先週はNYダウ3万ドル割れ、日経平均2万6000円割れと大荒れの相場に
NYダウは1年5か月ぶりの3万ドル割れ―。先週の米国株式市場は大きく下落し、年初来安値を更新した。NYダウは1503ドル安の2万9888ドルと-4.8%の下落、ナスダック指数は542ポイント安の1万798と-4.8%の下落となった。
一方、先々週まで堅調だった日本市場も大きく崩れた。2万8000円台に乗せていた日経平均は一気に2万6000円台割れとなり、先々週末の2万7824円から先週末は2万5963円へ1861円下落して-6.7%、マザーズ指数は687から621へ66ポイント下落の-9.6%と急落した。
株価の大きな下落をもたらしたのは、第一に6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)による0.75%の利上げを受け、今後の金利見通しが急上昇したことだ。5月のCPI(米消費者物価指数)が予想の+8.3%に対し、前年同月比の上昇率が+8.6%と約40年ぶりの水準を更新して4月の+8.3%からも加速。「そろそろインフレはピークアウトするのではないか…」という見方を完全に打ち消す内容となった。
FRBを筆頭に世界各国の中央銀行が利上げラッシュ
米連邦準備理事会(FRB)は7月も大幅利上げの構えだ。利上げペースの加速によって、FOMC参加者による2022年末時点の政策金利の見通しは2.75%から3.4%まで上昇した。景気を冷やしもふかしもしないちょうど居心地の良い中立金利は2.5%。それを大きく超える金利まで引き上げる、ということは現状の「インフレ退治」が喫緊の課題ということになる。
さらに、イングランド銀行による断続的な利上げに加えて、マイナス金利政策推進の筆頭であったスイス国立銀行が政策金利を-0.75%から-0.25%へ0.50%引き上げたことがネガティブサプライズとして大きい。物価上昇率は日本と同じく2%台のスイスにおいてもインフレ対策が不可欠になっているのだ。さらに欧州中央銀行(ECB)も7月から利上げ開始を決定したことで世界的な利上げの波が押し寄せている。
一方の日銀は、6月の金融政策決定会合で大規模金融緩和の現状維持を決定した。短期金利-0.1%とYCC(10年金利の0.25%上限でのイールド・カーブ・コントロール)を維持した形であるが、一連の動きは今後日銀の金融政策へ影響を及ぼすと思われる。
「逆金融相場」→「逆業績相場」に入れば、日経平均下値メドは2万1000円
世界の中央銀行の急速な利上げと株安を受けて、堅調だった日本市場も先週から「逆金融相場」入りの様相になってきた。5月11日に公開した第31回のコラムで『FOMC後のマーケットを展望 ―』と題して私はこう述べた。5月のFOMCを無事通過したことで「ガタガタ局面からマイルドな業績相場へ」「日経平均は再び3万円を目指す」と。5月6日現在の日経平均はちょうど2万7000円、そして先々週は順調に2万8000円台を回復していたが転換点に差し掛かってきた。
同じコラムの中で「逆金融相場入りのシナリオ」についても触れている。「逆イールドが出たため今後景気減速がやって来る。業績相場の先には逆金融相場が待ち受けている」「もし、逆金融相場に突入しさらに逆業績相場に入れば、待ち受けているのは相場全体の下落だ」「逆金融相場&逆業績相場を経験した2007年~2008年初めまで日経平均は-36%、2015年半ば~2016年半ばまでは-29%、そして最も直近の2018年は-22%となった。この経験則に基づけば、来る日経平均の下値メドは2万1000円(直近高値2万8252円から「-25%」の水準)である」と。
「勝者のポートフォリオ」は下落に備えてETFを売却し、現金保有を拡大
米国の政策金利が3%を超える状況になれば、業績相場は耐え切れなくなり逆金融相場に入るシナリオが現実化する。これまで堅調であった日本市場は、想定よりもかなり早期に逆金融相場入りする可能性が高まってきたため、私が投資助言をしている「勝者のポートフォリオ」は先週キャッシュポジションを多く持つ投資スタンスに変更した。具体的に言えば、従来よりアンシステマティックリスク〈個別銘柄リスク〉の低減として保有していた市場連動型ETFのウェートを引き下げた。すなわちシステマティックリスクの要素を受けにくい形へと運用を改めた。
実は6月の下げ相場に入ってもポートフォリオの個別株はかなり活躍しており、ベンチマークに対してアウトパフォーム(成績が上回る)している。こうした強い銘柄は残しつつ、システマティックリスクを低減させつつ、手厚いキャッシュを手元で持つという戦略だ。全体の3分の1近くがキャッシュとなったため、今後相場が下落すればより割安で投資できるチャンスが生まれる。もちろん、インフレ懸念がもし急速に後退することで相場が出戻り機運になれば、いつでもエントリーできる状態である。
仮に逆金融相場入りとなっても、すべての銘柄が一気に下落するわけではない。折に触れて相場全体が反転する可能性もある。引き続き活躍する銘柄も多いと思う。ただし、市場参加者はキャッシュポジションを増やすなど対応をしておく必要がある。
さあ、いよいよ大事な局面に差し掛かってきた。
「相場の下落は将来の利益の源泉」ということをお忘れなきよう。
●太田 忠
DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。プロが評価したトップオブトップのアナリスト&ファンドマネジャー。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
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