魅力的な株式投資だが、高値づかみで資産をなくす悲劇を多く見てきた
先週の今年最初のコラムのテーマは「2023年のマーケット展望と投資戦略」であったが、今回は皆さんにとってもっと本質的なテーマを取り上げてみようと思う。今回の話題はズバリ「個人投資家が株式投資で成功するために大切なこと」である。
まず、認識していただきたいのが資産運用の大切さだ。5年、10年、20年、30年…と長期になればなるほど、経済は成長し、企業の業績も成長する傾向にある。それに対して、現金の価値は長期になればなるほど目減りしていくのが一般的だ。現金100万円は100万円としての価値を次第に失っていく。なので、皆さん、ご自身のお金を単に銀行に預けていても意味がない。銀行はあなたのお金を使って商売するが、低金利の世の中であなたのお金は増えないのだ。今や普通預金の金利は年率0.001%である。1000万円預けても年間の利息は100円と雀の涙。1億円でも1000円だ。10億円で1万円…。これではお金持ちだって資産は増えない。全くダメなことがよくわかる。
とは言っても、魅力的な株式投資の世界は山あり谷ありで、高値づかみは資産を無くす。株式ブームに乗っかって退職金を全部つぎ込み、資産を半分にしてしまった悲劇を数多く見てきた。「資産の減少=寿命の短縮」という惨めな人たちを。こういうのも、もちろんダメである。振り返ってみると、1990年代の株・土地バブルの崩壊、インターネットバブルの崩壊、リーマンショック、コロナショック…といろいろあったが、高値づかみによる資産的・精神的打撃は計り知れない。
株式投資を成功するには「積立型投資」と「単発型投資」を使い分ける
そこで株式運用をするにあたって2つの軸をきちんと使い分けていただきたいと思う。1つは積立型投資、そしてもうひとつが単発型投資である。
積立型投資は毎月一定額を積み立てていく投資手法、すなわち時間的分散投資である。相場の高いところでも買うが、安いところでも分け隔てなく投資することができる。「5年で成果がでますか?」と聞かれれば難しいかもしれないが、長期になればなるほど過去に購入した簿価は下がっていく形になる。もしあなたが30代であるとすれば、少なくともあと30年は投資することができる。
ところが、こうした点をよく分かっていない個人投資家がたくさんいる。私がよく相談を受けるのは次のような「あるある」投資家の悩みである。
「相場が急落しているから、積立投資はもうやめたい」 「NISAやってるけど利益がマイナス!…後悔の日々」 「マーケットってこんなに下がるんだ…積み立てしなきゃよかった」
単発の個別銘柄や投資信託への投資ならその悩み(含み損)はわかる。しかし、これって変じゃね? さあ、ここで皆さんに質問です。この「あるある」投資家に皆さんがアドバイスするとすれば、次の4つ選択肢のうちどれを選ばれるだろうか?
積立型投資は急落局面でも買い続けることが、将来の利益の源泉になる
① もう積み立てはおやめなさい ② 金額を減らすか、お休みしなさい
③ 解約して安全資産に振り向けよう
④ 続けた方がいいんじゃないの?
もちろん答えは④だ。先ほど述べたようにインターネットバブルの崩壊やリーマンショックのような急落局面でもきちっと買い続けることが、将来の利益の源泉になるからだ。今から振り返れば、インターネットバブルの崩壊は「○○○○」だった、リーマンショックは「○○○○」だった。○○○○に当てはまる言葉はもちろん「チャンス」である。だから、株価が下がっている時に恐怖心から積み立てをやめてしまって、イケイケ相場で積み立てるというのは一番損なやり方である。わかりやすい話をすれば、あなたは同一商品が高値で売られている時よりも、バーゲンセールの時に買うでしょ? それと同じ理屈である。相場が下がれば下がるほど「やったー、チャンス!」「シメシメ…」と思わなきゃいけないのだ。なぜなら同じ投資金額でより多くの数量を買うことができるからである。誰でも簡単にできる投資手法が積立型投資である。
単発型投資は投資タイミングが極めて重要。リスク管理も不可欠
そして、それに華を添える形で単発型投資がある。要するに個別で株や投資信託を、自分が決めたタイミングで買うというやり方だ。単発型投資の魅力(特に個別銘柄)は何と言っても、株価が5倍、10倍になる可能性を秘めていることだ。時間分散型投資でインデックスを買ってもテンバガーになることは期待薄である。
しかし、単発型投資における投資スタンスは積立型投資とは真逆である。すなわち、単発型投資においては投資タイミングが非常に重要で、いかに目先の下落を回避するかが大きなポイントとなる。なぜなら下落に巻き込まれると即、資産減少につながるからだ。一方の積立型投資は時間的分散投資の効果を享受できるため、いかに安いところで買えるかが重要であり、それが将来の利益の源泉、すなわち資産増大につながる。
私が普段よく口にする「リスク管理が重要だ」についても、皆さんはもうはっきりと理解できると思う。すなわち、単発型投資ではリスク管理が必要であり、積立型投資ではリスク管理は不要ということである。
2022年は、積立型分散投資には有利な1年だったが、リスク管理なしの単発型投資には悪夢の1年
ところで、昨年の株式相場を振り返って欲しい。積立型分散投資にとっては非常に有利な1年、一方で単発型投資でリスク管理をしていない投資家には悪夢の1年だったと思う。特にグロース銘柄への投資は壊滅的であり、含み損がマイナス30%、マイナス50%、マイナス70%という銘柄が続出していると思う。いやー、怖いですねぇ、恐ろしいですねぇ。あなたは大丈夫だった?
単発型投資において逆指値の活用は非常に重要だ。「これ以上は損失を抱えない」という逆指値注文を必ず活用すること。株価下落による損失が軽微に食い止められ、実現損を伴いながらもキャッシュが手元に戻ってくる。小さな損は将来の大きな利益になる。ポジポジ病で、いつもフルポジ(フルポジション、キャッシュなし)の投資家は典型的なダメダメ投資家である。さらにその上をいくのが信用取引、証拠金取引である。身の丈を越える借金までしてヤラれたら、どうするのだろうか? 私は株式投資で大失敗して消息不明となった投資家を数多く見てきたので心が痛い。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。
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