「一定規模以上の発電事業者を本気で目指す」 ---- 。
建設コンサルタント会社の日本工営(1954)の廣瀬典昭社長は、発電事業への参入と早期の収益貢献への意気込みをみせる。
日本工営は鹿児島県伊佐市に河川を利用した出力460キロワットの小水力発電所を建設。2013年にも稼働にこぎつける見込みだ。7月に始まる再生可能エネルギーの全量買い取り制度を利用し、発電した電力の大半を九州電力に売却する。
水力発電、送電設備で国内屈指
日本工営は国内外での土木・建設の調査・設計や、発送電機器の製造などを手掛ける。海外ではインドネシア・ジャワ島のブランタス川の大規模のダム建設による水資源開発をはじめ、多くの実績を持つ。
業績は、2012年3月期は売上高が前期比微増の659億円にとどまったものの、営業利益は同12%増の30億円、経常利益は同23%増の33億円と、順調な拡大をみせた。
しかし、前途洋々かと言えば、決してそう甘くはない。
脱東京電力依存で、発電事業に参入
事業構成をみてみよう。売上高659億円のうち、約20%を電力関連事業が占めている。
最大の得意先は東京電力(9501)だ。
東京電力の設備投資額はこれまで年間で5000~6000億円、日本工営が得意とする送電関連だけでも2000億円を超える規模だった。
その巨大投資の恩恵にあずかってきたわけだが、福島第一原子力発電所の事故で状況は一変した。
もっとも、事故以後に東京電力が公表した「総合特別事業計画」では、視界不良の原子力発電事業とは異なり、特に送電部門は施設の老朽化対策や、より効率の良い送電網の構築のために、年間3000億円程度の投資が計画されている。
しかし、電力関連事業に依存しているだけでは成長を維持できない。
選んだ途は、これまで手掛けた水力発電所の建設や発・送電設備などの製造で培った技術を活かし、自ら発電業者になることだった。
発電事業の第一歩は、鹿児島県伊佐市に建設中の小水力発電だ。
砂防ダムを利用した発電事業の事業化を進める
福島での原発事故以後、安定かつ電力会社に依存しない電源の確保は、企業・自治体などにとって喫緊の課題となった。
このうち小水力発電は、川の流れそのものを活用するため、ダムなど大規模な工事を必要としない。
日本は急流河川が豊富なうえ、小規模水力発電は太陽光のような広大な敷地を必要としない。季節による水量の多寡はあるもの、24時間の安定した稼働が可能というメリットもある。
日本工営が手掛ける発電事業のひとつが、伊佐市の小水力発電のような自治体と一体で取り組む規模の大きくない発電事業だ。
日本工営では今後5年間で、全国で10カ所程度の事業化を進める予定。国家レベルでみた代替エネルギーの確保に対する要請が高まるなか、発電事業の拡大と中長期的な収益貢献への期待は大きい。
また、小規模発電設備の設置と並んで注力するのが、山間の河川などに土砂災害防止の目的ために設置されている治水設備、いわゆる砂防ダムの活用だ。
これはすでにある砂防ダムの施設を利用しながら、流れ落ちる水の力で発電を行うという新たな発想によるもの。「すでに3カ所で事業化に向けた具体的な検討に入っている」(廣瀬社長)とのこと。土砂で埋もれた河川設備に、鉱脈を発見したわけだ。
さらにもう一つの鉱脈がある。アジアなどへの世界展開だ。
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