「勝者のゲーム」と資産運用入門

東証の市場再編で生まれる「プライム」は、基準が甘い!このままだと海外投資家のマネーを呼び込めず、日本の株式市場はもっと低迷する?太田忠の勝者のポートフォリオ 第15回

2022年1月19日公開(2022年3月29日更新)
太田 忠
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

4月から変更される東証の新市場区分をおさらいしよう

 今年4月から東京証券取引所の市場区分が変更される。現在の1部、2部、ジャスダック、マザーズの4つの区分から、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編される。2021年12月末に市場選択の申請を締め切ったが、実質最上位のプライムに1841社が上場することが判明した。

Photo :Ystudio / PIXTA(ピクスタ)

 今回の大掛かりな東証再編の狙いは、投資マネーを呼び込むため企業に成長を促した上で、各市場の役割をはっきりさせることにあるらしい。現在の東証1部の上場社数は2185社あり、全体の6割が集中している。これは海外の主要市場と比べても企業数が多い。一方、世界の主要市場の時価総額をみると、東京は欧米に大きく水をあけられている。プライム市場を新設し、そこに日本有数のグローバル企業を上場させることで、海外投資家を中心に多くのマネーを呼び込み、市場を活性化したいのだろう。

最大の問題は、プライムという市場名に値しない企業が多く入ること

 しかし、今回の再編で最も目につく問題は、「最良の」などを意味するプライムという区分名をつけておきながら、その名に値しない企業が多く入っている点だ。プライム基準を満たさない企業でも再編後の経過措置により、基準を満たすための計画書を提出すれば、当面はプライム市場に所属できる。そういう中途半端な企業が344社も存在するのだ。

 さらにスタンダード、グロースを設けたことで、従来の東証二部、ジャスダック、マザーズという区分がなくなり、東証二部とジャスダックのベンチマークが消滅する問題も看過できない。ただし、マザーズ指数はマザーズ先物があるため継続される。さらに悩ましいのがTOPIXの中身も徐々に入れ替わる段階的な改革が2025年1月までおこなわれるため、ここでもベンチマークの問題が発生する。

私なら時価総額5000億円以上の企業をプライムとして定義したい

 プライム市場1社あたりの時価総額(21年末)の実態がわかるよう中央値で見た場合、どれくらいあるのかご存じだろうか? 再編前の東証一部が446億円、再編後のプライムは599億円である。確かに150億円ほど増えているが、中央値はとてつもなく小さい規模だ。ちなみにNY市場は3269億円、ナスダックのグローバルセレクトは1999億円、ロンドンのプレミアムは1948億円だ(もちろん、あくまで中央値なので、小粒の企業も多く紛れている点は指摘しておきたい)。いずれも2000億円~3000億円の規模があり、東証プライムの3倍~5倍あるのだ。

 海外投資家に向けて「日本には多くの魅力的な企業があり、株価は割安に放置されているので、注目してほしい!」というコンセプトを明確に打ち出すとすれば、私なら時価総額5000億円以上の企業をプライムとして定義する。こうすれば対象企業は約250社に絞られ、時価総額の中央値も1兆円近くまで引き上げることができる。もちろん、GAFAMのように100兆円、200兆円を超えるような企業はないにせよ、東証一部の大所帯に埋もれて注目度が薄いがゆえに低評価に甘んじている企業に光が当たると思う。また銘柄数を250社に絞り込めば、海外投資家への訴求も高まる。

現区分の最上位に「東証プライム」を加えるだけで、改革は事足りた

 これを実現するために最もスムーズなのは、東証一部の上に時価総額5000億円以上のまさしく「東証プライム」を作り、日本を代表する企業群のグループを形成することだ。とにかく、明確な特徴を持った企業群にスポットを当てる東証プライムを1つ追加するだけで済ませておけば、ベンチマークの消滅問題なども発生しなかったはずだ。

 東証プライムの下に位置する東証一部企業には頑張って東証プライムに入ってもらうようにハッパをかけ、企業側も投資家の期待に応えるためグローバル展開を注力する、こういうムードを作り出して欲しいのだ。また、現在の上場廃止基準を厳しくし、もはやパブリックの名に値しないような企業は退場させる形にしたい。大学入試に合格したらその後の学生生活は安泰、というのではダメだ。欧米の大学は入学後が本当の勝負で熾烈な努力が求められる。日本の株式市場にもそうした雰囲気が必要だ。

