「勝者のゲーム」と資産運用入門

日銀植田新総裁の金融政策の転換やYCCの修正は十分ありうる! 景気低調な欧米より、日本に投資妙味あり。年後半は小型グロースも復調か太田忠の勝者のポートフォリオ 第83回

2023年5月9日公開
太田 忠
facebook-share
x-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

日経平均は2万9000円を回復。円安や日銀の金融緩和策の継続も追い風

 日経平均は2万9000円台乗せ、昨年8月17日以来8か月ぶりの高水準に―。

 ちょうどゴールデンウィークの狭間にあたる5月2日の火曜日。日経平均は2万9157円で取引を終えて、3日連続で年初来高値を更新した。為替は137円台後半まで下落し、ドル高・円安が鮮明となったことも追い風となった。日経平均の年初来パフォーマンスは+11.7%となり、2ケタの上昇率と好調である。一方、小型株の代表的指標であるマザーズ指数は+1.9%に留まっており、大型株と小型株のリターンの格差は歴然だ。

 4月28日の日銀金融政策決定会合、5月3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)、そして5月4日の欧州中央銀行(ECB)理事会。相次いで日米欧の金融政策が発表されたが、見事に方向性が異なる結果となった。これらを簡単に整理しつつ、今後のマーケット動向について考えてみたい。

レビュー中でも日銀の金融政策の転換やYCCの修正は十分ありうる

 まずは日銀の金融政策決定会合。植田和男新総裁が初めて議長を務めた会合では、大規模金融緩和策の継続が決定され、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)も現状維持となった。今も続いている金融緩和策について「今後1年から1年半をかけて多角的なレビューをする」と発表したため、レビュー中は金融政策の大転換はしづらいとの思惑から「金融正常化は遠のいた」との見方がこの日のマーケットでまことしやかに囁かれたが、これはかなり一面的な考え方である。植田総裁が記者会見の席で述べたように、レビュー中でも金融政策の転換やYCCの修正は十分ありうる。今回は金融緩和が維持されたため、株式市場は好意的に受け止めて、冒頭の「日経平均2万9000円台乗せ」をもたらす原動力となったが、次回6月16日(金)に開催される金融政策決定会合が注目される。

 昨年12月に黒田東彦前総裁が突然発表したYCC修正は、フォワードガイダンスが全くなかった突然のサプライズ・イベントとなり、株式市場全体の大幅安と同時に、金融株だけがスポット的に急騰するという状況を生み出したが、YCCを再修正すれば同様のことが起こることは必至だ。米国発の金融不安を受けて、日本の金融株もとばっちりを受けて株価を大きく下げてパフォーマンスの期待値は低下したかのように見えるが、息を吹き返す可能性が大いにある。そういう意味においても、日銀の金融政策からはしばらくは目が離せない。

米国は0.25%利上げ。米銀破綻で金融不安高まる中、インフレ抑制を優先

 次に米国のFOMC。こちらは事前予想通りとなる0.25%の利上げを決定。相次ぐ米銀の破綻で金融不安が高まっているが、インフレ抑制を優先する形が取られた。今回の利上げで米連邦準備理事会(FRB)の政策金利は5.00%~5.25%の水準にまで引き上げられた。2022年3月にゼロ金利を解除して以降、10回連続となる利上げであり、これでリーマン危機前の利上げの到達点に並んだことになる。2007年8月以来、約16年ぶりの水準だ。利上げスピードにおいては過去最速ペースである。

 FRBのパウエル議長は記者会見で「銀行システムは健全で強靱だ」と述べるとともに、次回6月に開催されるFOMCで追加利上げの余地を残しつつも、利上げ打ち止めの可能性を示唆した。一方で、Fedウオッチに見られるマーケット参加者予想による年後半の利下げ転換については改めて否定している。このあたりのFRBの姿勢とマーケット予想のギャップは昨年からすでに存在しており、ある程度は致し方のないことだ。

