iDeCoを活用した資産運用を考えるとき、しばしば指摘されるのが「iDeCoでは運用の選択肢(運用商品数)が少なすぎる」ということです。しかし、運用の選択肢が少ないことは本当にデメリットなのでしょうか?
そこで今回は、iDeCoでは運用商品が少ない理由と、少なくても問題がない理由を説明していきたいと思います。
NISAのように運用商品は多くないものの、
iDeCoなら安全資産とリスク商品のどちらも選べる
iDeCoと比較されることが多い、老後の資産形成に役立ち、かつ税制優遇がある制度としては、「財形年金貯蓄」や「NISA」、「つみたてNISA」(2018年1月開始予定)などが挙げられます。
この中でもっとも運用商品の選択肢が少ないのは、「財形年金貯蓄」でしょう。会社ごとに取引できる金融機関は1つあるいは2つに限定されており、金融機関そのものを選ぶ自由度はありません。また、基本的に定期預金(保険会社なら保険)にしかお金を拠出できません。
逆に選択肢が多いのは、「NISA(少額投資非課税制度)」です。こちらは個人向け国債など一部除外される商品があるものの、リスク商品であれば、ほとんどすべての商品に投資することができます(逆に、定期預金など安全性の高い商品は対象にならない)。証券会社でNISA口座を開けば、その証券会社の取扱商品のほとんどを選択でき、購入時に「NISA口座と証券総合口座のどちらで買うか」を選ぶことができます。もちろん個別株への投資も可能です。
一方のiDeCoは、NISAのように商品の選択肢があまり多くありません。基本的に多くの金融機関のiDeCoで取り扱う商品数は、20~30本程度に収まっています。他の制度と比較すると、iDeCoは「安全性の高い商品と投資信託商品の双方が選択可能である」ことが強みで、「投資信託の本数が多くても数十本しかない」のが弱みといえるでしょう(とはいえ、致命的な短所ではないことをこれから解説します)。
ちなみに2018年1月からスタートする「つみたてNISA」は、iDeCoに少し似ている「取扱商品に条件」があるNISAです。投資信託かETFが投資対象であり、投資方法は積立投資に限られます。また、販売手数料はノーロード(無料)で、信託報酬率も低コストであるなどの規制が課されるため、金融機関各社が取り扱える対象の商品数は120本程度になる見込みです(2017年8月30日の金融庁の発表より)。ただし、各社の実際の取扱商品本数はもっと少なくなることでしょう。
iDeCoとつみたてNISAは商品を「厳選」
インデックス運用中心なら面倒なく投資リターンを享受
iDeCoとつみたてNISAは、「厳選」された商品を運用する制度です。個人が相場の行方を予想して個別銘柄を買うようなリスクの高い投資ではなく、市場の行方は読み切れないことを踏まえて、リスクは取っても市場平均程度に抑えるような投資のほうがiDeCoや「つみたてNISA」向きと言えます。
公的年金運用や企業年金運用というと、プロが相場を見ながら売り買いを頻繁にして、市場平均(日経平均株価などの指標)を上回ることを目標にした「アクティブ運用」を行っているのでは、と思われがちですが、実際には「インデックス運用(日経平均株価やTOPIXといった株価指標に連動する運用方法)」を中心(コア)にした投資戦略をとっています(「パッシブコア戦略」などという)。これは「市場平均程度は確実に勝ちきる」ことと「市場平均より大きく負けない」ために、重要な投資戦略となります。
個人で老後の資産形成をする場合でも、この「インデックス運用」を中心にすれば、リスクを抑えながら投資を行うことができます。その代わりに、どれだけ利益が大きくなっても譲渡益が非課税になるNISAでは、自由に銘柄を選んでアクティブ運用(インデックスを上回る成果を目指す)をするのがいいのではないでしょうか。
「インデックス運用」は「普通の会社員が、普通に仕事をしながら、家族との時間も削らずに投資を続けていく」ためにもっとも効果的な選択です。投資に対して時間や情報収集などのリソースをほとんどかけずに、経済成長率と同等の投資リターンを得られる可能性が高くなります。ピケティも著書『21世紀の資本』で示しているとおり、投資で得られる利益の伸び率は賃金上昇率(定期預金の金利はこれに近い)を上回ると考えられていますので、投資初心者ならこの方法で十分ではないでしょうか。
【※関連記事はこちら!】
⇒iDeCoで失敗しない「資産配分」と「運用方法」を3つのステップで紹介! 定期預金と投資信託への適切な資産配分とおすすめの投資信託の種類とは?
iDeCoの商品数は2018年5月から「上限35本」へ!
