銀行株は長期投資になぜ向いていない? 長期投資に向いているセクターや銘柄はどこ? 元銀行株アナリストのポールさんが解説!
元フィデリティ投信トップアナリストで、米国・シアトルからメルマガ&オンラインサロン「米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしているポール・サイさんが、東京MX2で毎週月曜~金曜22時から放送されている、「WORLD MARKETZ」に電話でゲスト出演した。
前回の放送では、「SVB(シリコンバレー銀行)破綻」をきっかけとした金融不安について、元銀行株アナリストのポールさんが現地の生情報を届け、「銀行株は長期投資に向いていない」と断言できる理由を語ってもらった。
【※関連記事はこちら!】
⇒シアトル在住FIRE組が、SVB破綻の生情報を語り尽くす! 銀行株が長期投資に向かないワケは? 金利上昇が落ち着き、テクノロジー株が狙い目に!
そして、今回の放送では「銀行株は長期投資に向いていない」理由を改めておさらい。そこから逆に、長期投資に向いているセクターや銘柄には、どのようなものがあるのかを解説。最後はなぜか、ポールさんの仕事と私生活に、たばこがどう関わっているのかの話題に転がっていったので、さっそくチェックしていこう。
シアトルは春になりかけ。桜が満開で、桜の名所もあるが、外でお酒を飲んではいけないため、花見のスタイルが日本とは異なる
番組冒頭、アシスタントの木村カレンさんから、現在のシアトルの気候について聞かれたポールさん。
番組調べでは、シアトルは北緯47度に位置しており、日本でいえば、北海道より北の南樺太と同じくらいの緯度―――なのだが、ポールさんによれば、シアトルは春になりかけで、気温は10度から15度と、思ったより寒くはなさそう。桜が満開で、先週末は桜の名所として有名なワシントン大学に行ったそうだ。
ただ、シアトルの花見は日本のスタイルと異なる様子。アメリカはキリスト教の国とあって、外でお酒を飲んではいけないため、日本のようにシートを広げて宴会をするわけではなく、ブラブラ散歩したり、桜の写真を撮ったりして楽しむようだ。
銀行株投資には「景気が良くないと投資できない」という鉄則がある!
続いては、マーケットの話題に。冒頭で触れたとおり、ポールさんは前回の放送で「銀行株は長期保有に向かない」と断言したのだが、放送後、クレディ・スイスのAT1債(※劣後債の一種)が突然無価値になるという衝撃の事態が発生。
【※関連記事はこちら!】
⇒シアトル在住FIRE組が、SVB破綻の生情報を語り尽くす! 銀行株が長期投資に向かないワケは? 金利上昇が落ち着き、テクノロジー株が狙い目に!
こうした経緯を受けて、スタジオMCの渡部一実さんが、個人投資家の長期保有に銀行株は向かないのかを改めて質問した。
ポールさんいわく、銀行株は持ってはいけないわけではないが、短期・中期が向いていて、持って放っておくというタイプの株ではないという。
なにより、銀行株投資には鉄則があるとのこと。その鉄則とは、「景気が良くないと投資できない」ということだ。
銀行株は景気サイクルに従って動くため、そのサイクルを読むことが、銀行株を見るうえで重要なんだそう。
つまり、景気が良いときは金利が上昇して、与信リスクも小さくなり、銀行株も上昇するけれど、景気が悪いときは金利が上昇せず、与信リスクも大きくなって、銀行株投資には向かない時期になるというのだ。
このことを、ポールさんは別の表現で「銀行株はマクロベット、マクロ経済に賭ける時に使う銘柄」とも語っていた。
銀行株は、何もない状況が長く続いて、急に地震が起きたように暴落することが多い
そして、銀行のビジネスモデルはとてもレバレッジがかかっている、ともポールさんは話す。
銀行の資本は、資産の10~20%のところが多いのだが、事業会社でトヨタを例にすると、トヨタの資本は資産の40%ほど。
つまり、銀行の資産が少し動くだけで、資本が大きく動くことになり、その分、株価もボラタイルになるというのだ。
さらに、銀行株の動きの特徴としては、何もない何もない何もないという状況が続いて、急に地震が起きたように暴落することが多いとのこと。
何もない状況が続くと、安定しているように見えるけれど、実際にはそうではなく、何か起きたときにすごく下がってしまうというのが、銀行株の特徴のようだ。
銀行株投資が大成功した例はみずほ銀行。ただ、大暴騰した後に大暴落した
ここまでの話だと、銀行株投資にいいイメージが湧かない……かもしれないが、銀行株投資のすべてがすべて、うまくいかないというわけでは、もちろんない。
銀行株投資が過去に大成功した例として、ポールさんが挙げたのが、みずほ銀行だ。
みずほ銀行が、2003年の500円台から2006年の1万円台まで大暴騰したことで、ポールさんの知り合いに大儲けした方がいたとのこと。
先ほどポールさんは、銀行株投資の鉄則として「景気が良くないと投資できない」と教えてくれたばかりだが、みずほ銀行の大暴騰も、この鉄則に当てはまるという。
みずほ銀行を含め、当時の銀行株は、バブル崩壊の後処理で下がっていたのだが、後処理が終わり、景気回復の見込みが出てきたことで、株価が大きく上昇したとのこと。
もっとも、みずほ銀行はその後、2006年から2011年にかけて900円台まで大暴落している。
このことからポールさんが言いたいのは、銀行株は景気サイクルを正しく読むことができれば大儲けできるけれど、銀行株はボラタイルで、経済全体を常に注目しておかないと非常に難しい銘柄でもあり、個人投資家には読みづらい業界だ、ということなのだ。
