「勝者のゲーム」と資産運用入門

「GPIFの運用益は4四半期連続の赤字」のニュースに踊らされるな!運用力は優秀で年金制度も早々には破綻しない。が、大切なのは「自分年金」を確立すること!太田忠の勝者のポートフォリオ 第71回

2023年2月15日公開(2023年2月14日更新)
太田 忠
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事
1

「GPIFの運用益は4四半期連続の赤字」のニュースに踊らされるな

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用益は4四半期連続の赤字に―。

 日本の公的年金を運用するGPIFの2022年10~12月期の運用実績は1兆8530億円の赤字となり、2022年1~3月期から4四半期連続で赤字を記録した。4四半期連続の赤字は今から約20年前に起きた「エンロン・ショック」以来である。世界的な利上げに伴う金利上昇で債券価格が下落したことや、昨年秋からの急速な円高で円換算ベースの外国資産額が目減りしたことなどが要因である。

 GPIFは言うまでもなく世界最大の年金運用機関であり、現在190兆円ものお金を運用している。国民が払った国民年金と厚生年金の保険料を一括運用しており、将来の給付に備えて「国内株式、海外株式、国内債券、海外債券」をそれぞれ25%の割合で運用している。

 「GPIFの運用がマイナス」という報道がなされると、「年金支給額が減らされる!」「何でマイナスの運用なんかしているんだ!」「責任者出てこい!」のような世論が起こるが、それはあまりにも短絡的というものだ。これに同調して不満をぶつける人たちも多く見受けられる。意外と正しく理解されていないようなので、今回は「日本の年金財政とGPIFについて正しく知ろう!」をテーマに取り上げる。

少子高齢化が進む日本において、今の年金制度が適していない理由とは?

 まずは日本の年金財政についてである。日本の年金は「日本国内に居住する20歳以上60歳未満の人全員」に加入義務がある皆年金制度であり、そのスタートは1961年に遡る。勤労者が毎月支払っている厚生年金・国民年金の保険料は将来の自分への積立ではなく「世代間扶養」である。すなわち、現役世代が納める保険料を高齢者の年金支給に充てる形だ。制度ができた当時は、日本が人口的にも経済的にも右肩上がりだったのでこの設計で良かったが、今問題となっているのは少子高齢化の進展で「世代間扶養」が日本の年金制度に全くそぐわない形になっていることだ。

 現在、高齢者に給付している年金総額とその財源をみると、2020年度の年金給付額は56兆円であり、日本の人口の約3人に1人の割合に相当する4051万人が年金を受け取っている。そのための財源の約7割(39兆円)は現役世代からの保険料収入で賄っており、2割強(13兆円)は税金(国庫負担)が投入されている。だが、それでもまだ足りない。この不足分の4兆円をカバーしているのがGPIFの運用する年金積立金だ。

 今の時代はとにかく年金給付のための支出が圧倒的に大きく、現役世代から徴収する保険料を積立金に回すことが全くできずそのまま高齢者への支払いに充てられている。一方、団塊世代が働き盛りだった時代には、入ってくる保険料のほうが給付する年金額よりも多く、毎年のように積立金が増えていた。これが今GPIFが運用している年金積立金のタネ銭になっているというわけである。

GPIFの累積の運用益は98兆円。運用力は世界の年金基金と比べても優秀

 冒頭で「GPIFの運用益は4四半期連続の赤字」と記したが、GPIFの運用力はどうなのだろうか? まず2022年の1年間で見るとマイナス4.8%である。一方、世界最大級の政府系ファンドのノルウェー政府年金基金はマイナス14.1%、オランダ大手ABPはマイナス17.6%と惨憺たる成績になっている。株式と債券の同時安で苦戦したが、特に債券の値下がりが大きな痛手となった。厳しい運用状況が続いているものの、GPIFの運用成績は年金財政に与える悪影響は限定的であり、運用を始めた2001年度から2022年12月末までの実質利回りは平均で年率3.38%、目標とする1.7%を大きく上回っている。累積の運用益は98兆円であり、これはかなりの好成績といえる。現在の運用資産額は190兆円となっている。

