先週は強い景気指標で長期金利が上昇し株価下落。混沌とするマーケット
1月の米卸売物価指数(PPI)の結果を受けて、NYダウは431ドル安―。
先週木曜日に1月のPPIが発表された。総合が前年比+6.0%と予想の+5.4%を上回り、コアも+5.4%と予想の+4.9%を大きく上回る形となった。クリーブランド連銀のメスター総裁やセントルイス連銀のブラード総裁が「3月の利上げは0.50%の可能性を排除せず」との考えを相次いで示したこともあり、米国市場は下げ足を強めNYダウは431ドル安、ナスダック市場は214ポイント安となり、長期金利は一時3.92%まで上昇して昨年11月以来の高水準となった。長期金利の上昇で先週の米株式市場は続落した。2月の連邦公開市場委員会(FOMC)において米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が「インフレ沈静化のプロセスが始まった」と繰り返し述べたことが好感されたものの、再び黄色信号が灯ったと言える。
昨年の3月以降、FRBは前例のない勢いで利上げを継続しているにもかかわらず、このところ米国では非常に強い景気指数が多いとの印象を受ける。2月3日に発表された1月の雇用統計は+51.7万人と予想の+18.7万人を大きく上回って12月の+26万人のほぼ2倍もの伸びとなる一方、失業率は3.4%と53年ぶりの低水準を記録した。また、2月14日に発表された1月の米消費者物価指数(CPI)では総合が前年比+6.4%と予想の+6.2%を上回り、コアも+5.6%と予想の+5.5%を上回った。さらに2月15日に発表された12月の小売売上高が前月比+3.0%と予想の+1.9%を上回り、個人消費においても予想以上に強い数字となった。加えて冒頭で述べた2月16日発表の1月のPPIも強い結果になった。
会員の質問「強い景気指標は相場反落のきっかけになるのか?」に答える
「先日の雇用統計やCPIも予想以上に上振れし、PPIも強い数字になりました。私はインフレは高止まりして景気悪化が本格化し、リセッションに向かうと思っております。それに対して市場は楽観的で、いつ目が覚めて株価が下落に向かうのかと疑問に思っています。PPIの発表を含め、最近の強い景気指標は相場反落のきっかけになるのでしょうか? 太田先生の見解を聞かせて下さい」
私がDFRダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)で投資助言をしている「勝者のポートフォリオ」の会員の方からの質問である。2021年10月に開始したモデルポートフォリオ提示型の実践的資産運用サービスで、日々多岐にわたって多くの質問が寄せられる。やはりマーケット参加者である限り、こうしたマクロ経済が与えるマーケットへの影響は個人投資家でも気になるところだ。私の回答は以下の通りである。
「PPIの発表を含め、最近の強い景気指標は相場反落のきっかけになるのか?」
⇒ それはわかりません。この日の米国市場は下がりましたが、今後もさまざまな指標が毎月発表されますので、今回の件だけでは判断のしようがありません。
「私はインフレは高止まりして景気悪化が本格化し、リセッションに向かうと思っております」
⇒ 今は強い景気指標が出ていますが、私もその可能性はあると思います。
「それに対して市場は楽観的で、いつ目が覚めて株価が下落に向かうのかと疑問に思っております」
⇒ 毎週金曜日に発行しているメルマガ「マーケット動向&投資戦略」で以下のように申し上げております。『このところの株式市場は月替わり、週替わりでマーケット参加者の心理が揺れ動いている。すなわち、楽観論に傾いた時は「金利引き上げペースの鈍化→金融相場の先取りだ!」「景気や企業業績悪化→金融緩和でプラスだ!」「長期金利の低下→株式市場に追い風だ!」という理屈で上昇するが、悲観論に傾いた時は「金利はまだ上昇、当面利下げなし→金融相場は来ない!」「景気や企業業績が悪化→株は売られる!」「長期金利の低下→景気悪化で株式市場に逆風だ!」という真逆の解釈になる。楽観論と悲観論が交互に目まぐるしく入れ替わっている様相だ。まだしばらくは「楽観論」と「悲観論」が交錯するはざ間で「一体君は何を思う…?」「どう行動する?」が問われるのではないだろうか』
「勝者のポートフォリオ」はマーケットの上下のどちらにも対応可能
ここからが私が今回、皆さんにお伝えしたいことになる。大事なのは、経済動向を正確に読むことではなく、どのような経済指標が出てもマーケットは気まぐれに動くとわきまえ、マーケットが上昇しても下落しても対応できる資産運用体制を確立することだ。2月のWebセミナーで現状の投資戦略を解説したが、私が投資助言している「勝者のポートフォリオ」はどちらにも対応している。
現状の「勝者のポートフォリオ」は積極的ながらも柔軟なストラクチャーになっており、将来の投資資金としてキャッシュが14%ある。市場連動型ETFは現状15%保有しているが、相場の一段の下落が濃厚なら売却する。個別銘柄も現状70%保有しているが、相場の一段の下落相場では逆指値にヒットして14%ウェートダウンされる予定だ。もしそれ以上に本格的に下落すればキャッシュポジションは43%まで高まる。仮に上昇相場になってもロングポジション85%で相場に追随することができる。
決算プレイに翻弄されたが、過去最高値に迫る「勝者のポートフォリオ」
一番良くないのが、自分でシナリオを立ててどちらか一方に賭ける、というやり方である。思惑が外れた際は、下落相場では運用資産の減少、上昇相場では運用資産が増えない焦り…という形で痛手は大きい。今のマーケットは正直、先行きを誰もが予測できない難しい状況にあると思う。
そんな中、「勝者のポートフォリオ」は過去最高値まであと一歩に迫っている。3Qの決算発表が終わったが、今回は業績好調や上方修正でも大きく売り込まれる「決算プレイ」に数多く遭遇して、正直かなりイライラさせられた。その後、株価は徐々に戻りつつあるが、デイトレーダーたちの気まぐれな短期売買、すなわちノイズトレードが鬱陶しくてならない。一方でポートフォリオにバッチリ組み込んでいる金融株や鉄鋼株などは絶好調。連日の昨年来高値更新となっており、手応えを感じている。引き続き、パフォーマンスを積み上げるべく、前向きな姿勢で運用をおこなっていきたい。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。
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