IR担当者への電話取材に臆する必要はない
今回は、企業取材の方法を紹介します。IR担当者に電話取材する個人投資家が多くいらっしゃると思いますので参考にしてください。これから書く内容は、私が以前に新人アナリスト向けに書いた自著「インベストメント」から抜粋したものです。約20年前に書いたため、今の時代とそぐわない面もあると思いますが、本質は変わらないのでご紹介します。
まず、心構えとして大事なのは、IR担当者への電話取材に臆する必要はないということです。電話取材を躊躇する方も多いかもしれませんが、IRは投資家の問い合わせに対応することが仕事であり、日々、様々な投資家から質問を受けています。したがって、余計な時間を取らせて悪いなどと気を遣う必要はありません。
電話取材のメリットとして、ホームページの閲覧や問い合わせで得られる回答では得られない微妙なニュアンスが分かることがあります。記録として残るメールでは書けないような内容でも、電話なら少し話してしまうことがあります。
実例!上方修正があるかを聞き出すコツ
一例として、業績の上方修正があるかどうかを聞き出す方法を紹介します。営業利益が前年比で30%伸びているが、会社計画は横ばいの企業があるとします。電話すると、IR担当者は今期業績に自信ありげな口調です。しかし、当然ながら、30%という数字は教えてくれません。インサイダーに抵触する可能性があるからです。IR担当者はすべての投資家を公平に扱う義務があります。けれど、うまく聞き出すことで、少しサービスしてくれる場合があります。実例を再現しましょう。
取材者:「営業利益はどのくらい伸びているのですか?」
IR担当:「予想以上に順調です」
取材者:「すごいですね。前年比で10%以上の伸びですか?」
IR:「まあ、そうですね」
取材者:「もしかすると20%以上ですか?」
IR:「いや、どうですかね。そうかもしれませんね」
取材者:「もしかして50%以上ですか?」
IR:「そこまでではないですけと、結構いい伸びです」
取材者:「教えてください。20%から30%の間ですか?」
IR:「まあ、そのレンジの上に近いところかな」
取材者:「(25%から30%だ!)そんなに伸びているのですね」
ここまで聞ければ確証は得られないまでも、営業利益が計画と比べて25%~30%近く伸びていることが分かりました。
さらに深掘りして取材する一例を紹介
業績の伸びの確認に加えて、次に具体的な営業利益額や伸びた要因を取材するための一例を紹介します。下記のようなやりとりに至るかは、企業のIR姿勢や、IR担当者との関係構築ができているかにもよるため、個人投資家の方には難しいかもしれませんが、参考程度にご覧ください。ちなみに、今の私もここまでアグレッシブには聞いていません。
取材者:「そうすると、営業利益額は○○億円程度ですね?」
IR:「いや、これ以上は何も言いませんよ!私は知りません。」
取材者:「これだけ教えて頂いたら電話を切ります。最後です。御社の株を買いたいのです」
IR:「少しお待ちください。営業利益額は2桁の大台にのりました」
取材者:「どうしてそんなに好調なのですか。要因を1点だけ教えてください」
IR:「既存顧客の某社が増産に動いているようです。詳細は言えません」
取材者:「それは○○社ですか、△△社ですか? ××社とも関係良好ですね」
IR:「それ以上は。でも、その3社のどれかです」
取材者:「これで本当に最後です。それは○○社ですね。イエスですか?」
IR:「違うとは言いにくいなあ。もう本当に勘弁してください」
業績動向を取材する際の「切り札」は、「10%ルール」と「30%ルール」です。企業は、当初計画と比べて売上で上下10%以上、利益で上下30%以上、業績が異なる場合、上方修正または下方修正をしなければなりません。
取材して、業績があまりにも好調なら、上方修正の可能性があります。さりげなく聞いてください。「それでは、上方修正しなければなりませんね」と。IR担当者がどう反応するのか、ニュアンスや言い回しに注意すれば、かなり感触がつかめます。こうした感触はメールやファックスでは分かりません。直接会うか、電話してこそ伝わってくるのです。
具体的な数字で聞く、簡単に引き下がらない
ポイントは具体的な数字で聞くことです。IR担当に「業績は順調に推移しています」と言われると、多くの方は「そうですか。わかりました」と安心して終了しますが、それで引き下がらない。「御社のご計画より5%以上、上回っているのでしょうか、それとも10%以上でしょうか」と数字をぶつけてください。
取材は引き下がらない、がモットーです。私がよく使うのは、いろいろ聞いた挙げ句に「すみません、あと1点お願いします」と続けることです。十分な確認ができたら「本当にありがとうございました。御社への投資を前向きに考えたいと思います」とお礼を述べて電話を切ります。こうした取材は時間もかかりますが、IR担当者に気を使う必要はありません。なぜなら、疑問が解決できれば、投資家はその会社の株を購入するかもしれないわけですから、IR担当者の腕も見せ所なのです。
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(DFR投資助言者 山本潤)
この連載は、10年で資産10倍を目指す個人のための資産運用メルマガ『山本潤の超成長株投資の真髄』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、週2回のメルマガの他、無料期間終了後には会員専用ページでさらに詳しい銘柄分析や、資産10倍を目指すポートフォリオの提案と売買アドバイスもご覧いただけます