保有しているだけで、分配金が毎月もらえる毎月分配型投信。「毎月少しずつお金がもらえるのなら欲しいかも」と思う人もいるでしょう。しかし、この毎月分配型投信、特殊な商品性ゆえに保有していい人とダメな人がハッキリしているのです。今回はどんな人が買ってよいか、どんな人が買ってはいけないかを説明しましょう。
毎月分配型投信は大きく資産が増えない商品
フツーの投資信託はファンドの運用によって得た利益を元本に入れるため、資産が雪だるま方式に膨らんでいきます。
それに対して、分配金を毎月支払っている毎月分配型投信は運用の利益から分配金を支払っていくため、元本にプラスされる金額が少なくなります(利益が少ない場合は元本を取り崩して分配金を支払う場合もあります)。
家計に例えてみましょう(税金等は考慮しません)。元手が100万円の家庭、AとBがあったとして、まったく同じ運用を1年行ない利益が10万円出た場合、Aは元手の100万円に10万円を加えて運用を続け、Bは10万円の利益のうち8万円を使い、残りの2万円を元手に加え運用を続けました。
2年目のスタート時点の資産は次のようになります。
Aの資産:110万円
Bの資産:102万円
次の年も同じ運用を行ない、年利10%の利益が出た場合、
Aの資産:110万円+110万円×10%=121万円
Bの資産:102万円+102万円×10%=112万2000円
その差は、8万8000円となります。
1年目にBが8万円使ったことを差し引いても、2年目で8000円の差が生じているのです。ちなみにBの8万円は毎月分配型投信の分配金に当たっています。
これを毎年繰り返していくと、大きな差が生じていくことはあらためて言うまでもありませんね。
リタイア層は買ってもよい
それでは、ずばり買ってもいい人を教えましょう! それは“お金が大きく増えなくてもいい人”です。
「お金が増えなくていい人なんているのか??」という疑問はごもっと。つまり、これはリタイア層を指します。
私が考えるに、会社を定年退職したリタイア層の問題は「どのように資産を取り崩していくか」にあります。もちろん、大きく増やすに越したことはありませんが、現役時代に貯めていた資産を少しずつ使っていくのは、若い世代が想像する以上のむずかしさがあります。
そこで、数百万円を毎月分配型投信の保有に充てて、毎月数万円の収入を得ることはリタイア層の資産運用として一理あると私は考えます。
また、公的年金は偶数月(2、4、6、8、10、12月)に支給されますが、奇数月は収入がゼロです。毎月分配型投信の分配金はこの奇数月にも懐に入るため、大きな安心感が得られることを多くのリタイア層の方が語っています。
よって、リタイア層の人が毎月の分配金を目当てに毎月分配型投信を購入することは決して悪いことではありません。
逆にお金を増やす必要のある人、つまり現役世代は毎月分配型投信ではなく、ファンドの収益を分配せず再投資するタイプを購入しなくてはなりません。
安定した分配金をもらうために必要なこと
毎月分配型投信を購入するリタイア層は安定した分配金をもらう必要があります。そこで必要なのが“このファンドは安定した分配金が支払えるのか”というポイントです。
このたび私が書いた『あなたの毎月分配型投資信託が危ない!』では、2つのポイントから分配金が安定的に支払えるか否かを診断できる方法をご紹介しています。
Webサイトの記事でもその一端をご紹介していますが、本では診断をするために運用報告書とマンスリーレポートのどの箇所を見ればよいかを詳細に解説しています。また、そんなの面倒という方には、私が分析した「おすすめファンド8本」も掲載しています。
その他にも毎月分配型投信の基本的な解説もありますので、毎月分配型投信をすでに持っている、またはこれから購入しようと考えている方に役立つこと間違いありません。ぜひご一読ください!
*本書で「分配金健全性」と「分配金余力」を評価しているのは純資産総額の上位80本(2012年11月時点)。上位21ファンドについては詳細な分析と評価を記載しています。
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