米国の利上げ政策はほぼ終局。焦点は景気減速や企業業績悪化の度合い

 言えることは、利上げ政策がほぼ終局を迎えていること。それをポジティブに捉えるかどうかは、結局今後の景気減速および企業業績悪化の度合いがどこまで許容範囲にとどまるかどうか、という点に尽きると思う。ここでもマーケットは「景気減速になれば、金融緩和で利下げだ!」という楽観論と「金利の高止まりで景気&業績悪化、株式市場に逆風だ!」との悲観論が揺れ動く展開が続いてきた。マーケットサイクルで現状の相場を確認すると、金利上昇に苦しめられてきた逆金融相場は終了し、政策金利の高止まり&景気悪化で逆業績相場に移行するという流れになっている。

 金融不安前は「悪いニュースこそ、株式市場にとっては株価上昇のための良いニュース」、すなわち「Bad news is good news」という解釈だったが、金融不安後は「悪いニュースは、株式市場にとっては株価下落の悪いニュース」という「Bad news is bad news」に変化しているという見解を第79回のコラムで述べた。この変化こそが逆業績相場の典型的な特徴であり、景気減速による金利低下や企業業績の悪化は売りの要因になる。まさに、マーケットはいよいよ逆業績相場の様相が強まってきたという実感だ。同じ現象でも解釈が異なってくる。これまでとはちょっと違う発想の転換が求められる。非常に重要な点だ。

米国はインフレピークアウトの認識も、欧州ではインフレ上振れを警戒

 そして、ECB理事会。0.25%の利上げを決めたが、利上げ幅は前回3月までの0.5%から3会合ぶりに縮小した。今、欧州ではストライキが相次いでおり、賃上げによるインフレ加速への警戒が非常に根強い。ECBの政策金利は3.75%になったが、ラガルド総裁は記者会見で「今後のインフレの見通しはまだまだ先が長く、高水準の状態が続く」述べ、「利上げは止めない」と強調した。これはFRBとは大きく異なる点である。米国ではインフレがピークアウトとの認識が広がっているが、欧州ではまだ今後上振れが警戒されている。要するに、逆金融相場の様相がまだ続いているということである。

 5月第1週のNYダウは木曜日時点で971ドル安(-2.8%)と大きく下げているが、日経平均は冒頭で述べたように年初来高値を更新中である。逆業績相場において日本市場は非常に善戦していると言える。一方で小型株は不振が続いており対照的である。だが、米国市場や米国の金融政策に大きく影響を受ける日本市場においては、やはり年後半からは利下げを意識した「金融相場」の兆候が出てくると私は見ている。これは2023年の年頭で述べた「今年は、年前半は逆金融相場&逆業績相場で苦戦、年後半は金融相場の兆候が出てチャンス」というシナリオ通りの展開だ。今から、それに備えて準備をしておく必要がある。特に2022年に大きく値下がりして冴えなかった小型グロース株は復調する可能性がある。

「勝者のポートフォリオ」は5月も好調持続。10日にWebセミナーを開催

  さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」。先週は3月9日以来となる日々ベースでの過去最高値を更新。先々週の4月最終週において週間&月間ベースで過去最高値を更新していたが、5月に入っても好調が続いており、先週の年初来高値は6銘柄となった。非常に手応えを感じている。

  5月10日(水)に恒例のWebセミナーを20時より開催する。テーマは『5月FOMC後のマーケットを展望する』。現状の投資戦略、今後大きな上昇が期待される注目銘柄についても詳しく解説。セミナー後半では皆さまからのすべてのご質問にお答えする形で進めていく。会員限定だが、10日間無料お試し期間中でも参加可能。セミナー当日14時までのお申込み(15時URL配信)。今回も多くの皆さまのご参加をお待ちしております。
 

●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。

※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。

 

国内外で6年連続アナリストランキング1位を獲得した、
トップアナリスト&ファンドマネジャーが
個人投資家だからこそ勝てる

「勝者のポートフォリオ」を提示する、
資産運用メルマガ&サロンが登場!

老後を不安なく過ごすための資産を自助努力で作らざるを得ない時代には資産運用の知識は不可欠。「勝者のポートフォリオ」は、投資の考え方とポートフォリオの提案を行なうメルマガ&会員サービス週1回程度のメルマガ配信+ポートフォリオ提案とQ&Aも。登録後10日間は無料!

