米国株の4月のパフォーマンスはNYダウが-4.9%、ナスダックが-13.3%と低調
413ドル安、499ドル高、981ドル安、809ドル安、614ドル高、939ドル安…。これらの数字は4月のNYダウの値動きの大きい日を日付順に並べたものだ。NYダウは連日大きなボラティリティが継続中であるが、ハイテク株比率の高いナスダック指数はもっと凄まじい状況となっている。結局、米国株の4月の月間パフォーマンスはNYダウが1701ドル安の-4.9%、ナスダックは1885ポイント安の-13.3%で着地。ナスダックの下落率は2008年10月に記録した-17.7%以来の大きさとなった。
ちなみに「FANNG」と呼ばれるメタ・プラットフォームズ (旧フェイスブック)、アップル、アマゾン、 ネットフリックス 、グーグル親会社アルファベットの時価総額が合計で1兆ドル(約130兆円)以上減少し、これまでのナスダックの株価成長のイメージが完全に崩れた形となっている。
株式投資をする上で理解が欠かせない「ボラティリティ」
さて、今年の相場の先行きを占う5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を直前に控え、今回は「FOMC直前、マーケットのボラティリティを読む」をテーマに話をしたい。読者の皆さんはボラティリティ(Volatility)についてどれだけご存知であろうか? 個人投資家として株式市場に参加する以上、常にボラティリティを意識し相場の状況をチェックしていく必要がある。
ボラティリティとは一言で言うと「価格変動の度合い」、すなわち値動きのことである。ボラティリティとリスクの関係は次の通りだ。
・ ボラティリティ大 ➡ 価格変動大=リスク大
・ ボラティリティ小 ➡ 価格変動小=リスク小
ボラティリティが大きい場合、期待収益率と実際のリターンには大きな相違が生じることがある。例えば、期待収益率が年間+10%のリターンが期待できるマーケットにおいて、徐々に上昇する(ボラティリティ小、価格変動小)のであれば、ほぼ期待収益率通りのリターンを上げられる。一方、ボラティリティが大きく常にガタガタするマーケットになると+10%の獲得が困難になるのだ。
個別銘柄についても同じことが言える。「今後2年間で2倍のリターンを目指したい」と思った場合に、出発点から着地点までの株価が2倍になったとしても、ボラティリティの大小で実際に2倍のリターンを得ることができるかどうかは別物である。
ボラティリティが大きい銘柄と小さい銘柄、どちらに投資すべき?
例えば、私が5月2日に開催した『勝者のポートフォリオ』サービスの会員限定Webセミナーにおいて検証したケースを紹介すると、マザーズ銘柄のサンバイオ(4592)は2016年6月~2018年8月にかけて株価が2000円から4000円になったが、その過程で安値1000円や高値4500円を付けており非常にボラティリティが大きかった。恐怖心から途中で売却したり、あるいは高値掴みをして損を抱えたりする個人投資家が続出したと思われる。
一方、日本で一番時価総額の大きいトヨタ自動車(7203)は2020年3月~2022年1月にかけて株価は1200円から2400円になったが、非常に綺麗な上昇トレンドを描いており「バイ・アンド・ホールド」で2倍のリターンを獲得した投資家が多かったと推測される。
あなたはどちらのタイプの銘柄に投資したいだろうか?「ボラティリティが大きいと価格変動が大きいから、それだけドカンと儲かる」というマザーズのような新興銘柄好きの投資家の考えは実は間違いだ。目指すとすればはやり「ボラティリティが小さく、価格変動が小さい」銘柄だ。それと大事なことは、マーケット全体が大きく変動する局面よりも安定したマーケットの方がリターンを上げやすいことをわきまえておくことである。
ボラティリティの大きさを知るために活用すべき「VIX指数」
そこで、マーケット全体のボラティリティの大きさを知るために活用したいのが「VIX指数(Volatility Index)」である。S&P500のオプション価格を元に計算されるが、将来の株式市場に対する投資家心理を反映する指数であり、別名「恐怖指数」とも呼ばれる。
VIX指数の値は 0~100%の間を動き、今後値動きが激しいと予想されればVIX指数は上昇、今後値動きが安定的と予想されればVIX指数は低下する。例えばVIX指数が30%の場合「株価が今後1年間に約7割の確率で上下30%の範囲で変動する」という意味である。数値の目安としては10~20%なら市場は安定、20~25%はやや不安、25~30%は不安高まる、30%~は警戒感台頭、そして40%を超えるとパニック状態である。
実際に過去を振り返ってみると、リーマンショックでは89.53%、コロナショックでは85.47%という瞬間最大風速が吹いた。「今後1年間での変動幅が80%を超える」ということは「株価が暴落する可能性がある」ことを意味しており、いかにパニック状態であったかがわかる。「今後1年間なんてそんな長い期間を予想しても意味がない、これから1ヶ月間の値動きが知りたいんだ!」という投資家は多いだろう。実はVIX指数は今後1ヶ月間の変動幅も示唆してくれる。20%だと±5.77%、30%だと±8.66%、40%だと±11.55%、…80%だと±23.09%という具合である。
VIX指数が高い時に安易なトレードは禁物
ちなみに過去1年間を見ると、ウクライナ情勢で緊迫した3月7日の36.45%が最高値であり、その後落ち着きを取り戻して4月4日には18.57%まで低下した。しかしながら、冒頭述べたFOMCを前にしたガタガタ相場で4月29日には33.40%まで上昇している。いわゆる「警戒感台頭」の状態にある。こういう時に安易な気持ちでトレードすると「買うべきところで売ったり」「売るべきところで買ったり」というリターン獲得からは真逆の投資行動を取りやすい。
米国のVIX指数と同じく日本においても日経平均VI指数(Volatility Index)があり、こちらは日経平均の将来的な変動を教えてくれる。数値の見方はVIX指数と同じである。VIX指数および日経平均VI指数ともにネットで簡単に検索して調べることができる。株式市場を考える上でボラティリティのチェックは常に欠かせない。皆さんもぜひボラティリティを知ることでマーケットの考察を深めて欲しい。今後、私のコラムでは度々この恐怖指数を話題として取り上げていく。
さあ、いよいよFOMCが発表される。『勝者のポートフォリオ』ではすでにその内容に応じた対処について会員に情報を発信済みであるが、皆さんは準備できているだろうか?
●太田 忠
DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。プロが評価したトップオブトップのアナリスト&ファンドマネジャー。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
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