株価がなかなか上がりません。先週にはTOPIXが、実に29年ぶりの最安値を更新してしまいました。一方で「さすがにここまできたら、そろそろ底なんじゃないの!?」と見ている人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、チャートで見る底打ち→反転のパターンを考えてみました。
下落には「ストーンと急落型」
「ズルズル下降型」がある
まず、底打ちする前の下落のパターンを踏まえておきます。大ざっぱに分類すると、下落のパターンは「ストーンと急落型」「ズルズル下降型」、あるいはその複合になります。
(1)ストーンと急落型
典型なのは「〇〇ショック」といわれるものです。世界を震撼させる巨大なものから、個別銘柄が暴落して他銘柄の下げを誘発する比較的小さなものまで、規模はいろいろ。大きなものほど短期的な底になることが多く、現金を残しておいた人、それまで株をやっていなかった人にチャンスが訪れます。発生時の状況も大事で、高値圏で発生するとズルズル下落型に移行しやすいのですが、安値圏で発生すると反発のきっかけになります。
機関投資家は「〇%以上の損になったら理由の如何を問わず中止しなければならない」という社則があって、機械的に売ってきます。機関投資家の持っている株数は大量なので、市場に与える影響度が半端ありません。売るから下がる、下がるから売るという悪循環になります。
でも、あまりに下げると「いくらなんでもここまで下げたら安すぎでしょ」と感じる人も出てくるわけで、そういう人たちは買ってきます。個人投資家は社則とか関係ありませんし、短期的な急落には自動的に買いを入れるように設定している機関投資家もいます。
考えようによっては本当に「最悪の事態」であるなら、それ以上悪いことは起きないわけで、ここで拾っておくのは悪くありません。会社にお勤め方など、普段なかなか相場を見られない方は、この作戦がおすすめです。報道ステーションのトップニュースで古館キャスターが「混迷する世界経済」「マネーゲームの成れの果て」について言及したら“きた!”と思いましょう。
現在は、TOPIXがバブル崩壊以来の最安値をつけたりしているので、過去との比較で言えば安い水準にあるのは間違いないでしょう。この状況でトドメを刺すような「〇〇ショック」がきたら、短期的には良いチャンスだと思います(長期的なことは、なんにもわかりません)。この場合の反発は速いのでモタモタしてたらだめです。
(2)ズルズル下降型
政治や経済に不安な要素を抱えている、業績不振に歯止めがかかる感じがない、何となくこれといった原因がないのに下げている…というときにこういう下げ方になります。昨日買った人が今日売る、今日買った人が明日売るの繰り返しで、なかなか反発のきっかけがありません。少し戻ると「ここぞ」とばかりに大きな売りが出たりして、上昇の気運がくじかれます。
詳しい人に「何で株価が下げてるか」聞いてみて、いろんな答えが返ってきたら大抵このパターンです。日経平均は4月に入って1万円を割り込んでから2ヵ月間、ズルズルと下げてきました。理由は、ギリシャ問題、円高、新興国の成長鈍化、国内政治の先行き不透明感、電力不足懸念…いろいろ言われています。
本当はいろいろな問題は根っこの部分では繋がっていたりもするのですが、複雑でわかりにくいのはいけません。こちらの問題にメドがついたら、あちらに別の問題が、あちらの問題が解決したら今度はそちらに問題が……一体いつになったらスッキリするの!? 今は、まさにこんな感じではないでしょうか。
本当に底打ちしたかは
ファンダメンタルズでは判らない!?
ファンダメンタルズの分析は、経済アナリストや株式評論の専門家がされています。現状を理解する上でとても勉強になりますが、ある専門家が「今が底」と言っている一方で、別の専門家は「まだまだ下がる」と言っているものです。なので、「この人を信じる」というのでもない限り、専門家のコメントで株を買うタイミングを決めるのは難しいと思います(全員が全員「いまが買い!」なんて言っていたら、それはそれで怖いことです)。
そういうわけで、僕は専門家の方々の分析は勉強のために拝聴しつつも、株の買いどき/売りどきはチャートで判断しています。チャートは「株価の足跡」であって未来を予測するものではありませんが、足跡がどちらの方向へ向いているか、歩幅は大きいのか小さいのか、大胆に進んでいるのか躊躇しているのかは、わかります。投資家がどんな気持ちでいるか、お見通しなのです!
