「勝者のゲーム」と資産運用入門

-日本株のトップアナリストによる投資講座-資産運用も大事だが、収入アップはもっと大事!安易なFIREではなく、キャリアと資産の自立を考えよ太田忠の勝者のポートフォリオ 第67回

2023年1月18日公開(2023年1月17日更新)
太田 忠
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ファーストリテイリングが年収アップの号砲!海外との賃金格差解消なるか?

 ファーストリテイリングが年収を最大4割上げへ―。先週大きく報じられたニュースなので、もう皆さんご存知だろう。「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングが3月から国内従業員の年収を最大4割引き上げると発表。パートやアルバイトの時給の2割引き上げは既に実施しており、いよいよ国内の約8400人の社員を対象に年収を引き上げる。同社はグローバル展開をしているが、欧米を中心に海外従業員のほうが実は年収が高い。国内の従業員の平均年収は959万円と日本企業としては高水準だが(上場企業3213社の2021年度の平均年間給与は605万円)、外資系企業と比べると見劣りは否めない。国内の賃金を大幅に見直すことで、グローバルな水準に近づける狙いだ。

 同様の動きはアステラス製薬、日立製作所、富士通などのグローバル企業を中心に広がっている。日本企業の賃金は国際的に低く、民間調査によるとマネジャー級の年収は日本は9万6000ドルと米国の22万ドルに比べて約半分以下の水準、中国と比較しても低いという現実がある。

「仕事から解放されたいから、FIREしたい!」は最も危険な考え方

 日頃、私は資産運用に関するコラムを書いているが、今回はちょっと違う視点で意見を述べてみたい。それは、「資産運用も大事だが、収入アップはもっと大事」という点である。資産運用について正しい認識と洞察力がある人ほど、この考えをきちんと持っているように思う。一方、その正反対が「FIRE(Financial Independence,Retire Early)を達成して、仕事から解放されたい!」と考える人たちだ。もっと正確に言えば「仕事から解放されたいから、FIREしたい!」だ。資産運用を一攫千金のように勘違いし、十分な資産形成もできていないのに早々に仕事を辞めて資産運用に専念する。大した資産運用スキルもないので、その結果、早々に無職から再び職探しに走る人たちだ。

 仮に300万円や500万円、1000万円程度で資産運用したとしても、資産はなかなか思うように増えないのが普通だ。運用資産に毎月、毎年新たなお金を継ぎ足し、継ぎ足ししながら資産形成することが大事だ。そのためには本業で稼ぐ収入を増やすことが大事になってくる。結婚して家族ができたりすればどんどんお金がかかる。その分、資産運用に回せるお金が著しく減ってしまえば資産形成のスピードは鈍化する。なので、一にも二にも収入アップできるような働きぶりの充実やスキルアップが重要となってくる。

バブル崩壊直後に社会人をスタート。無我夢中で働き資産形成の礎を築く

 私の場合、1988年に大卒で第一證券に入社した。初任給は14万円からのスタートだったが、入社早々にバブル崩壊に直面してボーナスが消滅、残業代も頭打ちルールがあり、おまけに年齢制限で独身寮からも追い出されたため、入社5年目でも年収300万円、手取りは15万円というギリギリの生活だった。証券会社に努めているのに資産形成どころではなかった。

 しかし、当時駆け出しアナリストだった私は高収入の外資系アナリストを目指して日々、がむしゃらに無我夢中で働いた。この努力が道を拓いて社会人6年半目で外資系投資顧問会社へ転職、その後外資系証券会社へとキャリアアップした。年収はすぐに1000万円を突破し、トップアナリストになったことで毎年倍々以上に増えていった。外資系金融で働くトップ・プロフェッショナルは年収1億円を超える人がたくさんいるが、私も36歳でマネジング・ディレクターとなりその仲間入りを果たした。年収300万円だった私の内心は「やったね、バンザーイ!」である。資産形成もものすごいスピードになるのは容易におわかりになると思う。だが、私のサラリーマン時代よりも、今の時代の方がキャリアアップを図って年収を上げるチャンスが業界の多岐にわたって見られるので、皆さんには格段にチャンスが増えていると思う。

会社の肩書がなくても、個人で社会に必要とされるスキルがあるか?

 さて、ここからさらに話を進める。それは、「今の肩書がなくなっても、あなたは社会で認められますか?」という点である。

 最近、私にちょくちょく寄せられる相談が「会社を辞めさせられたけど、なかなか再就職先が見つからず、どうしていいかわからない…」というものだ。さすがに私と同年代、すなわちもう50代も後半ならば、よっぽどのスキルがない限りまともな就職先など見つからない。50代後半なら致し方ないと思うが、30代後半や40代くらいでも、条件の良い就職先を見つけるのは簡単ではないと聞く。要するに「就社」だった人はその会社の中だけで生かされていただけで、一般社会で通用するスキルがないから「就職」できない。社畜の人は通用しないということだ。

 成功体験した私だが、40代半ばでリーマンショックに遭遇して多くの同僚たちとともに外資系企業からリストラで追い出された。要するにクビだ。「いくら会社で成果を上げて高給取りになっても、会社都合の雇われの身はもうこりごりだ」との思いで独立したが、日本社会はそういう立場の人にやたらに冷淡である。すなわち、会社の肩書がなくなると個人ベースでは相手にしてくれないのだ。独立してから13年。今でこそ、仕事が増えすぎて嬉しい悲鳴だが、やはり会社組織のような後ろ盾がなくても、個人ベースで社会に必要とされるスキルがあるかどうか、これに尽きる。会社勤めの人は日々、来たるべき日のために(受動的に辞めさせられる、能動的に辞めるを問わず)スキルを磨いておく必要がある。

進まない「定年延長」。真の意味でキャリア自立&資産形成が求められる

 「高年齢者雇用安定法」をご存知だろうか? 定年が70歳未満の企業で65歳以上70歳未満の社員への「就業確保措置」が努力義務となった。要するに65歳以上も雇えということだ。しかし経団連加盟の大手企業でさえ対応済みの企業は約2割強しかない。65歳以上の誰を対象にするかの基準作りの難しさや「努力を義務付ける」規定の不鮮明さから大企業ほど対応が進まず、労働力人口減少への備えができていない、というのがウワベの議論だが、企業からすれば雇いたくないというのが本音だろう。それに雇われる立場においても、65歳以上で超安月給で雇われても楽しいだろうか? 若いうちから真剣に考えておかねばならない問題だと思う。

 さて、私がDFR(ダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ)で投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」のパフォーマンスは年明けも堅調に推移している。特に金融株が目を見張る大活躍をしており貢献大だ。おかげさまで昨秋から会員数が急増しており、日々の「Q&A」コーナーでも実に活発な意見交換をさせていただいている。

会員が自由に閲覧できる資産運用の特別講義動画を制作中。乞うご期待!

 現在、多くの会員からの要望に応えてスペシャル講義の動画制作も始めている。資産運用のための実践の場とするべく、『ポートフォリオ理論』や『ポートフォリオ運用の実践』といったコンテンツを中心に据える予定だ。重要な『リスク管理』についても多角的な戦略を講義していく。これらの動画は会員であれば、会員ページにおいていつでも自由に視聴していただける形だ。また、恒例のWebセミナーも2月1日水曜20時から開催予定である。10日間の無料お試し期間があるので大いに活用して欲しい。今年こそ資産運用で大きく飛躍されたい方々の多数のご参加をお待ちしている。

●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。

※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。

 

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