太田忠の勝者のポートフォリオ

10日間無料 詳細はこちら※外部サイトに移動します


ダイヤモンド・ザイ 2026年1月号好評発売中!
ダイヤモンド・ザイのウェブ会員登録はコチラから 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
moomoo証券は「米国株」投資におすすめの証券会社! 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の公式サイトはこちら! 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の魅力を徹底解説!NISAは全商品が手数料無料!「クレカ積立で最大3%還元!」「普通預金金利が大幅アップ!」などメリット多数! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
moomoo証券は「米国株」投資におすすめの証券会社! 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の公式サイトはこちら! 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の魅力を徹底解説!NISAは全商品が手数料無料!「クレカ積立で最大3%還元!」「普通預金金利が大幅アップ!」などメリット多数! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

勝ち組投資家の
1億円を作るワザ29
買いの高配当株74

1月号11月20日発売
定価950円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[勝ち組投資家の1億円を作るワザ]
◎ZAi NEWS CHANNE
プロ9人がズバリ診断!
「日経平均5万円」が“高すぎ”ではない3つの理由

◎巻頭特集
最新決算で発掘!主役株はコレだ!
株価爆上げ株36
●高進捗の鉄板人気株
●2ケタ増益の大化け高成長株
●出遅れの割安急騰株

◎第1特集
勝ち組投資家13人の29のワザ!
新顔の億り人が続々登場!1億円の作り方

●成長株で作る
・www9945さん/
11億円
・すぽさん/1億円超
・テンバガー投資家Xさん/7億円
●2割安株で作る
・ヘムさん/
5.2億円
・なごちょうさん/2億円
・miyata1さん/2.7億円
●高配当・優待株で作る
・べトカブさん/
2.3億円
・ナイトさん/1億円
・たつやさん/2.5億円
●レバレッジ投資
・コン太さん/
3.5億円
・珍五郎さん/9600万円
●番外編推し活買い!
・猫おやじさん/
1.6億円
・髪はロングさん/1億円
◎第2特集
4%以上が21銘柄も!
2026年に買いの高配当株74

●安心・安定を重視なら誰もが知ってる有名企業!最強の高配当株10
●じっくり育てたいならもらえる現金が増えていく!未来の高配当株38
●資産額アップを狙うなら利益ダブル取りを狙う上がる高配当株26
●儲かる買い方がわかる!初心者でも安心!
配当入門

◎第3特集
AI時代の今こそ米国株で老後資産をつくろう
◎第4特集
2026年のNISAはこの9本の投信を買え!
●3年目のNISAは“一歩先”も考えよう
◎第5特集
少額&高額品の駆け込みふるさと納税カタログ
【別冊付録】
株で勝てる!ポイ活もできる!
お金カレンダー

●経済イベントや株の勝ち方がわかる!
●ポイ活デーもわかる!
●権利確定月別の高配当株や桐谷さんおススメ優待株も!

◎連載も充実
日経平均5万円」が“高すぎ”ではない3つの理由 
◆次の1カ月何が起きる?プロが今の株式相場のポイントを解説!
高市政権への期待は続き日本株はさらに高値更新へ
◆10倍株を探せ!IPO株研究所2025年10月編
株高が続く状況下で新興株には警戒感が浮上
◆ZAi編集部の新人・ザイゼンがチャレンジ!目指せ!お金名人
家具レンタルはおトクなの?
◆17億円トレーダー・ジュンのFX成り上がり戦略
ポーカーに学ぶ攻略ポイント
◆連載・おカネの本音 デラさん
雑魚として生きる!うつの僕が辿り着いた緩く稼ぐための方程式
◆マンガ恋する株式相場「サナエノミクスで仕掛け時!?
◆マンガ「気が付けばアナタも対象に?自宅や株の上昇で相続税が発生する!
◆人気毎月分配型100本の「分配金」速報データ!
日米の株式相場では高値圏の推移が続き株式型が好調!

>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報