すると、渡部さんから、JPモルガンにはジェイミー・ダイモンという、ウォールストリートの王様みたいな、有名なCEOがいるけれど、銀行株投資において、経営陣による差はあるかとの質問が飛ぶ。
これに対し、経営陣の差で銀行に違いは出るものの、セクター全体の動きのほうが大きいため、どの銀行株を買うかより、銀行株を買うのか、買わないのかを最初に決めることのほうが非常に重要だと、ポールさんは教えてくれた。
リスクをあまり取らず、配当を狙う長期投資では、電話やたばこ、飲料、食品など、ディフェンシブの中でも需要が安定する会社がいい
ポールさんの言うとおり、個人投資家にとって銀行株が長期投資に向かないのであれば、今度は逆に、長期投資に向くセクターがどこなのかが気になる様子の渡部さん。
長期投資に向くセクターとして、消費財やディフェンシブ銘柄にあたりをつけた渡部さんだったが、ポールさんによると、リスクをあまりとらず、配当を狙うのであれば、ディフェンシブの中でも需要が安定する会社を選ぶといいとのこと。
具体的には、米国株では、AT&Tやベライゾンなどの電話会社がよく、たばこ関連も、やめられない人の需要が多くあるため、フィリップモリスやアルトリアがオススメ。日本で言えば、JTの配当利回りが6~7%あっていいそうだ。
JTはたばこに限らず、飲料や食品などの需要が安定する事業をやっているのが好印象で、アメリカだとコカ・コーラなど日用品のもののほうが、需要が安定しているという。
なお、ディフェンシブ以外の、高配当銘柄にリスク分散したければ、S&P500の高配当株式ETFであるSPYDは、配当が4.52%ほど、新興国株高配当ファンドであるDEMは、配当が7.4%ほどで、よい候補だそうだ。
長期保有である程度リスクをとれるのなら、テクノロジー会社がいい。ドン・キホーテのパンパシフィックホールディングスも、いい戦略を持っている
さらに、ポールさんによれば、長期投資に向くセクターの選び方は、リスクの取り方によっても異なるとのこと。
食品やたばこは、リスクを取りたくない場合の選択肢として無難だけれど、長期保有である程度リスクを取れるのなら、テクノロジー会社にいい銘柄があるという。
そのテクノロジー会社というのは、この番組でも再三取り上げてきた、グーグルやマイクロソフトなどだ。銀行株と同じようにボラタイルではあるものの、AIだったり、イノベーションがどんどん起きることにより、利益が見込めるそうだ。
【※関連記事はこちら!】
⇒シアトル在住FIRE組が、SVB破綻の生情報を語り尽くす! 銀行株が長期投資に向かないワケは? 金利上昇が落ち着き、テクノロジー株が狙い目に!
⇒米金利が上昇してハイテク株が下落しているときは、むしろチャンス! エヌビディアは暴落したら買って長期で持つ銘柄。テスラ株の旬は過ぎ、中国株は大型ハイテク株を買うべし
⇒テスラの上昇を的中! 次の上昇銘柄はアマゾン? グーグル? メタ? ChatGPTが将来、グーグル検索を代替する恐れアリ!?
記者の感覚では、ポールさんはこれまでの放送で、テクノロジー会社ばかりを推してきたイメージがあるのだが、今回のポールさんは、テクノロジーに限らずいい会社が日本にあると教えてくれた。
その会社とは、ドン・キホーテでおなじみのパンパシフィックホールディングスだ。
ポールさんによると、アジアは日本に魅力を感じていて、ドン・キホーテは日本の文化をアジアで売る戦略を立てているところが、インバウンドと同じ構図で、よいところだそう。
いい経営者がいて、いい戦略を持っている株を買って、放っておけば、その戦略が時間をかけて実行され、利益が上がって株価も上がるというのが、ポールさんの持論のようだった。
ポールさんはたばこを吸わないが、投資と趣味は分ける必要
最後は、JTなどのたばこ株を紹介してきたことに関連して、ポールさんはたばこを吸うのかという話題に。
たばこは吸わないけれど、投資と趣味は分ける必要があるとポールさん。配当利回りが高く、需要が安定している例として、たばこ株を紹介したものの、個人的にはたばこを吸わないし、健康の面から見て、たばこ株に投資したくないという方の気持ちも理解できるとのことだった。
ここまで、4月4日(火)放送の「WORLD MARKETZ」に電話出演した、ポールさんのマーケット解説を中心にお届けした。現地(シアトル)時間、早朝6時台の出演にもかかわらず、ポールさんは毎回元気に、現地からの貴重な情報を届けてくれている。
冒頭でも紹介したとおり、ポールさんはメルマガ&オンラインサロン「米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている。登録後10日間は無料だ。米国株投資をしてみたい、すでにしているけどもっと現地からの情報が欲しい、ポールさんが推奨する個別銘柄やポートフォリオを見てみたいという人は、こちらをぜひ登録してみてほしい。
(ザイ投資戦略メルマガ)
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中
※メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」募集中! 米国株&世界の株の分析が毎週届き、珠玉のポートフォリオの提示も! 登録から10日以内の解約無料。Youtubeチャンネルも開始。