日立建機(6305)の売上はなぜ30年で10倍になったのか?
1980年代、日立建機の売上は1000億円をやや超える程度でした。2018年に1兆円の売上となり、30年という「短期」の間に売上を10倍にしたのです。アナリストは来期は増益か減益か。それをまず考える人が多いのですが、本来は、なぜ売上が10倍になったのかをしっかりと理解しなければ長期の投資とはなりません。もちろん、株価も長期的には上昇トレンドにあります。2002年の200円台から現状は3000円ですので。
1980年代、日立建機の売上は国内がほとんどでした。ただ、輸出は欧米を中心に30%を超える程度あったのです。ここが重要なポイントです。
生産はというと、すべての製品を国内で生産していました。1985年のプラザ合意以後の円高に応じて、欧州イタリアと米国に実験的な生産拠点を置きました。これが海外生産のはじまりでした。
80年代にしろ、日立建機は、普通の企業とは違いますね。なぜならば、普通の企業は、海外に工場など作れませんから。
普通の企業は海外で売れる見込みなどないからです。
海外で売上が伸びる企業が長期投資の対象になる
日本の油圧ショベルは優秀だったのです。すでに国際的な競争力があったのです。山もあり海もある多様な地盤があり、省エネ意識があり、省スペースでも働ける建機をつくったのです。日本のものづくりのよさである、品質の高さとコストの低さがありました。
このように、海外の方々がどうしても欲しいと思える商材がなければ、売上というものは増やすことはできないのです。いくら国内で売上を伸ばしても、海外には全く違うライバルがいます。これが通常のケースです。海外で販売がガンガン伸びる企業であれば、長期投資の主な対象となるのです。ここが重要なポイントです。投資先の商品、製品、サービスなどを見てご判断ください。この商品なら、黄色人種も白色人種も黒色人種も田舎も都会もすべての世界市民が欲しがるだろうなというものかどうかがポイントです。
日立建機のその後は飛躍が待っていました。2000年代には、海外の需要が一気に拡大します。
なぜ建機が急激に普及したか。それは世界中で電気水道などのインフラが整備されたからです。
世界中で都市化の波が起こったのです。世界市民が誕生し、世界中で生活水準が向上したのです。
水や電気や通信のインフラが整備されはじめました。この都市化の波は、新興国のみならず、先進国でも同様にいまも起こっています。現在も田舎から都市への人口移動が急激に起こっているからです。
さらに都市開発のみならず、鉱山向けに大型の単価の高い超大型の油圧ショベルがじゃんじゃん売れるようになりました。日立建機の売上は、あっという間に9000億円規模になりました。石炭や鉄鉱石の市況もよく、鉱山の開発が世界的に進んだからです。
じわりじわりとくる波を普段の生活でわたしたちは感じることができていませんが、長期投資ではとても大事なことです。100年ぐらい続く長期のトレンドがあるのですから。
鉄筋コンクリートが50年でダメになると聞けば、都市の開発は、第二弾、第三弾と50年ごとに建て替え需要が発生します。そのとき、丸ビルなどの建て替えのように、高さも2倍程度になり、床面積では数倍に変わっていくのです。それが自然な仕事量の増加です。
そのじわり、じわりと拡大するペースを信じてください。車もそう。冷蔵庫もそう。ビルもそう。堤防もそう。広場もそう。どんどん上に高くなり、下の地下空間も膨大になっていきます。快適に便利になります。
売上1兆円を達成し!長期的に2兆円、3兆円へ
当たり前のように、日立建機は昨年、ようやく売上1兆円を達成しました。世界のようやくスタートラインに立とうかな、という感じです。これから、ダッシュをしていくでしょう。これから、売上は長期的に2兆円、3兆円になっていくでしょう。
足元、海外売上は8割を超えました。世界中で何十万台もの日立の建機が稼働しています。その間、国内売上も順調に伸びました。小型の建機が省人化の役割を果たしています。また、温暖化の影響か、自然災害が大幅に増加。都市開発や防災対策など、やるべきことが山積みであり、建機の需要はこれからも減少することはないでしょう。
シェアを維持し、グローバルトップ企業の座を守り続けたのは、常に、新製品開発を怠らなかったこと、そして設計コスト(部品点数の削減)や製造コストの削減(部品共通化)の努力を続けたからです。
どんどん、製品の性能が上がっていくのです。コスパもよくなっています。より壊れにくくなり、より乗りやすく、より操作しやすく、より安全になっていくのです。今後は、EV化です。製品単価は上がっていきます。
現在では、ビッグデータの活用など、故障を概ね予防できるようになりました。無人運転が100台同時に可能です。また、バリューチェーン全体へのアプローチを進めています。これまでは新車販売がメインでしたが、今後は、中古車やレンタル事業も本格的に乗り出します。日立建機の強みである直販体制でワンストップのレンタル/中古車の販売拡大が成功を収めつつあります。
世界中のインフラ工事に必要な製品を扱い、競争力で負けないこと。それが売上が長期で10倍になる理由です。投資をする上で、競争力のある商品が世界中に展開できる企業には投資をする価値があります。
そうではない企業は、単年度の業績のブレで株価で遊ぶしかないですが、少なくとも短期のトレーディングの対象にはなります。短期のトレーディングは、相場の上げ下げを当てる博打のようなものです。当たったり外れたりするのですが、だからこそ、投資はギャンブラーに大人気なのでしょう。
わたしたち長期投資家は、短期の賭博は打つ必要がなく、長期で製品が拡販するのを見守るだけでよいのです。日立建機の株価は10年後に2倍か3倍になっているでしょう。
(DFR投資助言者 山本潤)
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