投資初心者でも選びやすい本数へと変更
ところで、iDeCoを取り扱ういくつかの金融機関では、ラインナップされている金融商品の本数が多く、これを魅力と感じて申し込みを検討している人もいるかもしれません。例えばSBI証券は、60本以上の商品ラインナップを擁しています。
しかし、現在は商品数に上限がないiDeCoも、2018年以降はその本数を減らすことになります。法律上の規制がかかるからです。
確定拠出年金法は2016年5月の法改正の際、運用商品数の上限規制を定めることとしており、具体的な商品本数について、2017年2~5月にかけて専門委員会を開いて議論を行いました。結果として、金融機関各社が取り扱う商品数は「35本」を上限とすることになりました。それぞれの金融機関は、2018年の5月(予定)から5年間のあいだで、35本まで本数を厳選しなければなりません。
iDeCoについては金融機関各社が商品ラインナップを競い合い、個人が任意に選択する余地もあるため、商品数の規制には異論もありました。しかし、つみたてNISAと同様、利用潜在層として大多数を占める投資初心者の使いやすさを考慮した結果、35本という数字に落ち着きました(実のところ、筆者はこの専門委員会の委員を務めており、「投資初心者を念頭に置けば、商品数上限は35本より少なくてもいいのではないか」と主張した1人です)。
これからiDeCoに加入するなら、
金融機関各社の「商品の厳選」の方向感を見て選ぼう!
iDeCoの取扱商品数の上限が35本に規制されると、各社が似たような商品を並べてくるかというとそうではありません。むしろ各社の「選択眼」をチェックするいい機会と考えてみてください。
この上限本数がもし「10本」だったら、4つのアセットクラス(国内株式、外国株式、国内債券、外国債券)にインデックスファンドを1つずつ、バランス型ファンドを1シリーズ(株式と債券への投資比率などが異なる3本)、定期預金を2本も入れれば9本でほぼ上限ですから、選択の余地がほとんどありません。しかし35本もあれば、ベーシックな商品も、各社の独自性のある商品もどちらも盛り込むことができます。かつ、初めて投資をする人や普通の会社員が混乱に陥らずに選べるギリギリの本数だと思います。
現在でも、銀行系金融機関のiDeCoと証券系金融機関のiDeCoでは、商品ラインナップの様相が異なります。銀行系は投資信託の数を抑えていますし、証券系は投資信託の選択肢を多めにしている傾向があります(その代わり銀行系は預金商品の本数が多いこともある)。これは金融機関による違いが表れているよい例といえます。
また、労働金庫のように、もともと規制にかかわらず、商品数を10本前後に収めているところもあります。これは、メインターゲットとなる投資初心者が選べる投資商品の選択肢は多すぎないほうがいいというメッセージを込めてのことでしょう。実際、信託報酬(運用手数料)を抑えた商品が多く、どれを選んでも「割高なものをつかまされた」と感じることがないようになっています。
一方で楽天証券のように、現在、取扱商品数を20本前後に抑えているところは、もしかするとこれから35本に収まる範囲で「追加商品」を提示してくるかもしれません。そうなれば、運用の選択肢の多様化を提案してくれることになるでしょう。
金融機関が取り扱えるiDeCoの商品数に35本という上限が与えられたことで、むしろこれからは各金融機関の投資商品への「目利き」が問われるようになります。これからiDeCoへの加入を考えている方は、ただ単に投資商品の数に惑わされずに、どのようなコンセプトにもとづいて、どんな商品を厳選・提示してくるかに着目して、金融機関を選ぶことをおすすめします。
【※関連記事はこちら!】
⇒「iDeCo」を始めるなら、おすすめ金融機関はココ! 口座管理料が無料になり、投資信託のラインナップが充実している「SBI証券」と「楽天証券」を比較!
⇒iDeCo(個人型確定拠出型年金)の金融機関を比較!口座管理手数料や投資信託の取扱数などで比較した、おすすめの証券会社・銀行を紹介!
