日本の貿易赤字が過去最大。要因は円安と資源高による輸入額の大幅増加
日本の貿易赤字が昨年過去最大の19.9兆円にー。
財務省が先週木曜日に発表した2022年の貿易統計速報。輸出額から輸入額を引いた貿易収支は19兆9713億円と過去最大の赤字となった。要因は円安と資源高で輸入額が大幅に増えたことにある。ちなみに輸入は前年比39%増の118兆円となり100兆円を初めて超えた。このうち原油やLNG、石炭などの輸入は97%増の33兆4700億円で全体の28%を占めた。為替レートは年平均1ドル=130.77円と1998年以来の円安水準。一方、輸出は18%増の98兆円で過去最高を更新したが、輸入の118兆円に追いつかず差し引き19.9兆円の大幅な赤字となった。
日本はエネルギー資源が乏しいので輸入に頼らざるを得ない。その分、高品質の製品を作って輸出で儲ける。すなわち「輸出―輸入」がプラスの貿易黒字が得意芸だった。かつては年間6兆円~8兆円程度の黒字を稼ぎ出し、1998年には最高の14兆円の黒字を記録した。しかし、過去10年を見ると貿易赤字が7回あり、合計の収支は44兆4000億円の赤字だ。 そのきっかけは2011年に起きた東日本大震災にある。震災後に原子力発電所がほとんど止まり、火力発電所燃料の輸入増や原油高、昨今の円安を背景に赤字額が増える体質となった。民間調査では2023年も2024年も15兆円前後の貿易赤字が続くとの予想が出ている。
2023年も相当な勢いで値上げラッシュが続き、日本のインフレは加速
ところで、円安になると日本にとって同じものを買う際に支払う金額が大きくなるので輸入額が増えるのは分かるが、円安なら輸出企業が儲かって輸出に有利ではないか、と思われるだろう。しかし半導体不足などの要因で電気機器にとどまらず、あらゆる製品の生産に支障が出たため、昨年は歴史的な円安にもかかわらず輸出は振るわなかった。また2008年のリーマンショックを契機に生産の海外移転や事業縮小が進み、輸出が増えにくくなっているという構造的要因もある。
さて、今回は日本のインフレの話だ。貿易赤字の体質は当然のことながら、日本人の家計にも直撃する。総務省が先週金曜日に発表した12月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は生鮮食品を除く総合で前年同月比4.0%と、41年ぶりに4%台となった。食料の伸び率は7.4%と46年ぶりの水準に達し、電気代などエネルギー関連は15.2%伸びた。2022年の年間総合指数は2.3%増だが、月を追うごとに上昇率が加速している。この状況は2023年に入ってもまだしばらく続くと思われる。なぜなら一般市民の消費者物価指数と企業物価指数との間に大きな乖離があるためだ。
電気会社が電気料金の大幅値上げを申請。家計に与える打撃は深刻
2022年の企業物価指数は前年比9.7%の上昇である。輸入物価の上昇を主因とした川上での価格上昇が、川中、川下へと転嫁され、最終的には消費者への価格転嫁につながっていく。私たちの生活実感として、昨年はありとあらゆるモノやサービスの値段が上がった印象があるが、それでもまだ全面的に転嫁されているわけではなく、今年もまだ相当な勢いで値上げラッシュに直面することになりそうだ。
このところ大きな話題になっているのが、2023年に電力料金が大幅に上がることだ。東北電力や中国電力などの5社は昨年11月以降、燃料高などを理由に3~4割前後の値上げを経産省に申請しているが、ついに東京電力も3割程度の一般家庭向け電気料金の値上げを申請する。東電が規制料金を上げるのは東日本大震災後に収支が悪化した2012年以来の11年ぶりだが、今回はかなり大きな値上げだ。家庭にとっては毎月の固定費だけに非常に痛い。政府は緩和措置として補助金を出すことを検討しているが、十分カバーできるような対策ではないし、期間限定の措置のため我々を直撃することになる。
日銀総裁が言う「日本のインフレは一時的」に騙されるな。構造的現象だ
日銀の黒田東彦総裁は「日本のインフレは一時的」と記者会見の席でしばしば述べてきたが、インフレ退治のための金融政策を全くしていない。一方、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は昨春頃は「米国のインフレは一時的」と述べていたが、夏場には「これは一時的ではない、インフレ退治のために利上げを積極的におこなう」という姿勢に改めた。今や米国の政策金利の誘導目標は4.25%~4.50%まで引き上げられている。昨年の2月までは0.00%~0.25%のゼロ金利だったことを思い返してみるとまるで別世界である。
ところで、民間エコノミストによる今後の消費者物価指数予想では、2023年は物価上昇の勢いが鈍るとの見方がされている。総合の消費者物価上昇率は2023年1~3月期に前年同期比2.7%となり、7~9月期には1.7%にまで下がるとのことだ。上昇率は前年との比較のため、1年前の上昇率が高ければ、たとえ今年は継続して上昇していたとしても「率」では鈍化することになる。
賃上げが進みにくい日本でインフレへの有効な対抗手段が資産運用である
米国の株式市場では毎月のCPIに大きな注目が集まり、「今月は鈍化した」「今月は鈍化していない」と一喜一憂し、株価が乱高下する現象が続いている。株式市場では確かに数字そのもので「方向性」を判断し、インフレの継続か、ピークアウトかを見極めるのが大事だが、我々の生活ではあまり意味がない。なぜなら、インフレが鈍化したとしても、価格上昇は続いており、物価が下がっているわけではないからだ。「率」が鈍化したとしても、価格は高いままで家計にはずっしりと堪える。日本のインフレも米国と同様、一時的ではなく構造的な現象だ。
日本で賃上げムードがようやく出てきたが、いきなり収入が増える人は非常に少ないと思う。現金の価値はどんどん目減りしており、防御策は節約くらいしか対処の仕方がない。でも、皆さんにそういう風にはなって欲しくない。そのための資産運用である。「長期になればなるほど現金の価値はどんどん目減りしていく」。一方で「経済や企業業績は長期になればなるほど成長していく」とすでにコラムで述べてきたとおりである。投資は資産価値を増やすための重要な手段である。
次回のセミナー「逆イールドを読む&現状の投資戦略」に乞うご期待!
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次回のセミナーでは、今一つ個人投資家に理解されていない「逆イールド」を正しく知っていただくとともに、「逆金融相場」から「逆業績相場」への流れも確認したい。現状の投資戦略、今後の投資の注意点、注目すべき個別銘柄についても詳しく解説する。セミナー後半では皆さまからのすべてのご質問にお答えする形で進めていく予定だ。1月開催のセミナーでは300名を超える参加者があり盛況だった。会員限定セミナーだが10日間の無料お試し期間があるので大いに活用して欲しい。今年こそ資産運用で大きく飛躍されたい方々の多数のご参加をお待ちしている。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。
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