「勝者のゲーム」と資産運用入門

米国の雇用減速が顕著。逆業績相場の様相が強まる。
3月の金融不安を境に「Bad news is bad news」に。
5月開催のFOMC決定とパウエル議長会見に要注目!太田忠の勝者のポートフォリオ 第79回

2023年4月12日公開(2023年4月12日更新)
太田 忠
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米国の雇用減速が顕著。マーケットはどう反応するのか?

 米国の2月の求人件数は993万件と減速が顕著に―。

 米労働省が4月4日に発表した2月の雇用動態調査(JOLTS)によると、非農業部門の求人数(季節調整済み、速報値)は993万人となり、予想の1050万人を大幅に下回った。米国の求人数は2022年3月の約1203万人をピークに減少傾向にあり、900万人台に落ち込むのは2021年5月以来である。また、4月5日に発表された3月のADP雇用リポートでは雇用者の増加が14.5万人と予想の21万人を下回り、4月6日に発表された週間の新規失業保険申請件数は+22.8万人と予想の+20万人を上回った。さらに4月7日発表の3月の雇用統計では+23.6万人と予想の+24万人とほぼ同じだったが、1月の+47.2万人、2月の+32.6万人と比べて明らかに減少傾向で、米国の雇用減速が顕著になってきている。「これを株式市場がどう解釈するか? という視点で冷静に観察すれば非常に興味深い変化が見られる」というのが今回のコラムのテーマである。

 米国マーケットの動きについては「楽観論」と「悲観論」が週替わり、月替わりで交錯して繰り返されている、と私はこれまで度々コメントしてきた。

金融不安を境にマーケット心理は「Bad news is bad news」に変化

 楽観論が優勢となる局面では、「間もなく利上げは打ち止めになり、年後半は利下げだ!」「もう利上げはなくこれから利下げだから、株価の上昇は金融相場の先取りだ!」「長期金利の低下は株式市場に追い風だ!」というロジックが働く。一方、悲観論が優勢となる局面では「インフレ退治のため、年内に利下げ転換はない!」「金利は高止まりで当面利下げなし、金融相場は来ない!」「まだまだインフレは強い、株は売られる!」「金利上昇で景気&業績悪化、株式市場に逆風だ!」というロジックだ。この楽観論と悲観論が揺れ動く展開が継続してきた。

 マーケットサイクルで現状を確認すると、金利上昇に苦しめられてきた逆金融相場はそろそろ終了し、政策金利の高止まり&景気悪化で逆業績相場に移行するという流れになっている。この流れの中でも「楽観論と悲観論が揺れ動く展開」が継続してきたが、3月の金融不安を境に少し様相が変わりつつあるのが正直なところだ。「Bad news is good news」という言葉があるが、金融不安前は「悪いニュースこそ、株式市場にとっては株価上昇のための良いニュース」というニュアンスが強かったが、金融不安後は「Bad news is bad news」という形で「悪いニュースは、株式市場にとっては株価下落の悪いニュース」に変化しているように思う。

5月3日開催のFOMCでの金融政策決定とパウエル議長会見に要注目

 金融不安によって米国の逆イールドは随分と縮小した。長期金利の10年金利から短期金利の2年金利を引いたイールドギャップは金融不安前は-1.0%を超える水準まで拡大していたが、金融不安後は一時-0.4%にまで縮小した。金融不安の高まりで米連邦準備理事会(FRB)はこれ以上政策金利を上げることはできず、むしろ今年の後半は利下げする可能性が高まった、との見方が広がっているからだ。とはいうものの3月22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でパウエル議長はインフレ退治と金融不安の狭間で「0.50%の利上げ? それとも利上げの停止? 果たしてどっち?」という難しい判断を迫られる中、0.25%の利上げを実施した。FRBによる2023年末の政策金利の想定(中央値)は5.10%に据え置かれたので、FRBは0.25%の利上げをあと1回する予定だ。金融不安前は「さらなる利上げもありうる」とのマーケットの見方は今や「年後半は利下げだ」に変化した。次回の5月3日に開催されるFOMCでの金融政策決定ならびにパウエル議長の記者会見はいつになく注目を集めることになりそうだ。

 ここからが重要な話だが、今後のマーケットにおける懸念点は従来通りのロジックである「金融不安による金利低下から、金融不安後退による金利上昇へ再び転じる」ことがマイナス解釈されるのは同じだが、金利低下もマイナスに意識されたり、景気悪化による業績不振や下方修正の続出もマイナスに意識されたりする「Bad news is bad news」の受け止め方が増えることだ。

 これはまさに逆業績相場の典型的な特徴であり、景気減速による金利低下、企業業績悪化は売りの要因になる。まさに、マーケットはいよいよ逆業績相場の様相が強まってきたという実感だ。なので、これまでとはちょっと違う発想の転換が求められる。同じ現象でも解釈が異なってくる。

FOMC直後の5月10日にWebセミナーを開催。年後半の投資戦略を展望

 さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」では4月5日水曜20時より毎月恒例のWebセミナーを開催した。今回で17回目となった。テーマは『金融不安を乗り越えて ― この先の相場展開を読む』。

 平日の夜、しかも春休み&入学式のシーズンにも関わらず、実に206名もの多くの皆さまにご参加いただいた。現状の投資戦略、投資の注意点、大きな上昇が期待される個別銘柄についてもバッチリと解説。予定終了時刻は21時半にもかかわらず、Q&Aでは100問近くの活発な質疑応答が繰り広げられ、セミナーは22時半まで延長。厳しい相場にもかかわらず大いに盛り上がった。セミナーの録画動画は有料会員ならいつでも視聴できるので、リアルに参加できなくても支障はない。次回のWebセミナーは5/10(水)20:00より開催予定である。会員限定だが、10日間無料お試し期間中でも参加可能。セミナー当日14時までのお申込み(15時URL配信)。次回も多くの皆さまのご参加をお待ちしております。

●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。

※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。

 

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