あと、これは言っておきたいのですが、ある問題で株価が下げても、それは"直接的な”原因ではありません。例えば「下方修正が出て株価が下げている」と言われる場合、大事なところが端折られていて、正確には「下方修正が出て“投資家が売っているから”株価が下げている」のです。
だからこそ「下方修正で材料出尽くしとなり買われる」ということも起きるわけで、それには、投資家がどう動きたい(動かざるをえない)状況にあるかを、見極めなければなりません。それもチャートで判断したほうがいいと思う理由です。
底打ちのパターンは「急落からの反発」
「二番底」「もみあいからの上離れ」
さて、チャートに見る底打ちのパターンですが、典型的なのは、(1)急落からの反発、(2)二番底、(3)もち合いからの上放れの3つがあると思います。
僕がいつもチャートから読み取ろうとしているのは「その株を持っている大半の投資家が、どれだけの損を抱えているか」ということです。そのためには、出来高も合わせてみる必要があります。チャートと出来高のグラフは必ずセットで見ないと十分な判断はできないと思います。
(1)急落からの急反発
これは「ストーンと急落型」のときに起きます。これまで株を持っていた人が「もうどうにでもなれ!」とぶん投げたところが拾われます。ここで出来高ができているか否かで、その後の相場の先行きが予測できます。
ここで、巨大な出来高ができるということは、その株で損していた投資家の大半が諦めて投げ、新たに買いを入れてきた投資家と入れ替わったと考えられます。新たに買った人たちは当然、含み損を抱えていないので、慌てて売る必要はありません。
ところが、あまり出来高ができていないと、まだ損を抱えて苦しんでいる人がいっぱいいることになります。その人たちは戻ってくると「やれやれ、もうこんなツライ思いはもうこりごりだ」と売ってきます。そうするとスッキリ上昇というわけにはいきません。やがて、急落で買い向かった人たちも「モタモタしてやんなあ、そんなら今のうちに利益確定しとこ」となり、もう一回、下落してしまうのです。
(2)二番底
せっかく底打ちして上昇したのに、また下げてしまうと、株を持っている人たちの間には「おいおい、また下げかよ。こんどはいったいどこまで下げるんだ……」と不安が広がります。
そうして前回、底打ち→反発したのと同じポイントまで下げてきます。「ああ、元の木阿弥とはこのことか」。ところが、前回の安値を割り込まずに反発すると「おっ!? この株はやっぱりここが底だったんだ。これよりは下げないのかな」という安心感が広がります。
それで買われやすくなって、本格的な上昇トレンドに転換する…というのが「二番底をつける」とか「Wボトム」と言われるポイントです。三番底があっても四番底があってもいいですが、「この水準より株価が下げないんだ」「ここまで下げたら買いたい人が出てくるんだ」と思われる底値が形作られることが大事です。恐る恐る、本当に床が抜けないか、何度も踏んで確かめているイメージです。
(3)もち合いからの上放れ
ひとまず底は打ったけれど、先行きの見通しの暗さから、積極的には買いに行けない。上がると売られる下がると買われる、いわゆる「もち合い」が繰り返されていくと、株価の上下幅が徐々に小さくなっていきます。
含み損になっている人も耐えられない損ではなく、含み益になっている人も急いで売るような利益ではない。押し合いへし合いしているうちに周囲で見ていた人も、加わってきます。ラグビーの「スクラム」みたいな感じです。
参加人数が増えるほど、エネルギーは増大していきます。そうして、どこかのタイミングで、この押し合いに決着がつきます。負けた側はボロボロに崩れ、買った側は溜め込んだエネルギーを一気に発散するかのように、ドドドドーっと攻め込みます。
エネルギーの溜まり具合をボリンジャーバンドで見て、買いどき/売りどきを判断するのが、この連載のタイトルにもなっている「セクシーボリンジャー投資法」です。
いったん下げ止まっても
スッキリ感がないのはなぜか?
さて、現在の相場はどんな状況でしょう。日経平均は6月4日の8238円でいったん底打ちして反発しました。が、出来高が細っているので、スッキリ感はありません。まだ含み損を抱えてもがき苦しんでいる人が、大勢残っているからです。
今のままでは、少し上昇しても「もうこんな怖い思いはたくさん」「やれやれ、ようやく買値に戻ったぞ」と売ってくる人たちがいる一方、買うほうも恐る恐るなので突破力がないのです。「もう心配しなくていいんだ!」という強力なニュースが出ない限り、二番底を探るか、もみ合いに突入する展開ではないでしょうか。
はっきり買いのシグナルが出るまで全力で見守るというのも作戦ですが、僕としては、何にも手を出さないのもどうにも寂しいので、底値を手探りする作戦を考えています。例えば、こういうチャートはどうでしょう。
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5月28日と6月4日で、ちょんちょんと二回底値を打っています。まだ二番底とはいいきれませんが、前回よりも下げなかったので買ってみます。ですが、出来高も大してありませんし、下向きの25日線が迫っていて頭を抑えられる可能性があります。もみ合いが十分ならボリンジャーバンドが狭まるのですが、まだ狭まっていません。
もしも前回の安値を割り込んだら「ここは底ではなかったんだ」ということで、即損切りです。でも「このまま上げていってくれたらいいなあ」という淡い期待を抱きつつ、見守ります。
底で買って天井で売るというのは、誰もが理想とするところですが、そう簡単にはいきません。ここが底かと思ったらそうじゃなくって損切りし、今度こそ底だと思ってもまださらに底があったりして…。小さなナマ傷をいっぱい負いながら、最後に本当の底がつかめます。
傷を負うのが嫌なら、ちゃんと上昇トレンドになってから買うのがいいと思います。どちらにするかは、あなた次第!
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