前回の連載では、会社と株主の間にある利益相反問題について書きました。今回は、投資家のあなたと金融機関(とその営業マン)の間にある利益相反問題についてお話したいと思います。
[参考記事]
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金融という分野は一般人と専門家の間にある情報格差が大きい。さらにプロのことを信頼しづらい世界でもある
一般の人が投資をしようとするとき、金融の専門家と比べると、どうしても情報や知識という点で負けてしまいます。ただ、一般人と専門家の間で知識の格差が大きいことは一般的によくあることとも言えます。
また、誰が専門家であり、誰が専門家ではないことを見極めるのも難しいことです。そして、誰がいい投資家なのかを見分けることは、それ自体が1つの深い学問・職業になるレベルのスキルになります。
一般的に言って、情報格差があってもプロを信頼しやすい分野とプロを信頼しづらい分野があります。金融という分野は、一般人と専門家の間に情報格差があり、さらにプロを信頼しづらい分野の1つだと思います。
医療の分野なら、情報格差があったとしてもプロは頼れる存在
ここで、一般人と専門家の間に情報格差があったとしても、プロを頼れる例を挙げてみましょう。それは医療の分野です。
病気になって医者にかかると、患者より医者の方が医療に関する知識を持っていますから、患者は医者の言うとおりにします。患者は医者を信頼します。
また、医者は患者を健康にすることに対して最大限の努力をすると誓っていますので、患者は医者を信じます。
そして、患者が死ぬと、医者は精神的に申し訳ないと感じるのと、責任追及される可能性もあるので、これもある程度、インセンティブとして働きます。
けれど、能力のない医者、悪い医者もいたりしますから、自分がある程度は医療の知識を持っていて、ある程度は医者と議論ができないと、一番いい治療は受けられないかもしれません。
自分で勉強せず、金融機関の営業マンの話を鵜呑みにするのは危険
今度は一般人と専門家の間に情報格差がない例を挙げてみます。それはスーパーでの買い物です。
品物がいいかどうか、その値段は妥当かどうか、消費者はだいたいのところはわかります。スーパーの店員にさほどアドバイスしてもらわなくても問題ないのです。私はスーパーでの買い物で騙されたと感じたことはあまりありません。
一方、金融商品は顧客と金融機関の情報格差が大きい場合が多いです。
お金は人生でとても重要なものなのに、大学の専攻が金融関係でない限り、学校ではほとんど経済・金融・投資について教えてはくれません。
さらに、金融は不確定要素が多く、学校の先生が金融について教えてくれるのは、それを分析するツール止まりです。答えは自分で見つけなければいけません。
そして、自分で考えず、誰かのお奨めを鵜呑みにして投資して損しても、責任を取るのは自分だけです。言い換えると、投資は他の仕事と同じく、労力を注がなければ、儲かるわけがないのです。
自分で勉強せず、営業マンに頼りすぎるのは危険です。
金融商品を販売する人たちにはさまざまな人がいますが、インセンティブが短期的なものとなっている場合が多いです。金融商品を売って、手数料をもらったら終わりです。
しかし、投資はほとんど長期の視点でないと儲からないので、そこはズレてしまいます。金融マンはセールストークがうまいので、自分が知識を持っていなければ、金融マンからお奨めされている金融商品が本当に良いものかどうか、見分けがつきません。
こういった情報の格差はどうやって埋めていけばいいのでしょうか?
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