闇株新聞[2018年]

孫正義社長は相変わらずの強気だけれど…ソフトバンク(9984)は大丈夫なのか!?闇株新聞が深掘りする注目企業の決算チェック

2017年8月11日公開(2022年3月29日更新)
闇株新聞編集部
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事
闇株新聞プレミアムメールマガジン 20日間無料!

刺激的な金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」ではタイムリーな企業ネタばかりでなく、読者の関心の高い人気企業については定期的に事業・決算をチェックし分析記事をお届けしています。そうした追跡記事の中に、その後の大きな動きの予兆が含まれていることがあり読者は目が離せません。今回は8月7日に2017年4~6月期連結決算を発表したソフトバンク(9984)を取り上げていますが、日本のマスコミが報じない部分にもしっかりとスポットを当てています。

孫正義社長は相変わらずの強気だけれど…ソフトバンク(9984)は大丈夫なのか!? 闇株新聞が深掘りする注目企業の決算チェック

米国の通信・放送・メディア大再編に
ソフトバンクが噛める線は消滅した

 日本の報道機関は孫社長の決算発表の席での「スプリントを軸に米携帯再編は合意が近い」との発言をそのまま伝えていますが、いくつか気になるポイントがあります。

 本紙はかねてより、米国の通信・放送・メディアのダイナミックな再編の動きを追っています。最近では「闇株新聞」7月4日号で、ソフトバンク傘下の米携帯会社スプリントが、その通信設備を米ケーブルテレビ大手コムキャストとチャーター・コミュニケーションズに提供し、同社が米国の大規模な通信・メディア再編の流れに加わる可能性があるという、大変に夢のある話題も取り上げていました。

 実はその独占交渉期間が7月末までだったはずなのです。実際、孫社長がチャーター・コミュニケーションズに買収交渉を持ちかけた形跡もあるのですが、結局のところ白紙に戻ったようです。ソフトバンクが傘下のスプリントを高値で売却する、あるいは米通信・放送・メディアの大再編に首を突っ込める可能性は、ここで消えてしまったことになります。

 決算発表後の記者会見で孫社長はスプリントと米携帯電話大手Tモバイルとの携帯電話会社同士の経営統合の可能性について言及していますが、これは3年前に独占禁止法の絡みでいったん立ち消えになった話です。トランプ政権での規制緩和の動きで可能性が復活していますが、そもそもスプリントは時価総額でも契約者数でもTモバイルを大きく下回り、仮に経営統合交渉になったとしてもイニシアティブは取れません。

 また日本では、今ごろになってスプリント(あるいはソフトバンク)がチャーター・コミュニケーションズを買収する可能性について言及している報道もありますが、最初からそんな話ではありません。日本メディアはソフトバンクに常に好意的な報道をしますが、さすがにこれは的外れでしょう。

アリババ関連のデリバティブ損失
2571億円の説明はどこへ行った!?

 さて、順序が逆になりましたが、2017年4~6月期の「ソフトバンク」の連結決算を掘り下げていきましょう。売上高2兆1860億円(前年同期比2.8%増)、営業利益4792億円(同50%増)となっていますが、最終純利益が55億円(同98%減)しかありません。

 これについては「前年同期に中国IT大手アリババ株の売却益を2042億円計上しており、今期は逆に2571億円のアリババ関連のデリバティブ損失を計上したから」としか説明されていません。

 ソフトバンクは2016年6月にアームの買収資金をねん出するため保有するアリババ株式を79億ドル(8600億円、アリババ全体の4%に相当)売却しています。このうち29億ドルは単純売却で、前年同期に計上した2042憶円の売却益となっています。

 問題は残る50億ドルで、当時のソフトバンクの説明ではこの50億ドルのアリババ株式を担保に資金を調達し、返済は現金かアリババ株式かのどちらかをソフトバンクが選ぶことになっていました。

 アリババ株はそこから上昇していますが、ならばソフトバンクは資金を現金で返済して値上がりしたアリババ株をそのまま保有するはずで、契約途中の今期に損失計上となるはずがありません。

 またソフトバンクはこの関連において「最終損益は9億ドルの損失となる」(だから今期の損失の大半は戻ってくる)と説明しているようですが、この9億ドルは調達した50億ドルの支払金利と見られます。償還の際に投資家側が現金かアリババ株かを選べない仕組債なので、それくらいの金利が必要と考えられるからです。調達資金50億ドル×年6%×期間3年とすると、9億ドルと符号します。

 要するに今期発生した2571億円の特別損失の説明になっていないのですが、そこを指摘する日本の報道はありません。

積極的な海外投資資金を稼ぎ出していた
国内携帯電話事業の頭打ちが顕著に

 さらに国内通信事業のセグメント利益が2184億円と、前年同期比8.6%減となっています。これは規制に守られ儲け放題だった国内携帯電話事業が格安SIMに侵食されはじめたからですが、同社の積極的な海外投資を支えてきた「ドル箱」のキャッシュフローが減少に転じていることは、気に留めておく必要があります。

