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なぜ日本企業は株価を気にせず、イノベーションも起きないのか?私が日本株ではなく世界株に投資する理由とは?

2022年11月10日公開(2022年11月10日更新)
ポール・サイ
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株は資本主義の基礎であり、資本配分のメカニズムに組み込まれている

 株は資本主義の基礎です。

 資本=株の場合がほとんどです。そして、資本配分のメカニズム、その1つは株式市場と株価にあります。資本は株価が高いところに集まってくるということです。

 株価が高いと、会社が新規に株を発行することによって、資金が手に入ります。そして、その資金をバックにお金を借りられて、さらに大きなお金を手に入れられます。

 会社を拡大させる資金源は、内部留保、銀行などからの借り入れ、新株発行しかありません。株は3本の矢の1本であり、資本主義の中で重要な役割を果たしています。

 私たち投資家は株価を気にしています。経営陣に会社をうまく経営していってもらうことによって、株価を上げてもらっています。

経営者が株価を高くしようとする5つのインセンティブとは?

 経営者が株価を高くしようとするインセンティブはいくつかあります。

 ・株価が高いと、資金調達がしやすくなります。
 ・株価が低いと、会社が買収され、現経営陣はクビになるかもしれません。
 ・株価が高いと、会社の信用力が増します。それは資金調達できるからです。
 ・株価が高くなれば、役員報酬などが株と連動している場合、儲かります。
 ・経営者自身が株を持っているなら、株が上がれば、儲かります。

 しかし、日本はサラリーマン経営者が多いですから、多くの日本の会社の問題として、大胆な投資をしないということがあります。内部留保と仲の良い銀行からの借り入れだけで資金ニーズは満たされます。これで会社を回していくことはできますが、大胆なことはできません。

 日本のサラリーマン経営者は通常、自社の株をそれほど持っていません。役員報酬も株に連動した部分はあまりないです。そうなると、株価は過度に低くなければいいことになります。

 また、往々にして、そういった会社は買収防衛策をしっかり導入していますので、まずまず普通に経営していれば、どこかに買収されて、経営陣がクビになるリスクもほとんどないのです。

日本の経営者は株価をそれほどは気にしていないことが多い

 私は長年、日本株を見てきましたが、先ほど挙げた経営者が株価を気にする5つの理由、そのうち4つぐらいは多くの日本の経営者は気にしていないように思えます。多くの日本の経営者は最低限または見栄えがよくなる程度に株主の方を向き、IRに取り組みますが、それを重視まではしていないと思います。

 そういう会社の株を買うと、長期的に株価が上がらない確率が高くなります。

 もしも、世界に競争がなければ、ノロノロ経営していても大丈夫ですが、現実はそうではありません。なので、世界と競争している会社であれば、ある程度、先ほど挙げた、株価を気にする5つのインセンティブが働きます。

 しかし、他社との競争の渦中にあったとしても、ノロノロした経営をしていて、株価を低迷させてもいいと思っている会社もたくさんあります。そういう会社は、海外の競合他社よりも前述したインセンティブが低いのです。たとえば、強力な買収防衛策があったり、株式の持ち合いに守られていたりするのです。そのためにイノベーションも起こりにくくなっています。

テスラの時価総額はトヨタの約3倍。このことは会社経営にどう影響を及ぼす?

 たとえば、テスラは足元で株価が大きく下がったにもかかわらず、時価総額は約6175億ドル(約90.4兆円)あります。

テスラ公式サイトテスラ公式サイト

 一方、トヨタ自動車の時価総額は約2240億ドル(約32.8兆円)で、テスラの3分の1強しかありません。

トヨタ自動車公式サイトトヨタ自動車公式サイト

 このことは会社経営にどう影響を及ぼすでしょうか?

 テスラは時価総額の10%の株を新規発行すると、約600億ドルの資金が手に入ります。トヨタ自動車が同様に10%の株を新規発行すると、約200億ドルしか手に入れられません。テスラはトヨタの約3倍の資金で設備投資、研究などができるのです。

 テスラが失敗しても、イーロン・マスクはクビにならないかもしれませんが、彼はテスラ株を担保に借り入れを行ない、投資しているので、株価を気にしています。そして、イーロン・マスクはテスラ株をたくさん持っていますから、なおさら株価を気にします。

 日本の例で言うと、孫さんはソフトバンクグループ株をたくさん持っているから、株価を気にするということです。

 日本電産の永守さんは、株価が買収戦略・設備投資戦略にとても重要であることを認識していました。すなわち、高い株価を利用して会社を成長させれば、その成長によって株価がまた高くなるというフィードバックループが起こることをよくわかっていたのです。

 だから、永守さんは株価を非常に気にしており、いつもIRにとても積極的でした。四半期決算のたびにすごいスケジュールで世界中を回って、株主と会っていました。孫さんも同じでした。

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