日経平均は2万9000円を回復。円安や日銀の金融緩和策の継続も追い風
日経平均は2万9000円台乗せ、昨年8月17日以来8か月ぶりの高水準に―。
ちょうどゴールデンウィークの狭間にあたる5月2日の火曜日。日経平均は2万9157円で取引を終えて、3日連続で年初来高値を更新した。為替は137円台後半まで下落し、ドル高・円安が鮮明となったことも追い風となった。日経平均の年初来パフォーマンスは+11.7%となり、2ケタの上昇率と好調である。一方、小型株の代表的指標であるマザーズ指数は+1.9%に留まっており、大型株と小型株のリターンの格差は歴然だ。
4月28日の日銀金融政策決定会合、5月3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)、そして5月4日の欧州中央銀行(ECB)理事会。相次いで日米欧の金融政策が発表されたが、見事に方向性が異なる結果となった。これらを簡単に整理しつつ、今後のマーケット動向について考えてみたい。
レビュー中でも日銀の金融政策の転換やYCCの修正は十分ありうる
まずは日銀の金融政策決定会合。植田和男新総裁が初めて議長を務めた会合では、大規模金融緩和策の継続が決定され、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)も現状維持となった。今も続いている金融緩和策について「今後1年から1年半をかけて多角的なレビューをする」と発表したため、レビュー中は金融政策の大転換はしづらいとの思惑から「金融正常化は遠のいた」との見方がこの日のマーケットでまことしやかに囁かれたが、これはかなり一面的な考え方である。植田総裁が記者会見の席で述べたように、レビュー中でも金融政策の転換やYCCの修正は十分ありうる。今回は金融緩和が維持されたため、株式市場は好意的に受け止めて、冒頭の「日経平均2万9000円台乗せ」をもたらす原動力となったが、次回6月16日(金)に開催される金融政策決定会合が注目される。
昨年12月に黒田東彦前総裁が突然発表したYCC修正は、フォワードガイダンスが全くなかった突然のサプライズ・イベントとなり、株式市場全体の大幅安と同時に、金融株だけがスポット的に急騰するという状況を生み出したが、YCCを再修正すれば同様のことが起こることは必至だ。米国発の金融不安を受けて、日本の金融株もとばっちりを受けて株価を大きく下げてパフォーマンスの期待値は低下したかのように見えるが、息を吹き返す可能性が大いにある。そういう意味においても、日銀の金融政策からはしばらくは目が離せない。
米国は0.25%利上げ。米銀破綻で金融不安高まる中、インフレ抑制を優先
次に米国のFOMC。こちらは事前予想通りとなる0.25%の利上げを決定。相次ぐ米銀の破綻で金融不安が高まっているが、インフレ抑制を優先する形が取られた。今回の利上げで米連邦準備理事会(FRB)の政策金利は5.00%~5.25%の水準にまで引き上げられた。2022年3月にゼロ金利を解除して以降、10回連続となる利上げであり、これでリーマン危機前の利上げの到達点に並んだことになる。2007年8月以来、約16年ぶりの水準だ。利上げスピードにおいては過去最速ペースである。
FRBのパウエル議長は記者会見で「銀行システムは健全で強靱だ」と述べるとともに、次回6月に開催されるFOMCで追加利上げの余地を残しつつも、利上げ打ち止めの可能性を示唆した。一方で、Fedウオッチに見られるマーケット参加者予想による年後半の利下げ転換については改めて否定している。このあたりのFRBの姿勢とマーケット予想のギャップは昨年からすでに存在しており、ある程度は致し方のないことだ。
米国の利上げ政策はほぼ終局。焦点は景気減速や企業業績悪化の度合い
言えることは、利上げ政策がほぼ終局を迎えていること。それをポジティブに捉えるかどうかは、結局今後の景気減速および企業業績悪化の度合いがどこまで許容範囲にとどまるかどうか、という点に尽きると思う。ここでもマーケットは「景気減速になれば、金融緩和で利下げだ!」という楽観論と「金利の高止まりで景気&業績悪化、株式市場に逆風だ!」との悲観論が揺れ動く展開が続いてきた。マーケットサイクルで現状の相場を確認すると、金利上昇に苦しめられてきた逆金融相場は終了し、政策金利の高止まり&景気悪化で逆業績相場に移行するという流れになっている。
金融不安前は「悪いニュースこそ、株式市場にとっては株価上昇のための良いニュース」、すなわち「Bad news is good news」という解釈だったが、金融不安後は「悪いニュースは、株式市場にとっては株価下落の悪いニュース」という「Bad news is bad news」に変化しているという見解を第79回のコラムで述べた。この変化こそが逆業績相場の典型的な特徴であり、景気減速による金利低下や企業業績の悪化は売りの要因になる。まさに、マーケットはいよいよ逆業績相場の様相が強まってきたという実感だ。同じ現象でも解釈が異なってくる。これまでとはちょっと違う発想の転換が求められる。非常に重要な点だ。
米国はインフレピークアウトの認識も、欧州ではインフレ上振れを警戒
そして、ECB理事会。0.25%の利上げを決めたが、利上げ幅は前回3月までの0.5%から3会合ぶりに縮小した。今、欧州ではストライキが相次いでおり、賃上げによるインフレ加速への警戒が非常に根強い。ECBの政策金利は3.75%になったが、ラガルド総裁は記者会見で「今後のインフレの見通しはまだまだ先が長く、高水準の状態が続く」述べ、「利上げは止めない」と強調した。これはFRBとは大きく異なる点である。米国ではインフレがピークアウトとの認識が広がっているが、欧州ではまだ今後上振れが警戒されている。要するに、逆金融相場の様相がまだ続いているということである。
5月第1週のNYダウは木曜日時点で971ドル安(-2.8%)と大きく下げているが、日経平均は冒頭で述べたように年初来高値を更新中である。逆業績相場において日本市場は非常に善戦していると言える。一方で小型株は不振が続いており対照的である。だが、米国市場や米国の金融政策に大きく影響を受ける日本市場においては、やはり年後半からは利下げを意識した「金融相場」の兆候が出てくると私は見ている。これは2023年の年頭で述べた「今年は、年前半は逆金融相場&逆業績相場で苦戦、年後半は金融相場の兆候が出てチャンス」というシナリオ通りの展開だ。今から、それに備えて準備をしておく必要がある。特に2022年に大きく値下がりして冴えなかった小型グロース株は復調する可能性がある。
「勝者のポートフォリオ」は5月も好調持続。10日にWebセミナーを開催
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」。先週は3月9日以来となる日々ベースでの過去最高値を更新。先々週の4月最終週において週間&月間ベースで過去最高値を更新していたが、5月に入っても好調が続いており、先週の年初来高値は6銘柄となった。非常に手応えを感じている。
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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。
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