IDEC株式会社(6652)はグローバルに安全ソリューションなどを提供する企業です。利益構成ではHMIソリューション(Human-Machine-Interface)セグメントがメインです。
売上600億円、営業利益率は10%程度です。
現場で機械やロボットが暴走すると非常に危険です。たとえば、電車には緊急停止ボタンがあります。仮に、ボタンを押しても作動しなければ大惨事になります。安全スイッチは命の最後の防波堤です。電車に限らず、停止ボタンは品質がすべてです。絶対に壊れない、絶対に作動するように念には念をいれた工夫がなされているのが同社の製品群です。
みなさんはボタンやスイッチというと、やや地味なイメージを持たれるかもしれません。カタログ販売でボタンやスイッチは単品でもちろん買うことはできます。しかし、同社は、そうした代理店経由の単品ビジネスではありません。
利益率が二桁ということは、参入の障壁が存在します。
IDECが国際規格づくりに参画しているメリットとは?
1)スイッチ類には国際規格があります。その国際規格をつくりにIDECは参画します(規格参画: 粗悪な新興国の地場メーカーを排除することができる)。
2)規格に沿った形状の工夫などを製品開発に生かします。そして国際特許も出願します(知財戦略:機構部品のよさは、形状で特許がとれることにあります。非常に強力な特許となります)。
3)製造現場における安全とは何か。ひとつひとつをしっかり定義をして、セーフティアセッサの資格を創出し試験を実施、受験者に資格認定します(資格作りと有資格者のマンパワーの確保)。
4)業界や協会を説得し、資格者が安全ソリューションを販売する業界ルールを築く(安物の粗悪品を現場から排除するため)。
社員は、命を守る仕事に携わるわけですから、とてもやりがいがあるはずです。また、資格を持つことは専門家の証です。仕事に誇りも生まれるでしょう。
顧客の工場の設計段階で、安全に十二分に配慮しているかを認定する有資格者の社員がソリューションを提案します。提案の中に、同社の高シェア商品群の販売も含んでいるため、単品商売にはならないのです。昨今は、人と協調する作業ロボットも普及し、人件費の高騰する地域で省人化への投資は盛んです。
このような規格策定、特許出願、資格試験の実施と有資格者の確保、業界秩序の維持、ソリューション提案というビジネスの勝ちパターンが存在する企業です。わたしはブルーオーシャンを意識してつくっている企業であると評価しました。
ニッチな分野で高いシェアを誇る日本企業らしい企業です。
株価は3年で2倍になっています。その理由は、欧州におけるM&Aです。APEM社を2017年に購入しました。買収により海外の売上が国内売上を上回るようになりました。同じスイッチ/ボタン/レバーの領域ながら、地域が重ならないこと、顧客が重ならないことで、クロスセルの相乗効果が見込まれます。売上も利益も非連続的な成長をこの2年で遂げました。
今後のIDECに期待できる2つのポイント
今後のIDECの動向には二つの注目点があります。
ひとつは、APEMの買収効果の継続です。IDEC拠点と重なる部分は統廃合が進みました。日本の顧客にAPEM商品を売ることができます。そして、IDEC商品をAPEM顧客に売ることができます。
もうひとつは、ソリューション提案の領域が広がることです。協調ロボットシステムの提案をIDECは始めています。協調ロボットは世界中にメーカーがありますが、いろいろなメーカーのロボットを組み合わせたソリューションを提案しています。
セクターとしては機械で、省人化投資の恩恵を受けます。中期計画では真のグローバル企業を目指し1000億円の売上と利益率15%を目標としています。
今期は米中貿易摩擦など、世界的に設備投資が冷え込みましたので減益となります。
来期以降、顧客の投資マインドの回復によって、再び、業績の拡大が見込まれると考えます。
(DFR投資助言者 山本潤)
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