自動車と共に日本のものづくりを支える機械業界。企業の設備投資に業界動向が左右されるため、景気のバロメーターにもなっている。コロナ禍では企業の設備投資減の影響を受け、足元では資源高という危機も訪れる。特集『選別開始!倒産危険度ランキング2022』(全20回以上)の#17では、機械業界の倒産危険度を検証した。すると、23社が“危険水域”に。財閥系企業もワースト9位にランクインした。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
三井E&Sは5期連続営業赤字
造船業界の厳しさが浮き彫りに
財閥の名門が苦渋の決断を迫られた。2021年秋、三井E&Sホールディングス(HD)が祖業の造船事業からの“撤退”を断行した。
三井E&Sといえば、財閥解体前の旧三井物産造船部として1917年に創業した三井グループの名門だ。にもかかわらず、祖業を手放さざるを得ないほど三井E&Sの経営には余裕がなかった。なにせ18年3月期以降、5期連続で営業赤字が続いている。自己資本も減少を続け、22年3月期は自己資本比率が14%という低水準に落ち込んでしまった。
造船業界は厳しい事業環境が続く。一時期冷え込んでいた造船市況は海運市況の上昇を受けて回復傾向にあるものの、世界のシェア上位には強い価格競争力で規模を拡大した中国・韓国勢が立ち並ぶ。
シェアで劣後する三井E&Sが単独で生き残るのは困難な状況で、また国内の造船各社の再編機運も高まっていた。
結局、21年10月に艦艇・官公庁船事業を三菱重工業に売却。また商船事業については常石造船に事業会社の株式の49%を譲渡し開発・設計に特化させ、さらに今年10月には17%を追加譲渡し連結子会社からも外れることとなった。
今後は、国内シェアの高い船舶エンジンや港湾クレーンといった機械事業に集中し、アンモニアや水素を燃料とする次世代エンジンなどの開発を進め、競争力向上を図る考えだ。26年3月期には190億円の営業利益と26%の自己資本比率の達成を狙うなど、事業基盤の立て直しを進める。
機械業界には、船舶関連や産業用ロボット、建設機械に発電設備など幅広い業態が含まれる。共通するのは企業の設備投資に業界動向が左右されるため、その業績動向は世の中の景気を表す“バロメーター”でもあるということだ。
コロナ禍による企業の設備投資減によって大ダメージを受けた企業があるほか、鉄鋼価格の上昇に代表される「資源高」という危機も訪れており、経営環境は険しさを増している。
多種多様な産業に関わる機械業界の倒産危険度をダイヤモンド編集部が検証したところ、23社が“危険水域”にあることが判明した。
三井E&Sだけでなく、航空機事業などを手掛ける“財閥系企業”や創業100年を超える“老舗繊維機械メーカー”などもランクインした。
果たして、どんな企業がランクインしたのか。次ページで、23社の顔触れをチェックしていこう。