれません。

 というのも、国内産業の過度な保護政策は、国際競争力をとっくに失っている米国企業までをも生き返らせてしまいます。その結果、労働者の賃金上昇とインフレがともに加速し、かえって米国経済を疲弊させることになりかねないからです。

 昨年末に成立した大型減税により財政赤字が急拡大している中では、米国経済の正常な成長を超えるインフレになります。

 FRBは2019年末までに政策金利を3%にして打ち止めるとしているようですが、想定以上のインフレとなればそれ以上の利上げが必要となり、今度こそ米国経済にブレーキを掛けてしまうことになるでしょう。

 長期金利は米国経済の見通しを反映しますが、短期金利(政策金利)は人が(FRBメンバーが)決めるもので、経済の実態と長期金利と政策金利の間には常に微妙な時間のずれが必ず出てきます。

 だから政策金利は上げすぎたり上げ足りなかったりして、時には遅れて出てくる経済指標でようやく経済の実態がわかって「大慌てで」修正する必要が出てくることになるのです。

 ここのところのイタリア政局をめぐる騒動で、米国長期金利が2.9%まで低下しているため、逆にそのリスクが後退したようにも思えますが、トランプ政権の強硬な通商政策は、それに加えてインフレによる想定以上の利上げが必要となる可能性も出てきたと考えます。

 一時的にはドル高でも、結果的に米国経済は疲弊して長期的なドル安となる恐れもあります。トランプが仕掛ける「貿易戦争」は、米国が自分自身の首を締める危険なリスクを孕んでいます。

闇株新聞プレミアムメールマガジン 20日間無料!

本連載は金融・経済のプロも愛読し”ネタ元”にしていると評判の刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』で配信された記事から、一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、政治経済や金融の話題を中心に歴史文化や娯楽まで他のメディアでは決して読めない濃くて深くてためになる記事が、毎週1回5本程度の本編と付録、番外編、速達便でお読みいただけます。

闇株新聞PREMIUM

闇株新聞PREMIUM
【発行周期】 毎週月曜日・ほか随時  【価格】 2,552円/月(税込)
闇株新聞PREMIUM 闇株新聞
週刊「闇株新聞」よりもさらに濃密な見解を毎週月曜日にお届けします。ニュースでは教えてくれない世界経済の見解、世間を騒がせている事件の裏側など闇株新聞にしか書けないネタが満載。
お試しはコチラ

 

DPM(ダイヤモンド・プレミアム・メールマガジン)

●DPM(ダイヤモンド・プレミアム・メールマガジン)とは?

金融・経済・ビジネス・投資に役立つタイムリーかつ有益な情報からブログに書けないディープな話まで、多彩な執筆陣がお届けする有料メールマガジンサービス。
初めての方は、購読後20日間無料! 


世の中の仕組みと人生のデザイン
【発行周期】 隔週木曜日  【価格】 864円/月(税込)
世の中の仕組みと人生のデザイン 橘 玲
金融、資産運用などに詳しい作家・橘玲氏が金融市場を含めた「世の中の仕組み」の中で、いかに楽しく(賢く)生きるか(人生のデザイン)をメルマガで伝えます。
お試しはコチラ

堀江 貴文のブログでは言えない話
【発行周期】 毎週月曜日、水曜、ほか随時  【価格】 864円/月(税込)
堀江 貴文のブログでは言えない話 堀江 貴文
巷ではホリエモンなんて呼ばれています。無料の媒体では書けない、とっておきの情報を書いていこうと思っています。メルマガ内公開で質問にも答えます。
お試しはコチラ

 


ダイヤモンド・ザイのお得な定期購読はこちら!
最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード! 新しいFXの自動売買!「世界通貨セレクト」の3つの魅力とは?ザイ編集部が動画で解説!
マネックス証券の公式サイトはこちら 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード! 新しいFXの自動売買!「世界通貨セレクト」の3つの魅力とは?ザイ編集部が動画で解説!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

最強日本株
第1四半期絶好調株
ふるさと納税

10月号8月21日発売
定価950円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[2025年夏の最強日本株]
◎巻頭特集
人気20銘柄の最新判断も!
初速がスゴイ!第1四半期絶好調株
●2025年後半の主役はコレ!快進撃の人気株
●配当&値上がりの両狙い!即買い高配当株
●業績好転で上昇に弾み!急騰狙いの逆襲株

◎第1特集
高利回りも大化けも!
買いの105銘柄を一挙紹介
2025年夏の最強日本株
●買い時は9~10月!日経平均は4万8000円
●強気派VS弱気派の戦い方
●安心して持てる人気株!大型優良株

1位:ソニーグループ 2位:NEC
●配当利回り4%以上がズラリ!高配当株
1位:伊藤ハム米久HD 2位:INPEX
●優待+αが狙える!株主優待株
1位:サイバーエージェント 2位:ラウンドワン
●お手ごろ価格で買え分散も!10万円未満株
1位:ソフトバンク 2位:野村不動産HD
●まだ上がっていない割安株!出遅れ株
1位:SRE HD 2位:ウエストHD
●大化け期待の中小型株!新興市場株
1位:Aiロボティクス 2位:タイミー
●リスクをとって資産増を狙え!1年で2倍株
1位:インティメート・マージャー

◎第2特集
サボったら家族がこんなに困る!
投資家のための終活大全

●「口座情報の共有」が第一歩!財産の一覧表を作ろう
●信用取引やFXは特に注意!株の相続の基本を知ろう

●子どものいない夫婦は要注意!30代でも遺言書は必要!?

◎第3特集
☆☆☆の数を見るだけでOK!
NISAで売れてる投資信託をズバ斬り!
投信格付240

●見直し!NISAで買う投資信託の選び方
●NISAで最安投信!インデックス型
●大きな利益を狙う!アクティブ型
●リスクを抑えられる!バランス型

【別冊付録】
ポイント還元終了の駆け込み直前!
ふるさと納税45品

●ポイント還元が終わる前におトクなサイトで寄附を!
●10月以降はどのサイトで寄附する?
●肉/魚介類/果物野菜/お菓子/日用品

◎連載も充実
​●NEWS:「ホームラン級の爆騰も⁉ 大谷翔平スポンサー株本命3選」 
●次の1カ月何が起きる?プロが今の株式相場のポイントを解説!
「米国の値下げ狙いで再び4万円台が定着か」
●ZAi編集部の新人・ザイゼンがチャレンジ!目指せ!お金名人
「車は買う? 借りる?」
●10倍株を探せ!IPO株研究所2025年7月編
「初値4倍超の銘柄も! ただし過熱感に注意」
●17億円トレーダー・ジュンのFX成り上がり戦略
「セル・ザ・ファクトには要注意!」
●連載・おカネの本音 レンタルなんもしない人さん
「令和の新しい生存戦略。“なんもしない”で家族と生活していく!」
●マンガ恋する株式相場「100g175万円! 恋のゴールドラッシュ」
●マンガ「デメリットの回避策も! 事実婚のお金事情」


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報