バイデン大統領がG7サミットを欠席を賭してまで取り組む債務上限問題とは?
バイデン米大統領が広島で開催されるG7サミット(主要7カ国首脳会議)を欠席する可能性に言及―。
皆さんもご存知のように、今米国では債務上限問題を巡って与野党の激しい攻防が繰り広げられている。5月9日にバイデン大統領は共和党のマッカーシー下院議長とホワイトハウスで会談したが合意には至らず、冒頭に述べたG7サミット欠席(オンラインのみでの参加)を言及せざるを得ない状況になっている。
米国の債務上限問題とは何か? それは米国政府が政治や行政サービスなどをするにあたって、債務すなわち借金の上限を決めており、規律なく国債を発行したり資金を無駄遣いしたりしないようにしている。現在、米国の債務は31兆ドルを超え(日本円で4000兆円超、ちなみに日本の債務は1000兆円強)、すでにルールで決められている上限に達しており、6月1日までに上限問題を解決しなければ債務不履行、すなわちデフォルトが起こる状況になっている。
問題を解決する手段は2つある。ひとつは一時的に上限の停止をおこなうこと、そしてもうひとつが上限そのものを引き上げることである。これをおこなうためには議会で合意されなければならず、タイムリミットを過ぎれば米国政府は資金繰りに行き詰まって米国は破綻するという由々しき事態である。
債務上限問題の解決に手こずるのは民主党と共和党の政治スタンスの違い
米国の破綻は誰も望んでいない。しかし、なかなか与野党の合意形成ができないのは民主党と共和党の政治運営に対する姿勢が正反対だからだ。すなわち、民主党は財政出動を積極的におこなって国民生活を支えたいという「大きな政府」が基本的なスタンス。一方の共和党は民間の活力を生かして財政出動を必要最小限に抑える「小さな政府」を目指している。民主党のバイデン大統領は債務上限の引き上げを目指しているのに対し、共和党は大規模な歳出削減を求めているため、トップ同士の対談は平行線になっている。そもそも問題を引き起こしている原因は、昨年の米国の中間選挙にある。共和党が下院で過半数を獲得したため、「上院は民主党」「下院は共和党」というねじれが生じてしまった。仮に民主党が下院でも勝利していたならば、債務上限問題は起こらなかったのだ。
実はこの問題は今に始まったわけではない。トランプ前大統領の時代にも、さらにオバマ元大統領の時代にも発生しており、いずれもタイムリミットで解決を迎えることができず、政府機関の一部が閉鎖された。職員に給料を支払うことができず、国防や医療などを除いて政府のサービスが止まってしまった。さらに資金繰りが行き詰まると、米国債の利払いが滞ってデフォルトを迎える。債券市場は大混乱し、他の金融市場にも波及して世界中が大きな悪影響を受けることになる。「米国が破綻した!」「こりゃ大変だ!」と大騒ぎになること必至である。
実際、2011年には債務不履行の懸念から米国債が格下げされ、マーケットが混乱に陥ったことを覚えている方も多いだろう。前FRB議長のイエレン財務長官は「問題が解決されなければ、経済と金融の壊滅的な破局になる」「世界的な景気後退の火種になる」「世界経済における米国のリーダーシップが損なわれ、国家安全保障上の利益を守る能力にも疑問符が付く」とコメントしており、大きな緊張感を持っていることがわかる。
深刻な問題だが過度な心配は不要。政争の具であり最終的には解決される
「太田さんはこの問題をどうお考えですか?」とよく聞かれるようになったので、私の立場を答えておくと「結局、問題は解決されるので、あまり心配することはない」である。少なくとも、現在の金融市場において金利が急上昇したり、米ドルが大きく売られたり、株式市場が先回りして急落したりということは起こっていない。極めて冷静な動きをしており、慌てふためく気配はない。
なぜなら、米国の債務上限問題はいつも最終的には解決されており、議員たちは「米国破綻」の道は選ばないからだ。議員たちはあくまで政争の具、すなわち政治の駆け引きとしてこの問題を扱っているのだ。ギリギリまで戦うポーズを見せながら、結局最後は妥協点を見出す形になる。もし、お互いに妥協せずに米国破綻の道を選べば、米国は世界一の経済大国の座を自らぶち壊し、国民の生活を破壊し、大批判を浴びることになる。
5月10日開催セミナーは193名参加で大盛況。次回は6月7日開催予定
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」。先週は日々&週間ベースでの過去最高値を更新した。5月に入ってからも好調が続いており、先週の年初来高値は11銘柄となり先々週の6銘柄から大幅に増加した。非常に手応えを感じている。
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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
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