 この資産をどのように年金財政に回していくのか? 想定としては年間の年金給付額の1割を賄うという設定がなされている。すなわち、年間給付額が60兆円であれば6兆円を運用資産から充当する形だ。支出となる給付額をできるだけ抑えつつ、運用パフォーマンスを上げることが求められる。でないとGPIFの積立金をどんどん取り崩していかねばならないからである。現在の積立金190兆円をすべて年金給付に充てると3.3年分あるが、100年後でも1年分相当の積立金が残るように財政計画がなされている。なので、早々に日本の年金制度が破綻するようなことは起こらない。

※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。

 

国内外で6年連続アナリストランキング1位を獲得した、
トップアナリスト&ファンドマネジャーが
個人投資家だからこそ勝てる

「勝者のポートフォリオ」を提示する、
資産運用メルマガ&サロンが登場!

老後を不安なく過ごすための資産を自助努力で作らざるを得ない時代には資産運用の知識は不可欠。「勝者のポートフォリオ」は、投資の考え方とポートフォリオの提案を行なうメルマガ&会員サービス週1回程度のメルマガ配信+ポートフォリオ提案とQ&Aも。登録後10日間は無料!

太田忠の勝者のポートフォリオ

10日間無料 詳細はこちら※外部サイトに移動します


「勝者のゲーム」と資産運用入門 バックナンバー

»もっと見る

ザイアナリストの2人がやさしく、わかりやすく、徹底解説!ダイヤモンドZAiのオンライン講座「株の学校」
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2021年の最強クレジットカード(全8部門)を公開! 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

「株」全予測
人気株500激辛診断
優待年末年始

2月号12月20日発売
定価780円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[「株」全予測/人気株500激辛診断]
◎新春特別企画
2024年に儲けた株&損した株も大公開!
桐谷さんのゆく年くる年

2025年も全力優待ライフ
◎第1特集
2年目NISAの必勝法!
112人のプロに聞いた!
2025年「株」全予測&儲け方

●日経平均は5万円へ!日本株の高値・安値予測
●生成AIブームも半導体は苦戦!
上がる株・下がる株
●国内利上げで銀行・金融が有望!
上がる業種&テーマ
●中央銀行の買いが継続!金(ゴールド)
●トランプ政権下でも下落傾向!原油
●ドル円は年後半に140円台に!為替
●オルカンの次に買う1本も!投資信託

◎第2特集
買っていい10万円株は97銘柄!
<2025新春>人気の株500+
Jリート14激辛診断

●投資判断に異変アリ!
買いに躍進!》トヨタ自動車、ホンダ…など
強気に転換!》ソニーグループ…など
●儲かる株の見つけ方[1]旬の3大テーマ
通期で上ブレ期待/AI関連で恩恵他
●儲かる株の見つけ方[2]5大ランキング
PBRが低く改善に期待の株/アナリストが強気な株/配当利回りが高い株
●2025年新春のイチオシ株
10万円株/高配当株/株主優待株/Jリート
●気になる人気株
大型株/新興株/Jリート

【別冊付録】
増益割安株は1178銘柄
上場全3916社の最新理論株価

◎第3特集
トランプ政権下でどうなる!?
人気の米国株150診断
●S&P500指数をプロが大予測

●Big8を定点観測!GAFAM+αを分析!
●買いのオススメ株
トランプ株/高配当株
●人気の124銘柄を徹底診断
ナスダック/ニューヨーク証券取引所

◎第4特集
ザイクラブ拡大版!2024年はどうだった?
ザイ読者の悲喜こもごも&2025年の投資戦略
ザイ編集部員のプチ反省&自慢大会も!


◎連載も充実!

◆目指せ!お金名人
◆10倍株を探せ!IPO株研究所2024年10月編
◆おカネの本音!VOL.29兒玉遥さん
◆株入門マンガ恋する株式相場!
◆マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
◆人気毎月分配型100本の「分配金」速報データ!


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

【法人カード・オブ・ザ・イヤー2023】 クレジットカードの専門家が選んだ 2023年おすすめ「法人カード」を発表! 「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報