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人はなぜ、商店の安売りセールには群がるのに、投資資産が安くなると離れていくのか?バーゲンハンティングのチャンスを逃すな!

2022年10月27日公開(2022年11月1日更新)
ポール・サイ
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ほとんどの投資資産が下がっている。こんな時、投資チャンスはその中に潜んでいる

 現在、世界的なインフレにより、貨幣の価値はモノに対して下がっています。

 また、世界の通貨はすべて米ドルに対して価値を下げています。この流れはアメリカが利上げをやめなければ止まらないでしょう。

 すべての通貨はインフレによって、消費財・サービスに対して価値が下がっています。

 株も、ほとんど下がっています。債券も下がっています。原油、資源、金なども横ばいか下がっています。暗号資産(仮想通貨)も、NFT(※)も下がっています。

(※編集部注:「NFT」とは「Non-Fungible Token」の略。日本語では「非代替性トークン」などと言われる)

 こういうほとんどの資産が下がっている時は、何かがおかしいのです。

 すべて下がっているということは、本来は下がるべきではない、中期的に見て価値があるものもいっしょに下がっている兆しです。何かミスプライシング(価格のつけ間違え)が起こっているはずです。

 ただ、すべての資産が戻るわけではないと思います。どれが回復し、どれが回復しないのかを見極めなければいけません。

 また、時間軸も重要です。回復するのに時間をかかるのはどの資産なのか、回復するのが早いのはどの資産なのか、そこを見分けなければいけないのです。

下がっている資産の中からバーゲンハンティングできるものを探すべき

 まず、暗号資産(仮想通貨)、NFTなどは、かなり投機的な部分もありますので、避けるべきだと思います。実用性がまだ欠けているので、本来的な価値がどれだけあるか怪しいです。これらの資産価格は人の考え方に大きく左右されます。ファンダメンタル的な価値は計算・分析しづらいです。

 日本では高利回りの新興国国債など、ハイ・イールド(高利回り)で販売されている金融商品が結構あります。しかし、今は新興国、または世界中の政府が借金をかなり行なっている状態であり、世界的に金利が上がっている中、これらの金融商品のリスクは高いと思います。クレジットリスク(倒産・債務不履行)などがあります。政府債務危機の可能性は高まっています。

 株式については、中期的に世界の先進国株は相対的に見てミドルリスク程度で、まずまずのリターンが得られるでしょう。

S&P500S&P500指数チャート/週足・3年(出典:SBI証券公式サイト) ※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます

 最近はイギリスの金融市場が危機的なことになっていました。これによって、ロンドン市場に上場する多国籍企業もいっしょに売られています。その中からバーゲンハンティングができるのではないかと思います。

 中国株もいつかバーゲンハンティングができると思います。

 政治的な不確定要素が大きく、今のところ、中国株はかなり大きく下落していますが、アリババ、テンセントなどはいい会社です。かなりの強みを持っています。

アリババアリババ・グループ・ホールディング ADR (BABA)チャート/週足・3年(出典:SBI証券公式サイト) ※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます

 中国とアメリカが戦争の方向へ向かい、互いに民間企業を規制する動きなどが起こると、中国株は上がりませんが、もし方向性が変わったら、数倍~10倍程度上がる銘柄は中国株からたくさん出ると思います。タイミングの問題です。

 これは習近平が経済的に合理的に動くかどうかによって決まります。アメリカの政治が弱体化していることも、習近平が自信を持って反米姿勢を強化することにつながっています。これらのトレンドはすぐには変化しなさそうですが、米国が次の大統領になれば、もうちょっとはっきり流れが見えてくるようになるでしょう。

 為替市場を見れば、円安という形で、この世界的な利上げの津波がすでに日本にも押し寄せて来ていることがわかります。何もしないと津波に流されるのは目に見えています。いろいろな意味で、資産を分散投資するのが急務だと思います。

 米ドル資産は中期的に比較的安全だと思います。このことはある程度、コンセンサスになっていますので、米ドル高につながっています。コンセンサスは間違うこともありますが、必ず間違えるわけでもありません。

 中国などの地政学リスクが高い中、アメリカ人以外の投資家にとって、米国株・米国資産はいい投資対象だと思います。全体的に見ると、今後数年は新興国よりも先進国の方がいい投資対象になると思います。

下落相場では節税行動を取るのがいい。タックス・ロス・ハーベストを実行しよう

 市場が下落している中では、含み損を実現損にした方がいいです。

 含み損になっている銘柄を売って、似たような動きの銘柄、たとえば同じ業界の競合、似たようなファンドなどに資金を移すのです。こうすることで、足元では実現損を出し、支払う税金を減らしながら、株価上昇時に利益を逃すこともないことになります。

 これはアメリカでよくやられていることで、タックス・ロス・ハーベストといいます。

まとめ

 資産価格が下がっている時の方が、中長期的な投資を行なう良いタイミングと言えます。

 日本に住んでいたり、日本で働いているみなさんはこの大きな金融・地政学リスクがやってきているなか、分散投資をすることが急務だと思います。

 お店が安売りセールをすると、お客さんは殺到します。ところが、投資資産が安売りされていると、ほとんどの投資家は離れてしまいます。

 これはお店がセールを行なう場合、お客さんはその商品の価値を把握しているからです。一方、株・投資商品の場合、本来的な価値がもっとあるのにも関わらず、一般的な投資家は本当の価値を見分けられていません。そのため、怖がって売ってしまうとか、資金があっても新たに買いに入ることができないことになります。

 下がっているところで投資するのは心理的にはとても難しいことです。人間の心理、衝動に反する行動をとることとなり、ほとんどの人はできないのです。

 なんでも下がっているものを買えばいいわけではないですが、しっかり分析して、下がっている、本当に安くなっているいい資産をピックアップしましょう。今は株式市場・投資商品がセールになっている時期だと思います。

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。

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