ソフトウェアそのものがAIによってコモディティ化される劇的な転換点において、真に重要なものは何か?
日本のビジネス界では「DX」や「プログラミング教育」が叫ばれていますが、投資家の視点で市場の深層を読み解くと、まったく別の景色が見えてきます。
今、私たちが直面しているのは、ソフトウェアそのものがAIによってコモディティ化される劇的な転換点です。
これからの時代、真の「モート(堀、参入障壁)」はもはやコードの中にはありません。「データが王(キング)」であり、「専門領域の知見(ドメイン知識)」が主権を握る時代が到来しています。
[AI時代における知的労働のコモディティ化に関する参考記事]
●2030年までの実現可能性50%。人間と同じかそれ以上の知的能力を持つAGI(汎用人工知能)の登場迫る。知的労働がAIで代替可能になる時、社会はどうなる?
大学受験では依然としてコンピューターサイエンス専攻が最も人気。AIによる劇的な景色の変化に追いつけていない人が多数
イラスト:いらすとや
大学受験を今年控える息子のために、先日、いくつかの大学キャンパスを視察してきました。そこで目にしたのは、教育現場や志望者たちの意識が依然として「過去の成功体験」に縛られているという違和感です。
現在、最も人気があるのは依然としてコンピューターサイエンス(CS)専攻ですが、世の中の群衆は、AIがもたらしている劇的な景色の変化にまだ追いつけていないように見えます。
かつては「コードが書けること」が高年収への切符でしたが、今やAIが中級レベルのコーディングを驚異的な効率でこなす時代です。「純粋なプログラミング」の価値は、今後急激に低下していくでしょう。
イラスト:いらすとや
ここで若者にとって残酷な現実が立ちはだかります。AIが初歩的なコーディングや基礎的なデータ処理を肩代わりするようになったことで、ホワイトカラーの「入り口」となるジュニアレベルの職が急速に消滅しつつあるのです。
かつては実務での下積みを通じて5年、10年かけて習得した「専門知」への階段が、AIによって途切れてしまっています。エントリーレベルの仕事がなくなる中、若者はどうやって「熟練の専門性」を身につければよいのか。その難易度は以前よりも確実に上がっています。
生き残る道は、AIには手が出せない「現場の生きたデータ」や「物理的な制約を伴う専門性」に軸足を置くこと
しかし、AIの急速な発展がもたらした、このような厳しい状況下でも生き残る道はあります。
それは、AIが代替しやすい「論理の構築」に固執するのではなく、AIには手が出せない「現場の生きたデータ」や「物理的な制約を伴う専門性」に軸足を置くことです。
SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)の世界でも、勝つのは汎用AIを使う企業ではなく、他者が決して入手できない独自のデータセットを蓄積している企業です。
日本でも、現場に根ざした膨大な「暗黙知」や特定業界のデータが眠っている企業があります。そして、これらを扱える専門知識こそが、AI時代に難攻不落の城を築くための「堀」になるでしょう。
これからの大学選びやキャリア形成において大切なのは、単なるITスキルの習得ではなく、特定のドメイン(専門領域)で深い知見を得ながら、AIを「高出力のツール」として使いこなす判断力を磨くことです。
「データが王」となる未来を冷静に見据えよう
群衆が「一番人気の専攻」に群がっている今こそ、一歩引いて「データが王」となる未来を冷静に見据えるべきです。
若者にとって専門性を獲得するまでの道のりは険しくなっていますが、早い段階で「AIで何ができるか」ではなく、「AIを動かすための独自の武器(データと知見)は何か」に気づくことができれば、それは他者には真似できない強力なアドバンテージになるはずです。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』発売中。
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