1995年株式会社企業年金研究所入社後、FP総研を経て独立。ファイナンシャル・プランナー(2級FP技能士、AFP)、1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)、消費生活アドバイザー。若いうちから老後に備える重要性を訴え、投資教育、金銭教育、企業年金知識、公的年金知識の啓発について執筆・講演を中心に活動を行っている。
※証券や銀行の口座開設、クレジットカードの入会などを申し込む際には必ず各社のサイトをご確認ください。なお、当サイトはアフィリエイト広告を採用しており、掲載各社のサービスに申し込むとアフィリエイトプログラムによる収益を得る場合があります。 |
【2024年11月1日時点】 【iDeCoおすすめ証券会社&銀行 比較】 ※どの金融機関でiDeCo口座を開設した場合でも、別途、国民年金基金連合会へ支払う加入時手数料が2829円、国民年金基金連合会と信託銀行へ支払う手数料が合計171円(毎月)かかる。受取時は給付手数料440円(1回毎)を信託銀行に支払う。還付時には、国民年金基金連合会と信託銀行への還付時手数料として合計1488円(1回毎)がかかる。運営機関変更時の手数料は「他の金融機関から」変更の場合で、「他の金融機関に」変更する場合は4400円の手数料が発生する場合がある。下記の金額は掛金を拠出する場合(すべて税込)。 |
◆楽天証券 ⇒iDeCo詳細ページへ | ||||
口座管理料(月額) | 手数料 | 投資信託 | ||
加入時・企業型からの移換時 | 他の運営機関からの変更時 | |||
0円 | 0円 | 0円 | 35本 | |
【おすすめポイント】口座管理料が誰でも無料! 信託報酬の低い投信を多数ラインナップ! 口座管理料は残高を問わず誰でも0円で、コスト面から最もお得な金融機関の1つ。投資信託のラインナップは35本と豊富。信託報酬の低いインデックス型が揃っている。特に、2024年1月には超低コストで全世界や米国に投資できる「楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド」と「楽天・S&P500インデックス・ファンド」が加わってより魅力が大きくなった。「MHAM日本成長株ファンド」など好成績のアクティブ型も用意。電話で問い合わせができる「個人型確定拠出年金(iDeCo)ダイヤル」は土日も受付を行っている。 |
||||
【信託報酬が低いおすすめ投資信託】 ・三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンド(信託報酬:0.176%) ・楽天・S&Pインデックス・ファンド(信託報酬:0.077%) ・楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド(信託報酬:0.0561%) |
||||
【関連記事】 ◆【楽天証券のiDeCo、手数料・メリットは?】 口座管理料が誰でもずっと「無料」でお得!運用コストを抑えた投資信託を多数ラインナップ ◆「iDeCo」を始めるなら、おすすめ金融機関はココ! 口座管理料が無料になり、投資信託のラインナップが 充実している「SBI証券」と「楽天証券」を比較! |
||||
楽天証券のiDeCoなら、口座管理料(運営管理手数料)が条件なしで誰でも無料! |
◆松井証券 ⇒iDeCo詳細ページへ | ||||
口座管理料(月額) | 手数料 | 投資信託 | ||
加入時・企業型からの移換時 | 他の運営機関からの変更時 | |||
0円 | 0円 | 0円 | 39本 | |
【おすすめポイント】口座管理料が誰でも無料! 投資信託は39本と業界最多水準! 口座管理料は残高を問わず誰でもずっと無料。投資信託は2020年10月に11本から39本へと一気に拡充され、業界最多水準となった。具体的には、低コストで人気のインデックスファンドシリーズ「eMAXIS Slim」がずらりと並ぶほか、ターゲットイヤー型と呼ばれる「三菱UFJターゲット・イヤー・ファンド」、「セレブライフ・ストーリー」などの商品が新たに加わった。低コスト投信を厳選した上で、投資対象が広がった形だ。楽天・全世界株式インデックスファンド[楽天・バンガード・ファンド(全世界株式)]や楽天・全米株式インデックスファンド[楽天・バンガード・ファンド(全米株式)]も取り扱う。投資信託の保有でポイントが貯まる「最大1%貯まる投信残高ポイントサービス」に、イデコで所有している投資信託もカウントされることに。ポイント還元を受けながらお得に投資を継続できる。 |
||||
