「勝者のゲーム」と資産運用入門

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から約1年。地政学リスクによる有事や「○○ショック」など危機的事態が株式市場に与えるポイントを解説!太田忠の勝者のポートフォリオ 第73回

2023年3月1日公開
太田 忠
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ロシアの軍事侵攻から約1年。過去の有事別のNYダウの下落率を検証

 2022年2月24日の未明にロシアがウクライナに軍事侵攻を開始―。

 早いもので、あれからちょうど1年が経過した。ウクライナ東部の親ロシア派が支配する地域で「ロシア系住民への虐殺が行われている」という自作自演でロシアが一方的に侵攻を仕掛け、自らの勢力圏を広げるために武力を行使したのがその発端だが、ロシアの侵攻と同時に世界のマーケットが大きく揺さぶられた。ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟していないため欧米諸国からの目立った援助もなく、ロシアによる激しい攻撃にウクライナが孤立無援で徹底抗戦するというのが1年前の状況だった。いまだに停戦がなされていないのは非常に残念である。国際法違反のとんでもない行動であり厳しく非難されるべきであるが、ロシアのプーチン大統領は戦争をやめようとしない。

 ウクライナ侵攻から1年が経過したため、株式市場における地政学リスクの問題について再考してみたい。投資家として有事をどう捉えるか、というテーマである。それを知るためには、過去の有事の際の下落率、そして有事が起こってから安値を付けた日数を調べることが重要だ。過去の有事を振り返ってみて、最も巻き込まれているのが米国市場のためNYダウの動きで点検してみよう。

地政学リスクによる有事が株式市場に与えるポイントを整理

 まず思い出されるのが2001年に起きた9.11同時多発テロで、9日後に-14.3%を記録した。また1990年に起きたイラクによるクウェート侵攻では16日後に-14.3%となり、これら2つの有事の下落率が突出していた。2003年のイラク戦争では-2.5%、1991年の湾岸戦争では-0.0%、1980年のイラン・イラク戦争では-4.3%、さらに大きく遡って1941年の真珠湾攻撃では-8.8%という記録がある。では「第二次世界大戦はどうだったのか?」についてはマーケットが閉鎖されていたので残念ながらデータがない。言えることは、有事での株価下落はいずれも一時的であり、有事が収まると株式市場は戻るケースがほとんどだ。したがって株式市場には古くから「開戦は買い」という経験則がある。

株式市場における地政学リスクのポイントを整理すると、以下のようになる。

① 有事発生から底値までの期間は短い
  
・15日程度で底値を付ける習性がある
     ・株価低迷は長期化しない                                                                
② 株価の下落も限定的
 
 ・株価の下落率は1ケタ、大きくても15%程度                                       
③ 株価の回復も早い
  
・ほぼ3カ月以内に元の水準を回復することが多い                           

⇒【結論】有事において「開戦は買い」(相場格言)が経験則

有事以外の「○○ショック」が起きた場合の株式市場に与えるポイント

 一方、有事とは異なる「○○ショック」が起きた場合の株式市場に与える影響は全く異なる様相となる。日本市場とも関係の深い2000年以降の「○○ショック」を日経平均で振り返ってみると、ITショックでは下落期間は226日間で下落率は-43.3%、リーマンショックでは下落期間は185日で下落率は-51.3%、チャイナショックでは155日間で-28.3%、コロナショックは25日間で-30.6%となっている。コロナショックを除いて立ち直りまで非常に時間がかかっているのがわかる。

有事以外の「○○ショック」が起きた場合のポイントは、次のようになる。

① イベント発生から底値までの期間は長い
 
・底値を付けるまで6ヶ月~1年かかることも
    ・株価低迷は長期化する                                                                    
② 株価の下落は大きい
 
 ・30%程度の下落はしばしば、50%を超えることも                               
③ 株価の回復は遅い
  
・数年かかって元の水準を回復することが多い             

⇒【結論】経済や企業業績に深刻な問題を引き起こす。「落ちてくるナイフはつかむな」(相場格言)が経験則

ウクライナ侵攻時のマーケットはどう動いた? 今後最も注意すべき地政学リスクは、中国による台湾侵攻だろう

 ところで、ウクライナ侵攻は結果的にどうだったのか? 日経平均は侵攻から営業日ベースで10日後の2022年3月9日に24717円を付けて反発し、下落率は-7%となった。「開戦は買い」の一時的な下落で留まったとは言うものの、エネルギー価格の高騰が大きく影響した世界的インフレの発生で株式市場は苦しめられることになったため、「○○ショック」の要素も多分に含んでいると言うことができる。

 ロシアのウクライナ侵攻の狙いは「力づくによる現状変更」である。これがまかり通ってしまえば、北方領土問題を抱える日本でも今後ロシアの脅威にさらされる可能性がある。また、近い将来懸念されている中国による台湾侵攻だってそうだ。

 中国による台湾侵攻はかなり現実的だ。習近平氏は昨年秋に3期目の総書記に就任し、台湾併合は最も重要な政治目標としている。考慮すべきポイントは、通常の地政学リスクであれば、短期間で織り込んで短期間で株価は回復するが、「台湾侵攻ショック」となれば世界経済に大きな影響を与え、株価下落大、株価下落は長期にわたる可能性があることだ。

 台湾有事を巡っては日米の民間シンクタンクがその影響度をシミュレーションしている。中国は制圧に失敗するものの、日本の自衛隊や米・台湾・中国軍に甚大な被害が出るとの結果が出ており、経済的な影響や株式市場における混乱はかなり大きなものとなる可能性がある。中国はまだ軍事力増強の段階にあるため2023年に有事が起こる可能性はないと考えられるが、早ければ2024年、可能性として高いのは2025年から2026年にかけてだろう。マーケット参加者の我々にとって、常に頭の片隅に置いておく必要がある。

リスク管理を学ぶ特別動画を4本公開、3月8日にはWebセミナーも開催

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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。

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