「勝者のゲーム」と資産運用入門

米金利が再び上昇し、短期金利が長期金利を
上回る逆イールドが拡大。米株式市場は
逆金融相場から逆業績相場へ。太田忠の勝者のポートフォリオ 第74回

2023年3月7日公開(2023年3月6日更新)
太田 忠
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米金利が再び上昇。長期金利は4.09%、短期金利は4.9%台と高水準に

 米長期金利が4.09%と昨年11月以来の高水準へ―。

 先週木曜日の米債券市場で10年債の利回りが4.09%まで上昇した。2022年10月下旬には4.2%台半ばまで上昇していた長期金利は今年1月には3.3%台まで低下していたが、2月に入ってから急速に反転する形となっている。短期金利の指標となる2年債の利回りはさらなる上昇を強めて4.90%台まで上昇しており、両者の逆転現象がさらに加速している。

 2年債の利回りが10年債を上回る「逆イールド」が発生したのは2022年の3月29日だ。2019年夏以来、約2年半ぶりに同現象が出現した。あれから約1年が経過しているが、逆イールドはますます大きくなっている。先週末3月3日時点の逆ザヤは-0.91%となっており、今回の逆イールド現象において最大値となった。2000年以来23年ぶりの大きさだ。

2年債の利回りが10年債の利回りを上回る「逆イールド」が発生する理由

 通常、債券の利回りは年限が長くなるほど返済リスクを踏まえて金利は高くなる。将来の経済や物価が不確実で見通せない分、投資家は高い利回りを求める。そのため1年債よりも3年債、3年債よりも10年債、10年債よりも20年債の方が利回りは高くなるという当たり前の話だ。今起きている2年債の利回りが10年債の利回りを大きく上回る、などということは考えられない。どうしてこのような現象が起きているのだろうか?

 それは、短期金利は足元の金利動向の影響を受けやすく、長期金利は長期的な景気見通しの影響を受けやすいからだ。足元の金利動向とはずばり、米連邦準備理事会(FRB)の政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利は2022年3月にゼロ金利(0%~0.25%)解除後、ものすごい急ピッチで上昇し現在は4.50~4.75%になっており、実に4.50%も上昇している。これに大きな影響を受けて短期金利が急騰した。一方、長期金利は今後の景気見通しの影響を受けるため「こんなに金利が上がれば、インフレ懸念で景気は減速するだろう」との観測が強まり金利上昇が抑えられている。中長期的な景気減速と、それに伴う利下げを同時に織り込んでいるのだ。

逆イールドは景気後退のシグナルとされ、リーマン・ショック前にも発生

 一般的に逆イールドは「景気後退のシグナル」と解釈される。FRBが金融引き締めに動くことで景気が冷え込む展開を投資家が読み取り、債券市場で起こった現象が時間をおいて、実際の景気動向に反映されるからだ。過去の動きを見ると経験則になっている。2年債と10年債の利回り逆転は、実際の景気後退の1~2年前に発生しているからだ。2000年代初頭のITバブル崩壊やリーマン・ショックの前にも出現していた。直近では米中貿易摩擦が激化した2019年に一時発生し、その後の新型コロナ感染拡大で世界経済が大幅なマイナス成長に陥った。

 ところで、いったんは低下していた長期金利が最近になって急上昇しているのは何故だろうか?

 株式市場では、1月までは「間もなく利上げは打ち止めとなり、年後半に利下げが起こる」とのシナリオだったが、ゼロ金利を解除した後にこれほどまでに急ピッチで政策金利を引き上げても2月に入ってから強い経済指標が次々と発表され(雇用統計や小売売上高)、インフレも予想以上に高止まりしている状況(CPI、PPIに加えてPCEも)が明らかになってきたからだ。それらによる長期金利の上昇で株式市場の下落が顕著となり、再び円安・ドル高の流れになっている。ドル円は1月中旬に一時127円台まで下落したのに対して、先週136円台まで上昇するなど円安・ドル高のスピードがものすごい。

 米国市場は先々週まで4週連続の下落となっていただけに、さすがに先週は反発した。しかし、長期金利の上昇が続く限り株式市場にとって大きな逆風となる。特にグロース株においてその傾向が強まることには要注意だ。

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