トヨタ自動車(7203)を長期で保有すべき理由
トヨタ自動車(7203)は日本の製造業の中でトップの利益を誇り、約3700社にのぼる全上場企業の中でトップの時価総額を誇る「世界のトヨタ」である。従来は景気敏感株として景気の波によって株価は上下し、下値2000円台~上値8000円台のボックス圏での推移に収まっていた(株式分割前ベース)。
しかし、今年はそのボックス圏の上限を突き抜けて6月には10330円の高値を記録した(分割前)。これは非常に注目すべきことであり、私は同社の株を長期で保有すべきだと考えている。最大の理由は、同社は従来のバリュー株の殻を打ち破り、グロース株としてのステージに移行しつつあるからだ。
トヨタショックは業績に織り込み済。再上方修正の余地も
同社の株価動向で注目されたイベントとして今年8月の「トヨタショック」がある。日経電子版が8月19日の14時35分に「トヨタは9月の世界生産を計画比で4割減らす」と報じたことで株価が急落。当日初値の9680円は終値では9295円に、そして翌日には8864円にまで下がった。
コロナ拡大によるアジア工場の操業停止、また半導体不足による生産調整が要因であった。この点に関しては業績には織り込まれており、トヨタ側は下方修正発表をおこなわなかった。現在、状況は改善しており、11月には前年同月比で生産台数はプラスに、そして12月には月間で過去最高レベルに高める計画である。株価は再び1万円(分割後の2000円)に戻った。
今期の業績は好調だ。2022年3月期は期初に売上高30兆円(前期比+10.2%)、営業利益2.5兆円(前期比+13.8%)と増収増益の計画を掲げていたが、1Qの業績は売上高7.9兆円(同+72.5%)、営業利益9974億円(同71.6倍)と絶好調だ。
特筆すべきは4-6月の米国販売台数において73%増の69万台とGMを抜いてトップとなったことだ。GMのトップ転落は1998年以来の出来事。要するに米国市場においてもトヨタ車が一番評価される車になったということだ。2Qの業績は売上高は15.4兆円(同+36.1%)、営業利益は1.74兆円(同+236.1%)となり、通期の営業利益予想を2.8兆円(同+27.4%)に上方修正した。私は再度上方修正する余地があると考えている。
3年後の目標株価は3000円。成長ドライバーはEVへの買い替え特需
今後の株価をシミュレーションしたい。今後、バリュー株からグロース株への認識に変わることで、現在のPER11倍からの脱却し、利益増加も堅調に推移することを予想している。過去3年間の実績ベースでのPERのレンジは高値平均11.2倍、安値平均8.3倍だが、11倍の壁を打ち破ると考えている。
仮に3年後にPER13倍、営業利益を3.5兆円と想定した場合、現在の株価2000円の将来価値は2000×(13÷11)×(3.5÷2.8)=3000円となり、時価総額は49兆円になるが、そこをひとつの通過点としたい。その先さらに2~3年後にはPER15倍、営業利益4.3兆円の達成で株価は4200円というイメージだ。ただし、成長力が高まってグロース株としての評価が強まれば、PERは20倍以上のバリュエーション評価も十分にありうると考えている。
中長期の業績向上には、脱炭素化による電気自動車(EV)への期待が高まっていくことが欠かせない。EVで先行する米テスラはすでに大いに評価されているが、EV化においても技術力で追随するトヨタにも光が当たっていくだろう。今後、ガソリン車からEVへの買い替え特需が長期間にわたって見込まれる。構造的な成長期に入るという意味において、業績を押し上げる効果は大きい。
課題は、グローバルマーケットにおける存在感が低いこと
同社の10年前の株価は3000円(分割前ベース)で時価総額10兆円。この10年間でほぼ3倍の規模に拡大した。その意味では十分な成長力があると言えるが、課題はグローバルマーケットでの存在感が低いことだろう。その状況は昔から変わらず、私の企業分析レポート(2012/6/15)で「日本のトップ企業でさえも、グローバルマーケットではその存在感が薄れている」とコメントしていた。
ちなみに米テスラの7-9月期の販売台数は24.1万台(前期比+73%)、トヨタの7-9月期は194.6万台(同+1%)。テスラの販売台数はトヨタのわずか12%に過ぎないものの、時価総額は10月25日に初の1兆ドル(113兆円)を超えたことでトヨタの3倍超の規模に達するなど大きく水をあけられている。
同社は、今年10月1日に1→5の株式分割を実施した。従来は最小投資単位100株を買うには約100万円が必要であったが、現在は約20万円となっている。これまで同社に単元株で投資できなかった投資家にも裾野が広がり、買いやすくなったのはポジティブである。
(DFR投資助言者 太田忠)
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