今回も前回から引き続き、不動産投資における「失敗しない物件選びのコツ」について話をしていきます。これから不動産投資を始めたい人は、ぜひ参考にしてくださいね。
現実的な収支のシミュレーションを必ずしよう!
失敗しない不動産投資に欠かせないのは、さまざまなリスクを含めた現実的な収支のシミュレーションをしておくことです。買いたい物件が見つかったら、「楽待」などの不動産投資情報サイトにある、シミュレーションサービスやアプリを利用して、必ずキャッシュフローを算出します。
「物件価格」「表面利回り」「物件構造」「築年数」「建物面積」を入力するだけで、向こう30年以上にわたる「キャッシュフロー」「実質年間収入」「累計キャッシュフロー」「修繕が必要な時期」「ローン完済時期」「減価償却終了時期」などが、すべて一覧で確認できます。
【現実的な収支のシミュレーションをしてみる】
「楽待」でのシミュレーション条件入力例
<物件情報>
物件価格:5,000万円
表面利回り:8%
物件構造:SRC造
築年数:10年
建物面積:130㎡
<条件>
自己資金:250万円
金利:2%
ローン期間:30年
入居率:75%
<購入条件>
物件価格:5,000万円
建物価格:2,047万円
個人・法人:個人で購入する
<収入>
想定年間収入:400万円
家賃下落率:1%/年
<支出>
年間経費:90万円
固定資産税:49万円
管理費:実質年間収入の5%
その他経費:0万円
都市計画税:11万円
修繕費:実質年間収入の5%
所得・法人税率:30%
大規模修繕費:1回目 12年後に130万円
金融機関提出の資料もやや厳しい入居率を想定
損益計算書も、アプリで簡単につくれるので、わかる範囲で数字を当てはめて収支をシミュレーションしましょう。私がシミュレーションするときは、投資する物件の入居率を厳しめに見積もって75%で計算しています。一般的には、入居率90%をベースに試算している人が多いのですが、私は厳しめの数字を前提にしているのです。実際のところ、私が所有している物件で、入居率90%を下回っている物件は1つもありません。ただ、どんな物件でも収支が合わないと賃貸経営する意味がないので、将来的には物件の価値と家賃が下がることを見越したうえで入居率75%をベースにしています。
金融機関から融資を受けるときも、入居率75%とやや厳しく想定しつつも、フリーキャッシュフローが2~3%出るシミュレーションをしておくと受理されやすいです。金融機関は通常、入居率90%(厳しいところでも80%)でシミュレーションします。それよりも厳しい入居率75%のシミュレーションを提出することで、リスク管理がしっかりしていると受けとめてもらえるメリットも。場合によっては70%や60%とさらに厳しいシミュレーションにすることもあります。
【ポイント:入居率75%とやや厳しく設定して収支のシミュレーションをする】
不動産の物件情報はインターネット上にあふれており、スマホでも手軽に検索できます。私も各地の不動産価格の相場を知っておくために、チェックすることがないわけではありません。
しかし、優良物件は基本的にインターネット上には出てきません。というより、「一般の目に触れる場所には出てこない」といったほうが正しいでしょう。なぜなら、売りに出された瞬間、不動産会社が贔屓にしている顧客に直接紹介するからです。そして、優良物件であればあるほど早く買い手がつきますから、一般の目に触れません。不動産は、株式のように証券取引所などの市場を通して公開取引されるのではなく、仲介業者を通して売り主と買い主が当事者同士で相対取引されます。
結局のところ不動産の物件情報は、人から人へ伝わるアナログ情報が一番貴重なのです。
こういってもピンとこない人がいると思うので、優良物件の取引が成立するまでの流れを簡単にたどってみましょう。まず、優良物件の情報は、そのエリアに強い不動産会社がいち早く入手する傾向が強いです。というのも、そのエリアの地主や不動産のオーナー(売り主)とよくコンタクトをとっているから。「不動産を売りたい」という売り主が最初に相談をするのは、地元の不動産会社であることが多いです。その不動産会社の担当者は、条件のよい物件を探している買い主とつながっていることが多いので、そうした買い主候補へダイレクトに優良物件を案内します。そのため、優良物件であればあるほど一般公開する前に取引が成立してしまうのです。
優良物件は「川上物件」とも呼ばれます。川の上流のほうで取引が成立してしまい、川下まで情報が流れてこないことのたとえです。逆に、チラシが自宅にポスティングされていたり、電信柱に広告が貼ってあったりする物件は、なかなか売れずに下流に溜まっている「川下物件」ともいわれます。
ひと言で不動産会社といっても、「売り仲介(元付け)業者」と「買い仲介(客付け)業者」に分かれます。元付け業者とは、顧客から直接、売買の依頼を受ける不動産会社のことです。これに対して売り主や買い主を見つけて仲介する業者を「客付け業者」といいます。不動産仲介業では、元付けと客付けが分かれており、両者が共同して売買取引を成立させることが多いのです。
「不動産を売りたい」という売り主を相手にしている元付け業者の主な仕事は、売り主の相談を受けて、国土交通省から指定を受けた「不動産流通機構」が運営する「REINS」(レインズ)という「不動産情報ネットワークシステム」に通常は物件を登録します。その後、登録した物件に目をつけた客付け業者が現れると、買い主を見つけて販売。そこで契約が成立すれば、元付け業者に仲介手数料が入ってくる仕組みです。ただし、売り手と買い手の双方から仲介手数料を得る「両手仲介」を狙ったり、仲間内に物件情報をとどめておきたかったりして優良物件ほど登録しないこともしばしばあります。そして、つき合いのある買い主へ紹介して売買が成立してしまう傾向が強いのです。
もし売り主が手放したい物件と、買い主が探している物件の条件が合わなければ、より広く情報提供しなければならないのでレインズに登録し、その物件情報から各地の業者がポータルサイトなどにアップします。
【ポイント:優良物件ほど不動産業者から買い主候補へとダイレクトに情報が案内される】
今回は、失敗しない物件選びのコツとして、「収支のシミュレーションをする」「優良物件ほど一般の目に触れない」ということをお話しました。特に「入居率75%と厳しく設定して収支のシミュレーションをする」ことと、「優良物件ほど不動産業者から買い主候補へとダイレクトに情報が案内される」ことは、これから不動産投資を始めたい人はぜひ頭に入れて置いてくださいね!
●八木エミリー 投資家。野村證券に入社後、新人で東海地区の営業成績ナンバーワンとなり、最年少講師に。26歳で辞めた後は、不動産投資を開始し、7棟の不動産を所有(購入額7.5億円)。不動産投資の自己資金は徹底した節約で貯めたもの。現在はIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として中立の立場で金融商品のアドバイスなども手掛けている。20代30代を中心に経済的自立を目指すお金ビギナーを救う活動を「マネ活」としてメルマガ配信などを行なっている。著書に『今からはじめれば、よゆうで1億ためられます!』。最新刊は書籍『元証券ウーマンが不動産投資で7億円』(ダイヤモンド社)。
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