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なぜ、バフェットは日本の商社株に投資したのか?バフェットは銀行株をまだ買わない。バークシャーの株主総会でわかったことは?

2023年5月11日公開
ポール・サイ
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 先週末の5月6日、ウォーレン・バフェットが率いる投資会社バークシャー・ハザウェイが株主総会を開催しました。私も現地へ行って参加したかったのですが、時間がなく、インターネットでライブ配信を見ることにしました。かなりの盛況で、いつかは現地で参加したいと思いました。

 今回はバークシャーの株主総会の内容から、日本の個人投資家が投資戦略の参考にできるポイントをご紹介したいと思います。

バークシャー・ハザウェイの株主総会配信サイト(米CNBC)バークシャー・ハザウェイの株主総会配信サイト(米CNBC)

1.銀行クライシスはまだ解決していません

 銀行は人の心理に左右されることが多いです。政治家や規制当局のコミュニケーションが悪かったとバフェットは言っていました。しかし、バフェットは政治家や規制当局が銀行システムを破綻させるわけはないと思っています。

 預金者は心配ないですが、銀行株に投資するかどうか、タイミングはまだ来ていないというニュアンスのことを言っていました。私も銀行の問題はしばらく解決しないと思っています。

 いつもこういうクライシスになると、バフェットはいいディールをするはずです。今まではそうでした。しかし、今回は彼が意外におとなしかったです。銀行株に投資するタイミングはまだ来ていないと思います。これから預金が流出するリスク、預金コストが上がるリスクはまだ高いと思います。

2.過度に悲観視されている石油業界にいい投資先はあります

 地球温暖化については、まだわからないところが多いです。

 石油を含む化石燃料の依存度はいまだに高いので、再生可能エネルギーは石油を節約するというぐらいの考え方で見るべきです。

 シェールオイルの油井は、その約半分が生産できる期間が短いのです。それらは1年ちょっとで枯渇します。テクノロジーが進歩しないと、生産できない原油が結構あるということです。なので、新しく生産できる油井が見つからなければ、アメリカの原油生産量は一気に半分になります。

 アメリカが十分な量の原油を生産できるのは、長期的に約束されたことではないのです。原油の生産、エネルギー政策は政治問題化されていて、必ずしも合理的ではない政策が行われています。このような状況の中、バークシャーは合理的なことをすると言いました。

 これらのことから、個人投資家はどう投資戦略を考えればいいのでしょうか?

 私は石油株、エネルギー株を持つことを考えるべきだと思います。地球温暖化の懸念などで、石油株は過度に悲観視されています。

 バフェットはそこにチャンスがあるという考え方なので、米国では石油会社へ投資しています。日本では同じ理由で商社に投資しました。

3.商業用不動産は心配です

 商業用不動産(CRE)向けの融資はかなりたくさんあり、アメリカの都心の空洞化によって、不良債権がたくさん出そうだとバフェットは話していました。

 私はストックボイス社の経済・マーケット番組「WORLD MARKETZ」で先日、同じことを話しました。特にオフィスは良い状況ではありません。このことは銀行にとって良くないのと、REIT(不動産投資信託)にとっても良くないです。REITと地銀はとりあえず様子見するべきだと思います。

[参考記事]
米大手銀行(JPモルガンなど)の決算発表開始! 金利が魅力的なMMFに、銀行の預金が流れ込み、地銀だけでなく大手銀行にもダメージ!

4.バフェットの日本への投資から示唆されるポイントは?

 バフェットは地政学的なことについて結構語っていました。

 アメリカと中国が戦争するといいことがない、バカだと言いました。そうしたことを言いながら、台湾のTSMCに投資していましたが、1ヵ月ほどで売却しました。特に個別具体的な理由はなく、リスク感覚による決断と言っていました。

 そして、台湾よりも日本の会社を保有した方が安心だと話していました。バークシャーは日本の商社株をたくさん持っています。その1つの大きな理由は、日本円でかなり低コストの資金を調達しながら、その資金で購入した商社株のバリュエーションは低く、配当利回りはいいということで、鞘を稼げるということでした。

 私から見ると、この話には個人投資家にとって2つのポイントがあります。

 地政学的なリスクはあります。その点は台湾より日本の方が安心ですが、日本が安泰と言えるわけでもありません。商社などのグローバル企業に投資した方が、分散ができていいと思います。

 それと、バフェットは低コストで日本円を調達できているということがポイントです。なので、日本円でグローバル企業を安く買えるならばいいと思います。日本のみなさんの多くは、日本円の保有比率が高いと思いますが、そのような人は為替のリスク分散という意味で、海外投資、グローバル分散投資をすべきだと思います。

 結論を言うと、バフェットからのヒントを受けて言えることは、銀行、不動産(特にオフィス)は避けながら、石油・資源業界を過度に悲観視せず、グローバル投資によって、為替リスクをヘッジし、リスク分散を図るべきということです。

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。

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