上場基準を満たさない企業の経過措置を2026年3月で終了すると発表
暫定的な経過措置の期間は2026年3月まで ―。
先週水曜日、東京証券取引所はプライム市場などの上場基準を満たさなくても暫定的に上場を認める「経過措置」を今後4年で終了する案を発表した。2022年4月に実施した市場再編を起点に3年間は経過措置、そしてその後1年間の改善猶予期間を設ける形となった。それでも基準を満たさなければ監理・整理銘柄に指定され上場廃止となる形だ。特に鳴り物入りでスタートしたプライム市場において、現在基準を満たしていない269社は上場維持に向けた経営改革が急務となってくる。
東証は2022年4月に従来の市場区分を廃止し、プライム、スタンダード、グロースの3つに市場を再編した。プライムは大株主や役員などの保有分を除く流通株式ベースで時価総額100億円以上、スタンダードは同10億円以上といった基準を設けた。その際に、新市場の基準を満たしていなくても暫定的措置として上場を認めた企業がプライムで269社、スタンダードで200社、グロースで41社あり、各市場の1~2割を占める(2022年12月末時点)。
東証再編で欧米に見劣りする市場活性化という狙いを果たせたのか?
市場再編の開始時においてプライム基準には遠いが最上位市場にとどまりたいとの思いでプライムを選んだ企業は多数あるが、経過措置期間後プライムに残れない企業はスタンダードに移ることは可能だ。一方、スタンダード企業には救済的措置はない。なぜならグロースはスタートアップなど成長企業を対象にしており、スタンダードの下という位置づけではないからだ。グロースにももちろん救済措置はない。基準を満たしていない企業は、収益改善によって時価総額を高めたり、オーナーの持ち株を放出して流通株式比率を高めたりする必要がある。
ところで、ここからが本題である。今回の大掛かりな東証再編の狙いは、「世界の主要市場の時価総額を比較すると、東京は欧米に大きく水をあけられている」「プライム市場を新設し、そこに日本有数のグローバル企業を上場させることで、海外投資家を中心に多額のマネーを呼び込み、市場を活性化したい」ということだったはずだが、果たして何の効果があったのだろうか?
最大の問題はプライムという市場名に値しない企業が多数入っていること
市場再編前の東証1部企業は2185社だった。プライム市場は1838社(2022年12月末)である。当時「東証1部の上場社数は2185社あり、全体の6割が集中している。これは海外の主要市場と比べても企業数が多い」と言っていたはずだが、一体何が変わったのだろうか? 最大の問題は、プライムという市場名に値しない企業が多数入っていることである。プライムは「最良の」を意味する言葉だ。
さらに非常に残念なのはスタンダード、グロースを設けたことで、従来の東証2部、ジャスダック、マザーズという区分がなくなり、東証2部とジャスダックのベンチマークが消滅したことだ。マザーズ指数はマザーズ先物があるため何とか継続されているが、私のような小型株のスペシャリストとしては小型株を体現する指数がなくなってしまった。東証2部、ジャスダック、マザーズはそれぞれ特徴が異なり、ベンチマークの動きが小型株市場の微妙な動向を伝えてくれていた。それが無くなってしまったのである。
プライム市場1社の時価総額の中央値は600億円程度。欧米はその数倍!
私の願いは「日本に本当のプライム市場が欲しい!」である。私の手元に2021年末時点の市場別時価総額データがある。プライム市場1社あたりの時価総額の中央値は、再編前の東証1部が446億円、再編後のプライムは599億円。150億円ほど増えたが、中央値はとてつもなく小さい規模だ。ちなみにNY市場の中央値は3269億円、ナスダックのグローバルセレクトは同1999億円、ロンドンのプレミアムは同1948億円だ。いずれも2000億円~3000億円の規模があり、東証プライムの3倍~5倍あるのだ。
海外投資家に向けて「日本には多くの魅力的な企業があり、株価は割安に放置されているので、注目してほしい!」というコンセプトを明確に打ち出すなら、私なら時価総額5000億円以上の企業をプライムとして定義する。こうすれば対象企業は約250社に絞られ、時価総額の中央値も1兆円近くまで引き上げることができる。もちろん、GAFAMのように100兆円、200兆円を超えるような企業はないにせよ、現在のプライム市場の大所帯に埋もれて低評価に甘んじている企業に光が当たると思う。また銘柄数を250社に絞り込めば、海外投資家への訴求も高まる。
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