FRBの金融政策変更やウクライナ情勢で軟調な地合いが続く
米連邦準備理事会(FRB)の金融政策を巡って世界の株価が揺れ動いている。これまで鉄板の強さを誇っていた米国株。NYダウもS&P500指数も年初から大きく下げ、「GAFAMなら大丈夫!」と思われていたナスダック指数も急落している。もちろん世界のマーケットにも大きな影響が出ており、日本市場は2月14日時点で日経平均が年初来-5.9%、Topix-3.1%、ジャスダック-6.2%、マザーズ-25.1%。そこにウクライナ情勢という地政学的リスクものしかかってきており、予断を許さない。
そんな中、今回は改めて株価にとって今や最も重要な米国の金融政策と、「今、我々はマーケットサイクル(金融相場、業績相場、逆金融相場、逆業績相場)のどの地点にいるのか?」「今後どうなるのか?」を考えたい。
私がザイ投資戦略メルマガ「太田忠の勝者のポートフォリオ」での投資助言や、投資関連で日本一の生徒数&講義数を誇るオンライン投資講座を主宰するGFS(グローバル・フィナンシャル・スクール)の講師を引き受けるようになってから、個人投資家との接点が格段に増えた。それ故に、昨今の難しいマーケットについての質問が急増している。その代表的なものが次の質問だ。
今は逆金融相場ではなく、テーパリング期間中のガタガタ「業績相場」だ
「今は逆金融相場だと思いますが、今年はずっと続くと思いますか?」「3月までにテーパリングを終了し、利上げ開始とアナウンスされていますが、ついに業績相場から逆金融相場に移行するということでしょうか?」
金融正常化に向けた動きの中で、寅年相場は新年から逆風のスタートとなったが、マーケット関係者には想定されていた事態であり、特段のサプライズはないと思う。今の株価の下げを見て「逆金融相場」という人が増えているが、これは明らかに間違っている。今の相場はテーパリング期間中のガタガタする局面における「業績相場」だ。
テーパリング中は「金利引き上げ」や「保有資産の縮小」の話が出てくるので、当然、株価は不安定な動きとなる。前回のテーパリング局面では日経平均は15%下がった(私が年初に予想した日経平均の今年の下値は昨年末から15%下落した24500円としたのはこのためだ。詳細は第14回コラム「2022年の日本株マーケットを大胆予想。日経平均は2万4500円~3万4500円。今年はテンバガー狙いよりバリューへ」参照)。
しかし、それが終わり、徐々に金利が上がると落ち着いた業績相場に戻った。「金利上昇は株式市場の大敵!」と勘違いしている人が多いが、ゆるやかな金利上昇は株式市場にプラスである。一方、逆金融相場は金利がとことん引き上げられた後に起こるのが毎度のパターンである。逆金融相場においては、今の相場では多少の値下がりはあるものの非常に堅調な大型株もクラッシュしてしまう。もし本当に今が逆金融相場ならもっと悲惨な光景になっているはずだ。
コロナ禍からのFRBの金融政策を振り返る
2020年からのFRBの金融政策の変遷を見よう。コロナショックで2020年3月から本格的に金融緩和を開始(ゼロ金利政策実施&量的金融緩和を月間1200億ドル)し、 同年8月よりインフレターゲット2% を導入した(コロナで急速に悪化した経済を立て直す決意。象徴的だったのが4月20日にNY原油先物価格は -40.32ドルに!)。
その後、ワクチン普及で経済再開&急速な景気回復(2021年4-6月にGDPはコロナ前水準回復、失業率は最悪の14%から4月は4%台に、インフレ率も2%を超える)によって、金融緩和策は不要になったと判断し、2021年11月からテーパリングを開始した(買い入れ資産を毎月150億ドルずつ減額、2022年6月に終了へ)。
ところが、予想以上にインフレが進んだ(CPIが11月に+6.8%と39年ぶり水準へ、FRBの「インフレは一時的」判断を12月に取り消し)ため、2021年12月にテーパリング終了を前倒し(買い入れ資産を1月より300億ドルずつ減額、2022年3月に終了へ)&利上げすることを決定した。その後もインフレが進み(CPIが12月に+7.0%と40年ぶり水準へ、失業率は3.9%へ低下、平均時給+4.7%)、今年1月に正式に利上げ宣言&保有資産の縮小を表明した(3月に利上げを実施、FRB保有資産8.7兆ドル(1000兆円)を順次縮小)。それにより、1月の株式市場は大荒れとなり、2月もその状態が続いている。
相場好転後も、高バリエーションの小型グロース株は厳しいまま…
今、重要なのは「現在決まっていないこと&わからないこと」を整理することだ。なぜなら、それがクリアになれば不透明要因が消えていき相場の転換点が見いだせるためだ。ポイントは3つある。①2022年3月の利上げ幅(0.25% or 0.50%?)、②それ以降の利上げペース(5月、6月、7月、9月、11月、12月?)、③FRB保有資産の縮小スケジュール(いつから? 縮小額は?)。こうした点が懸念材料の争点になる限りは相場の波乱要因となる。個人的には3月から5月ごろまではガタガタ相場が続くと考えている。
金利が徐々に上昇し始めると再び落ち着きを取り戻して業績相場へ回帰する。世界的な景気回復基調は続き、企業業績に支えられたマーケット展開に戻る。ただし、今、小型グロース株やハイテク株が大きく値を崩しているように、高バリュエーション銘柄は業績相場に戻っても厳しいだろう。
なぜなら、金利が上がると高バリュエーション銘柄はより一段と割高に見えてしまうからだ。小型株のスペシャリストである私が言うのも何だが、今年最も厳しいのは小型グロース株だろう。一方、昨年まではほとんど陽の当たってこなかった大型バリュー株の巻き返しが顕著だ。鉄鋼、海運、金融、商社などのセクターは、ものすごい利益を出しつつ超割安な銘柄が多く、2023年3月期も大幅増益が期待できるだろう。業績相場に戻れば大型バリュー株と小型グロース株の格差が一段と開くと考えている。
●太田 忠
DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。プロが評価したトップオブトップのアナリスト&ファンドマネジャー。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
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