【信託報酬が低いおすすめ投資信託】 ・One DC 国内株式インデックスファンド(信託報酬:0.154%) ・eMAXIS Slim先進国株式インデックス(信託報酬:0.09889%) |
||||
【関連記事】 ◆【松井証券のiDeCo、手数料・メリットは?】口座管理料と加入時手数料が誰でも無料でお得!信託報酬が最安クラスの投信が39本もラインナップ! |
||||
◆SBI証券 ⇒iDeCo詳細ページへ | ||||
口座管理料(月額) | 手数料 | 投資信託 | ||
加入時・企業型からの移換時 | 他の運営機関からの変更時 | |||
0円 | 0円 | 0円 | 37本 (セレクトプラン) |
|
【おすすめポイント】投資信託の品揃えが豊富! 口座管理料は誰でも無料! 口座管理料は誰でも0円。「セレクトプラン」は、ほとんどの投資対象で信託報酬が“最安”のインデックス型投信が揃えられており、バリエーションも豊富と、強力なラインナップになっている。人気のアクティブ型投信「ひふみ年金」や「ジェイリバイブ」も用意。2021年1月から申込み手続きを電子化。WEB申込フォームへの入力、必要書類のアップロードが可能になり、iDeCo口座開設の手続きが簡単になった。シミュレーションツール「DC Doctor」を提供しており、ポートフォリオ提案から将来予測の比較など、長期にわたるiDeCoの資産形成をサポートしてくれる。 |
||||
【信託報酬が低いおすすめ投資信託】 ・eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)(信託報酬:0.143%以内) ・SBI・全世界株式インデックス・ファンド[雪だるま(全世界株式)](信託報酬:0.1102%) |
||||
【関連記事】 ◆【SBI証券のiDeCo、手数料・メリットは?】 投信のラインナップが豊富!口座管理料は誰でもずっと無料! ◆「iDeCo」を始めるなら、おすすめ金融機関はココ! 口座管理料が無料になり、投資信託のラインナップが 充実している「SBI証券」と「楽天証券」を比較! |
||||
◆マネックス証券 ⇒iDeCo詳細ページへ | ||||
口座管理料(月額) | 手数料 | 投資信託 | ||
加入時・企業型からの移換時 | 他の運営機関からの変更時 | |||
0円 | 0円 | 0円 | 27本 | |
【おすすめポイント】口座管理料が誰でも無料! インデックス型投信の信託報酬は最安水準! 口座管理料が誰でもずっと「無料」で、コスト面から最もお得な金融機関の1つ。投資信託の本数は27本と標準的だが、内容は充実。「eMAXIS Slim」シリーズなど信託報酬が最安水準のインデックス型投資信託が揃えられている。加えて、「ひふみ年金」「jrevive」など好成績のアクティブ型投信も豊富だ。「つみたてNISA」と「iDeCo」、どちらの制度が各個人の投資目的に適しているかアドバイスが受けられる「つみたてNISA・iDeCoシミュレーション」が便利。 |
||||
【信託報酬が低いおすすめ投資信託】 ・One DC 国内株式インデックスファンド(信託報酬:0.154%) ・eMAXIS Slim先進国株式インデックス(信託報酬:0.09889%) |
||||
【関連記事】 ◆【マネックス証券のiDeCo、手数料・メリットは?】 口座管理料と加入時手数料が誰でも無料でお得!超低コスト&好成績の投資信託24本をラインナップ! |
||||
◆auカブコム証券 ⇒iDeCo詳細ページへ | ||||
口座管理料(月額) | 手数料 | 投資信託 | ||
加入時・企業型からの移換時 | 他の運営機関からの変更時 | |||
0円 | 0円 | 0円 | 26本 | |
【おすすめポイント】幅広い投資対象が揃っているラインナップが魅力! 2019年4月27日(土)より「カブコムのiDeCo」取扱い開始。KDDIアセットマネジメントが運営管理機関となりサービスが提供される。スマートフォンから操作できるiDeCo専用アプリにより、節税効果のシミュレーションや申し込み、運用商品の選択などが直感的に行える。取扱商品は、信託報酬が業界最低水準となるインデックス投資信託を中心に、株式、債券、不動産(REIT)の投信や定期預金など幅広く27本。若いうちはリスク資産に投資し、老後は安定運用を目指す「ターゲットイヤーファンド」も選択が可能だ。 |
||||
【信託報酬が低いおすすめ投資信託】 ・つみたて日本株式(日経平均)・(TOPIX)(信託報酬:0.198%) ・つみたて先進国株式(信託報酬:0.22%) |
||||
【楽天証券のiDeCo】
誰でも無条件で口座管理料や各種手数料が無料!
無料セミナーで初心者も安心⇒関連記事はこちら