 現在のTOPIXは東証1部の全銘柄で構成されるが、市場再編に伴いプライム市場とは切り離される。新たなTOPIXは流通時価総額100億円以上の基準を設けて絞り込むため、その要件を満たさない企業は対象から段階的に外れる。もし仮に私が提案した形の東証プライムを作れば、TOPIXはもちろんそのまま継続だ。

このままでは、海外投資家の新たなマネーを呼び込むのは難しい

 私の案であれば、つまらない企業がわんさか入るTOPIXには投資できないが、東証プライム指数には投資したいという海外投資家のニーズにも応えられただろう。「日本に投資するなら、まずは東証プライム指数に投資するのが基本」という認知を得ることができたはずだ。もちろん、東証プライムを作っただけで企業の中身が急に変わるわけではないが、今の改革だと明確なコンセプトを投資家に訴求することすらも失敗している。

 プライム市場に上場する企業一覧を見て驚いたのが、例えばレオパレス21(8848)のような企業でもプライムを目指しているらしいという点だ。アパートの施工不正問題で信用はガタ落ち、業績はボロボロ、HPを覗いてみれば代表者たる社長の顔写真すら載っていない。お粗末すぎる。別にレオパレス21だけを槍玉に挙げるわけではないが、このような企業がプライムに入ったら大きな問題だと思う。

(DFR投資助言者 太田 忠)

 この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、週2回のメルマガの他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。

 

国内外で6年連続アナリストランキング1位を獲得した、
トップアナリスト&ファンドマネジャーが
個人投資家だからこそ勝てる

「勝者のポートフォリオ」を提示する、
資産運用メルマガ&サロンが登場!

老後を不安なく過ごすための資産を自助努力で作らざるを得ない時代には資産運用の知識は不可欠。「勝者のポートフォリオ」は、投資の考え方とポートフォリオの提案を行なうメルマガ&会員サービス週1回程度のメルマガ配信+ポートフォリオ提案とQ&Aも。登録後10日間は無料!

太田忠の勝者のポートフォリオ

10日間無料 詳細はこちら※外部サイトに移動します


「勝者のゲーム」と資産運用入門 バックナンバー

»もっと見る

太田忠の勝者のポートフォリオはこちら!
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2021年の最強クレジットカード(全8部門)を公開! 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
イオンカードに新規入会5%OFF!詳しくはこちら! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
イオンカードに新規入会5%OFF!詳しくはこちら! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

最強5万円株
毎月高配当
ふるさと納税

1月号11月21日発売
定価780円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[最強5万円株/毎月高配当]
◎巻頭企画①
2年目NISA6つのチェックポイント
損が出ていたらどうする?
旧NISAの正しい仕分け方は?など

◎巻頭企画②
中間決算速報!2025年に向けて上がる株
通期上ブレ期待株
稼ぐ力が高まった株

◎第1特集
少額でたくさん買える!
配当利回り5%超や10倍株など!
最強5万円株93銘柄

十夢が直撃!桐谷さん、5万円株の魅力を教えて!
桐谷さんお墨付き!5万円優待株!
●有名株も大化け期待株も!イチオシお宝株
●長期で安心して持てる!買いの高配当株
-配当利回りトップ50買い売り診断
●株価10倍が狙える株も!プロ厳選株

◎第2特集
毎月配当金&優待がもらえる生活
毎月配当&優待をもらうための3つの極意&買い時
●1~12月決算月別のオススメ株72を公開!
配当+優待カレンダー
●綴じ込み付録:勝ち株を書き込める!銘柄管理シート

◎第3特集
NISAで勝つための新戦略!ETF入門
桶井道さん&たぱぞうさん2人の凄腕のワザも!
【別冊付録】
年末の失敗も撲滅!駆け込み!
「ふるさと納税絶品カタログ」全7ジャンル

●Category①肉類
●Category②魚介類
●Category③加工食品
●Category④新米&ごはんのお供
●Category⑤果物・野菜
●Category⑥菓子・飲料

◎連載も充実!

◆目指せ!お金名人
◆10倍株を探せ!IPO株研究所2024年10月編
◆おカネの本音!VOL.29兒玉遥さん
◆株入門マンガ恋する株式相場!
◆マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
◆人気毎月分配型100本の「分配金」速報データ!


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!
>>
【重要】定期刊行物 予約購読規約変更のお知らせ


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

【法人カード・オブ・ザ・イヤー2023】 クレジットカードの専門家が選んだ 2023年おすすめ「法人カード」を発表! 「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報