「勝者のゲーム」と資産運用入門

株価下落や円安など激動の2022年上半期が終了。マーケットを振り返り、今後の投資戦略を考える。更なる株価下落とその後到来する金融相場に備えよ!太田忠の勝者のポートフォリオ 第39回

2022年7月6日公開(2022年7月6日更新)
太田 忠
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米国株の下落幅、円安、高インフレなど2022年上半期は記録づくめ

 史上最速の梅雨明けで、夏本番―。早くも今年1年の半分が経過し、後半戦に突入した。毎年、年央と年末に私は自分の活動を振り返りフェイスブックに忘備録の形で記述するのだが、この半年間は9つの項目で自分なりにいろいろ前進があった。「自分の振り返り」は自分が目指す将来の実現を加速させるためのエンジンになるので、皆さんにもぜひともお勧めしたい。

 さて、今回のテーマは「2022年上半期のマーケットを振り返る」である。2022年上半期の金融市場は歴史的な激動となった。円相場は対ドルで22円の円安と40年ぶりの下落幅、米国株は20%安と52年ぶりの下げ相場。そしてロシアによる理不尽なウクライナ侵攻が起こり、欧米では1970~80年代以来の高インフレ。低インフレ・低金利の環境に慣れきっていた私たちに大きなショックをもたらしている。

ドル円は137円まで下落。上半期の下落幅としては1982年以来の大きさ

 まずは為替相場。金融政策の方向性が180度異なる日米の中央銀行。10年国債の利回り差は、昨年末の1.4%から2.9%に広がった。拡大幅は上半期では35年ぶりの記録である。金利差拡大を背景に円相場は6月29日水曜日に24年ぶりとなる137円台まで下落し、上半期の下落幅としてはプラザ合意でドル高が是正される直前に経験した1982年以来の大きさとなった。ちなみに昨年末の為替は115円台である。

  米アップル社のiPhoneが7月1日から大幅値上げされたとのニュースが大きく取り上げられているが、これは別にアップルが本国で値上げをしているわけではなく、円の価値が下がったため日本人が割高で買わなければならない状況になったということである。1ドル買うのに半年前は115円出せばよかったのが、今や137円出さなければ1ドルを買えない。輸入品はすべからくこのような形になっているので、日本人は買いたいものが買えない構図に追い込まれている。

ナスダックは29%安と過去最大の下げ。債券も下落し、株式ヘッジの役割を果たせず

 次にインフレ問題だ。米国は景気回復でゼロ金利政策をおこなう必要がなくなり、昨年11月からテーパリングを開始。徐々に金利を上げていく段階になって「コロナ禍からの急速な経済再開」でモノやサービスへの需要が高まり、供給が追いつかない状況でインフレが始まった。その後、ロシアによるウクライナ侵攻で原油高・穀物高が拍車をかけて、インフレが一気に加速した。国際商品の総合的な値動きを示すリフィニティブ・コアコモディティーCRB指数は今年1~6月に29%上昇。これは2008年上半期と並ぶ最大級の上昇である。欧州のガス価格は98%上昇、米国のガソリン価格は72%上昇と市民生活を直撃している。

 このようなインフレが加速する環境では、欧米の中央銀行はインフレ退治目的で政策金利の引き上げを急がざるを得ず、それが株式市場にとって逆風となった。世界株指数は18%下落、S&P500指数は20%下落、そしてハイテク・グロース企業が主体のナスダック指数は29%安と上半期で過去最大の下げとなった。日経平均は8%安と底堅いが、グローバルベースを基準としたドル建てでは23%安となっており、海外投資家からするとかなりの下げとなっている。

 ゼロ金利、マイナス金利下では「債券バブル」と呼ばれるほど国や企業の債券発行が増えて、投資家はこぞって買った。だが今年は一転して金利が急上昇し、国債や社債など幅広い債券を含むブルームバーグ債券指数は何と11%もの下落。上半期としては1990年以降最大の下げだ。要するに「株がダメなら債券でリスクヘッジ」というキャッチフレーズは全く機能せず、債券投資がリスク分散の役割を果たしていないのである。

来るべき下落局面を味方につけ、その後いずれやってくる金融相場で花開くよう準備

 私が投資助言をおこなっているダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチの『太田忠の勝者のポートフォリオ』の今年の上半期のパフォーマンスは、-2.3%(Topix-6.1%。日経平均-8.3%、マザーズ-33.0%)。2021年10月よりスタートし、大きな逆風が続く中で累計パフォーマンスは-3.3%(Topix-7.8%、日経平均-10.4%、マザーズ-41.3%)。おかげさまで指数を大きくアウトパフォームしているが、これはひとえに「グロース敬遠、バリュー特化」という戦略をとってきたからだ。6月中旬から「日本市場は逆金融相場入り」と判断し(第37回コラム参照)、キャッシュポジションを急激に増やした。来るべき下落局面を味方につけ、いずれやって来る金融相場で大きく花開くように準備している。

 ところで前回の第38回コラムの最後で私はこう述べた。先々週の急反発の局面において「三菱重工業のような一貫して上昇していた銘柄が大きく下げ(バリュエーションはまだ割安)、その一方でこれまで一貫して売られていたグロースや新興銘柄が買われる(バリュエーションはまだ割高)動きが出た」ことに関しては、先週はまた元に戻ったとの印象だ。やはり、逆金融相場においては「グロースや新興銘柄は割高感から売られやすい」というのが定番であり、「景気減速下では景気敏感株よりも健闘するとの思惑」に至るまでの動機づけは起こっていない。先々週の現象は、とりあえず「打ち上げ花火的な単発的動き」というのが私の見解である。

●太田 忠

DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。プロが評価したトップオブトップのアナリスト&ファンドマネジャー。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。

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