 さらにサウジアラビアなどと共同でIT関連ベンチャーに投資する「10兆円ファンド」が5月20日にスタートし、さっそく今期から連結対象に組み入れて1068億円の評価益(エヌビディアのようです)を計上しています。これはファンド出資者との典型的な利益相反となるはずですが、全く気にせず堂々とソフトバンク本体の連結収益に含めています。

 また3兆3000憶円で買収したアーム事業も、今期の売り上げが470億円で69億円のセグメント損失となっています。これから大きくなる事業だそうなので、ここはあまり気にしないことにしますが、それでもいろいろな「気になるポイント」が山盛りとなっている決算発表でした。本紙としては、ソフトバンクからますます目が離せなくなりました。

本連載は金融・経済のプロも愛読し”ネタ元”にしていると評判の刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』で配信された記事から、一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガにご登録いただくと、政治経済や金融の話題を中心に、歴史文化や娯楽まで他のメディアでは決して読めない、濃くて深くてためになる記事が、毎週1回5本程度の本編と付録、番外編、速達便がお読みいただけます。

闇株新聞PREMIUM

闇株新聞PREMIUM
【発行周期】 毎週月曜日・ほか随時  【価格】 2,552円/月(税込)
闇株新聞PREMIUM 闇株新聞
週刊「闇株新聞」よりもさらに濃密な見解を毎週月曜日にお届けします。ニュースでは教えてくれない世界経済の見解、世間を騒がせている事件の裏側など闇株新聞にしか書けないネタが満載。
お試しはコチラ

 

DPM(ダイヤモンド・プレミアム・メールマガジン)

●DPM(ダイヤモンド・プレミアム・メールマガジン)とは?

金融・経済・ビジネス・投資に役立つタイムリーかつ有益な情報からブログに書けないディープな話まで、多彩な執筆陣がお届けする有料メールマガジンサービス。
初めての方は、購読後20日間無料! 


世の中の仕組みと人生のデザイン
【発行周期】 隔週木曜日  【価格】 864円/月(税込)
世の中の仕組みと人生のデザイン 橘 玲
金融、資産運用などに詳しい作家・橘玲氏が金融市場を含めた「世の中の仕組み」の中で、いかに楽しく(賢く)生きるか(人生のデザイン)をメルマガで伝えます。
お試しはコチラ

堀江 貴文のブログでは言えない話
【発行周期】 毎週月曜日、水曜、ほか随時  【価格】 864円/月(税込)
堀江 貴文のブログでは言えない話 堀江 貴文
巷ではホリエモンなんて呼ばれています。無料の媒体では書けない、とっておきの情報を書いていこうと思っています。メルマガ内公開で質問にも答えます。
お試しはコチラ

 


太田忠の勝者のポートフォリオはこちら!
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2021年の最強クレジットカード(全8部門)を公開! 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
イオンカードに新規入会5%OFF!詳しくはこちら! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
イオンカードに新規入会5%OFF!詳しくはこちら! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

最強5万円株
毎月高配当
ふるさと納税

1月号11月21日発売
定価780円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[最強5万円株/毎月高配当]
◎巻頭企画①
2年目NISA6つのチェックポイント
損が出ていたらどうする?
旧NISAの正しい仕分け方は?など

◎巻頭企画②
中間決算速報!2025年に向けて上がる株
通期上ブレ期待株
稼ぐ力が高まった株

◎第1特集
少額でたくさん買える!
配当利回り5%超や10倍株など!
最強5万円株93銘柄

十夢が直撃!桐谷さん、5万円株の魅力を教えて!
桐谷さんお墨付き!5万円優待株!
●有名株も大化け期待株も!イチオシお宝株
●長期で安心して持てる!買いの高配当株
-配当利回りトップ50買い売り診断
●株価10倍が狙える株も!プロ厳選株

◎第2特集
毎月配当金&優待がもらえる生活
毎月配当&優待をもらうための3つの極意&買い時
●1~12月決算月別のオススメ株72を公開!
配当+優待カレンダー
●綴じ込み付録:勝ち株を書き込める!銘柄管理シート

◎第3特集
NISAで勝つための新戦略!ETF入門
桶井道さん&たぱぞうさん2人の凄腕のワザも!
【別冊付録】
年末の失敗も撲滅!駆け込み!
「ふるさと納税絶品カタログ」全7ジャンル

●Category①肉類
●Category②魚介類
●Category③加工食品
●Category④新米&ごはんのお供
●Category⑤果物・野菜
●Category⑥菓子・飲料

◎連載も充実!

◆目指せ!お金名人
◆10倍株を探せ!IPO株研究所2024年10月編
◆おカネの本音!VOL.29兒玉遥さん
◆株入門マンガ恋する株式相場!
◆マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
◆人気毎月分配型100本の「分配金」速報データ!


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!
>>
【重要】定期刊行物 予約購読規約変更のお知らせ


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

【法人カード・オブ・ザ・イヤー2023】 クレジットカードの専門家が選んだ 2023年おすすめ「法人カード」を発表! 「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報