個人投資家の36%が海外株など外貨建て資産の比率を1年前より増やしている
日本経済新聞が調査会社のマクロミルを通じて、20代から70代の個人投資家、約1300人に行ったアンケート調査の結果に目を引かれました。
それによると、海外株など外貨建て資産の比率を1年前より増やした人は36%いました。さらに若い世代ほど、外貨建て資産の比率を増やしていました。
若い世代が外貨建て資産を増やした一番の理由は、外国企業は日本企業より期待リターンが高いからということでした。これが50代、60代になると、資産を分散したいからという理由が一番になっていました。
このような動きが起こっていることはおおむね合理的だと思いますが、このことに関してもう少し違う視点からお話したいことがあります。今回はそのことを書いていきたいと思います。
日本の個人投資家はグローバルファンドマネジャーのような運用手法をとるべき
フィデリティ投信には、グローバルな株式ファンドがいくつかありました。そういうファンドはMSCI World(日本を含む先進国株式の指数)またはMSCI EAFE(北米を除いた先進国株式の指数)などをベンチマークにしてファンドを運用しています。
日本の個人投資家は日本株のファンドマネジャーの運用の仕方より、グローバルファンドマネジャーのような運用手法をとるべきだと思います。そうなると、「国」という括りは関係なくなってくると思います。
海外投資のハードルがかなり下がった現在、グローバルファンドマネジャーと同じように、個人投資家は簡単に世界の市場へアクセスできるようになりました。なので、この新たなアクセスをフルに活用すべきだと思います。
グローバルファンドマネジャーは常に世界を飛び回っていて、いい会社を探しています。彼らの一番の尺度は、世界で、この会社は一番いい会社かどうかということです。そのことについて考えてみましょう。
どこの国に上場しているかは重要ではない。グローバルに同業種の会社を比較して、いい会社、割安な会社に投資する
たとえば、自動車会社だったら、トヨタ、ホンダ、テスラ、フォード、GM、VWなどを比較して、その中から買う銘柄を選びます。日本の会社が一番よくて、株価が割安なら、日本株であっても買うのです。
ネット系企業などもこういう考え方で投資することができます。大手企業はビジネスをグローバルに展開している場合が多いので、実はどの国に上場しているかということはそこまで関係ないです。
為替もそうです。たとえば、トヨタのようなグローバル企業の売上げは日本よりも海外の方が多いです。
アメリカで1つよく言われているのは、アメリカのグローバル企業に投資していれば、それだけでグローバル分散、為替分散していることになるということです。
だったら、どういう時に「国」という括りは重要になってくるのでしょうか?
インデックス投資では、なぜ精度の高い投資ができなくなってしまうのか?
それは小型株、内需株、規制産業などに投資する時です。
そういう株はその国の事情、たとえば金利、規制、人口動向、社会のしくみ、地政学リスクに特に影響されます。
それと、これはある意味、規制の1つになりますが、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の体制がどうなっているかということは「国」単位で見なければいけません。このことは小型株、内需株、規制産業だけでなく、グローバル企業にも影響します。
先進国全体、新興国全体などを対象としたインデックスもあるものの、アメリカならS&P500、日本ならTOPIX(東証株価指数)や日経平均など、インデックスの世界では「国」という括りの存在感が強いです。
そして、インデックス投資をしていると、グローバル企業、内需企業、規制産業、すべてセットとして買ってしまいます。インデックス投資をすると、精度の高い投資ができなくなってくるのです。
たとえば、TOPIXに連動するインデックスファンドを買うと、内需株は欲しくなくても、グローバル競争力がある日本企業といっしょに内需株も買ってしまうことになります。
そうなると、TOPIX連動のインデックスファンドを買うときは、日本の人口減少問題などが重要な評価ポイントになります。しかし、内需株を買わなければ、日本株を買っても、日本の人口減少問題の影響はかなり低減できます。
ウォーレン・バフェットが日本の商社株に投資したからといって、日本株全体を買いと思っているわけではないだろう
「国」という括りはインデックスの縛りがある時だけは重要になってきます。インデックス投資から自分を解放していれば、「国」より、どの会社が一番いいかということに目線が変わります。
たとえば、ウォーレン・バフェットは日本の商社株に投資しました。彼はこれから日本に強気というよりも、商社(グローバル企業)に対して強気なのだと思います。なので、ウォーレン・バフェットが日本の商社株に投資したからといって、彼がTOPIXは買いだ、日本株は内需株を含めて買いだという見方を持っていると思い込むのは間違いです。
インデックス投資家がいい銘柄を割安な水準で買えるチャンスを作ってくれている!
いい会社なのに、その会社が存在する国によっては、株価が割安になっていることがあります。それはある意味、インデックス投資家が作ってくれているチャンスだと思います。
日本株全体に弱気ムードが漂っていると、インデックスごと売る投資家もいますので、いい会社なのに、割安になってしまうこともあります。ウォーレン・バフェットが買っている日本の商社はこのケースに当てはまっているのかもしれません。
結論をまとめますと、世界に投資の目線を広げるべきです。グローバルにいい事業を展開していて、割安な会社を買うべきです。たまたまマクロ状況が良くない国にいるだけのグローバル企業を投資対象から外すべきではないと思います。
内需系銘柄などに投資するときについては「国」という目線で物事を考える必要があるものの、大切なことは、個人投資家でも「国」とインデックス投資の縛りから自分を解放して、資産運用することではないかと考えます。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
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