電力使用ピーク時間帯の改善で
「無駄に多く払う」を回避

 ここからは法人向け(低圧動力プラン、高圧・特高区分)の節約術をお伝えしよう。

 大前提として、燃料価格の高騰で電力各社による値上げや新規受け付け停止が相次いでいる。従って、「安い電力会社(新電力)を選ぶ」という従来型の節約術は採りようがない。

 つい数年前までは高圧区分の電気料金単価が大幅に値下げされていたので「低圧受電から高圧受電への切り替え」も有効だったが、最近は高圧区分が値上げされてきたため、切り替えのうまみがほとんどなくなっている。

 故に節約術を極めるしかない。日本電気保安協会が挙げたのは以下の三つだ。

 最も難易度が低く、実行できそうなのが電力使用ピーク時間帯の改善だ。無駄に多くの電気代を払わずに済むノウハウだ。

 そもそもざっくりと言うと、基本料金算定の基となる契約電力は、過去1年間の電力使用ピークの値(キロワット)で決まる。

 つまり、電力使用ピークの値を押し上げてしまうと基本料金が以後1年間増額されてしまうのだ。そのため、「ピークの値を押し上げそうなときは電気を使わない」ことが肝要になる。電力使用をほかの時間帯へ分散したり、そもそも不要な電力使用はしないようにしたりするしかない。

 例えば、飲食店などでは調理や食洗器稼働の時間をずらしたり、自動販売機であれば電力使用のタイマーの設定を調整したりすることが考えられる。ほかにも、老人ホームなどの共同居住施設であれば備え付けの電化製品を一斉稼働させないことも有効だ。

 日本電気保安協会が極端な例として紹介するのは、保育園が食器乾燥機(消費電力7.1キロワット)を1時間使用するケースだ。電力使用ピークの値を押し上げなければ約90円で済むが、電力使用ピークの値を押し上げてしまうと、1年分の基本料金増額分を含めてなんと約15万円もかかる計算になる(金額は電力会社や時期によって前後)。

 難易度「中」のノウハウは、条件に当てはまるケースが限定的ではあるが「電力会社と協議」というものだ。

 通常1年間は基本料金を変更できないが、稼働率の変化などがあれば、電力会社との協議結果次第で基本料金を下げることができる。

 ただし、日本電気保安協会は「ノウハウが必要なので当事者だけではなかなか難しい。われわれのようなプロのサポートが必要」と指摘する。

 難易度は高いが有効な取り組みもある。それが契約を高圧区分から「低圧動力プランのブレーカー契約方式」に替えるものだ。新型コロナウイルス感染拡大の影響により稼働率が下がった法人などで、最近このノウハウを実行するケースが増えているという。

 簡単に言えばブレーカーを介することで“圧縮した契約容量”、つまり安い基本料金で契約することが可能となる。日本電気保安協会は「電気代総額で2割程度下がるイメージ。ただし当てはまる法人は非常に少ない」と説明する。

 年明けからは国の電気代負担軽減策(低圧区分で1キロワット時7円、高圧区分で1キロワット時3.5円を補助)が始まる。とはいえ、多くの電力会社で2023年春以降、家庭向けも法人向けも電気代がさらに上がる見込みだ。

 賢い節電・節約術を実行したい。

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