成長する米国&世界に投資する最強のFIRE計画(プロジェクト)

バリュートラップに気をつけろ!日本の上場企業はなぜずっと割安なままなのか?三菱鉛筆(7976)を例に考える

2022年11月24日公開
ポール・サイ
facebook-share
x-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事
1

 前々回の連載では、「なぜ、日本の会社はコーポレートガバナンスが効いていないのか」についてお話しました。株式市場の資本配分の機能が、日本は米国よりも働いていないのです。

[参考記事]
●なぜ日本企業は株価を気にせず、イノベーションも起きないのか? 私が日本株ではなく世界株に投資する理由とは?

 今回はそういった具体例を紹介したいと思います。株価が割安に放置され、買収しようと思えば、実質、無料で買収できてしまうような日本の上場企業を紹介します。

実質、無料で買収できてしまうような日本の上場企業とは……三菱鉛筆!

 その日本企業とは三菱鉛筆(7976)です。

 同社の財務諸表、開示情報のみを使って簡単に分析したいと思います。私は同社の経営陣とは話をしていません。

 三菱鉛筆は「uni(ユニ)」というブランドで筆記具のビジネスを展開しています。売上げ全体の96%が筆記具及び筆記具周辺商品事業となっています。

 そして、海外売上げが売上げ全体の約50%を占めており、グローバルな企業と言えます。

 三菱鉛筆は優れた商品を多数持っています。たとえば、「ジェットストリーム(JETSTREAM)」という油性ボールペンです。私も持っていまして、確かに他のペンより描きやすいです。なめらかに紙の上を滑りながら文章を綴れます。

 三菱鉛筆の直近、2022年12月期 第3四半期のバランスシートを見てみましょう。

 現金を476億円、持っています。有価証券は146億円、持っています。投資有価証券の含み益は49億円ほどあります。流動資産の856億円から流動負債の174億円を引くと、運転資本は682億円もあります。

 そんな三菱鉛筆の時価総額は780億円(※)ほどです。

(※自己株式を除いた時価総額)

 理論上、780億円、または少しプレミアムをつけて、たとえば、900億円ぐらいで、三菱鉛筆を買収できます。

 ウォーレン・バフェットの恩師、ベンジャミン・グレアムはデビッド・ドッドとの共著の中で、保守的に見た会社の清算価値を運転資本の額としていました。先ほど仮定した三菱鉛筆の買収価格は900億円であり、これは同社の運転資本682億円を218億円しか上回っていません。

三菱鉛筆の事業価値はわずか200億円ほどとしか市場から見られていない。経常利益に対して低すぎる

 三菱鉛筆のEV(エンタープライズバリュー、事業価値)は200億円ほどです。

 EVは株式時価総額に純有利子負債を足して算出します。もう少し細かく書くと以下のような算式になります。

 EV=株式時価総額+短期借入金+長期借入金-現金-投資有価証券

 上記算式のイメージは以下のようなことになります。

 その会社をきれいに丸ごと手に入れることを考えると、ざっくり株式時価総額分の資金だけがあれば良さそうに思えますが、その会社が抱えている借入金はいずれ返さなくてはいけませんから、借入金の金額をまず足すのです。ただ、その会社が持っている現金などは借入金の返済に充当してもいいですから、今度はその分を引きます。

 このようにして算出した三菱鉛筆のEVは200億円ほどしかないというわけです。市場が見ている同社の事業価値はこれしかないのです。これは三菱鉛筆の前期経常利益の2.4倍ほどでしかありません。EVは通常、経常利益の7~8倍ぐらいはあるものなのにです。

 これは同社の営業キャッシュフローの2年ちょっとの分だけです。設備投資は年間40億円ほどで、フリーキャッシュフローは40億円ぐらいです。EVはフリーキャッシュフローの5倍ぐらいということになります。

 いろいろな数字を提示しましたが、これらは何を意味しているのでしょうか?

※メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」募集中! 米国株&世界の株分析毎週届き、珠玉のポートフォリオの提示も! 登録から10日以内の解約無料。


一番売れてる月刊マネー誌『ダイヤモンド・ザイ』の“決算入門講座”が開講!詳しくはこちら!
ダイヤモンド・ザイのウェブ会員登録はコチラから 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
moomoo証券は「米国株」投資におすすめの証券会社! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
moomoo証券は「米国株」投資におすすめの証券会社! マネックス証券の公式サイトはこちら 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

株主優待
人気株500激辛診断
最新理論株価

11月号9月20日発売
定価990円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[株主優待/人気株500激辛診断]
◎巻頭特集
優待の達人へのアンケートでランキング!
目的別株主優待カタログ88
●桐谷さんは優待新設ラッシュをどうみる?&
実際に買った優待新設株35銘柄

●2大優待賢人ようこりん&桐谷さんが語る
暮らしも投資もトクする株主優待の魅力」
●ようこりんが大盤振る舞い!
株主優待BIGプレゼント
<家計応援優待>食品/日用品/買い物
●<プチ贅沢優待>グルメ/レジャー・エンタメ/リッチ雑貨

◎第1特集
買っていい高配当株は98銘柄!
<2025年秋>
人気の株500+Jリート14激辛診断
●儲かる株の見つけ方[1]旬の3大テーマ
業績の初速好調で上ブレ期待/株価出遅れで上昇余地大/値上げが順調などインフレに強い
●儲かる株の見つけ方[2]5大ランキング
第1四半期の進捗率が高い/アナリストが強気/配当利回りが高い/初心者必見の少額で買える/理論株価より割安
●2025年秋のイチオシ株
10万円株/高配当株/株主優待株/Jリート
●気になる人気株
大型株393/新興株86/Jリート10

◎第2特集
関税の影響は?AIってどこまで浸透?
人気の米国株150激辛診断[2025年10-12月]

●米国在住プロのリアルレポート
●GAFAM+αの8銘柄を定点観測

●買いの注目優良株&高配当株
●人気の124銘柄の買い売り診断
ナスダック49/ニューヨーク証券取引所
●株価10倍を狙う!米国IPO株

◎第3特集
大幅上昇を狙う!
未来を変える革新的な企業を買う投資信託

●テーマ型投信に投資するメリットと注意点
●最新テクノロジーはすべての土台!半導体/AI

●次世代を担う最有力テーマ!宇宙/ロボット
●いま勢いのあるテーマに乗る!暗号資産/エンタメ/サイバーセキュリティ

【別冊付録】
増益予想で割安な株は1501銘柄
上場全3889社の最新理論株価

◎連載も充実
​●読者参加型企画・1カ月で上がる株を当てろ!
「エア・ウォーターが1番!任天堂は利益確定売りで失速」
●ZAiのザイゼンがチャレンジ!目指せ!お金名人Vol.14
「後払い決済のトラブルに注意」
●17億円トレーダー・ジュンのFX成り上がり戦略Vol.09
「大相場を生む『要人発言』」
●おカネの本音!VOL.39 小川コータさん
「マイクロソフトにフリック入力を売却した発明家の稼ぐ思考法」
●株入門マンガ恋する株式相場!VOL.107
「添い遂げる!? 生成AIと米国企業」
●マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
「大幅値上げは不可避!日本の水インフラは深刻な危機」
●人気毎月分配型100本の「分配金」データ!
「株価上昇や円安で利回り10%超が16本と急増!」


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報