「勝者のゲーム」と資産運用入門

日経平均は3万円台回復で33年ぶりの高値欧米市場に比べて割安な日本株の上昇は、まだ通過点。個人投資家は投資行動を改めて恩恵を享受せよ!太田忠の勝者のポートフォリオ 第85回

2023年5月24日公開(2023年5月23日更新)
太田 忠
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バブル崩壊から33年ぶりの株高。個人投資家は恩恵を享受できている?

 先週の日本の株式市場はまさにお祭りムードのような雰囲気だった。日経平均株価は2021年9月14日につけたバブル崩壊後の日中高値3万795円を更新して3万808円をつけ、1990年8月以来となる33年ぶりの水準を回復した。TOPIXも同様の動きを見せている。

 1990年と言えば、ちょうど私が第一證券(現、三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に入社して3年目の年。前年の1989年12月29日の大納会をピークにバブルが弾けて、株式市場が一気に冷え込み始めた時期に当たる。日経平均の最高値は3万8957円。現状の株価水準からはまだ26%上の水準であるが、私にとっては「ようやく振り出しに戻って来た」「失われた33年を挽回しつつある」との感慨が深い。皆さんもご存知のように、日経平均は2008年10月28日に6994円まで下落した経緯がある。底値を付けるまで18年、底値から這い上がって今の水準に戻すまで15年もの年月を要している。

 今年初めの日経平均はちょうど2万6000円のレベルだった。そこからわずか5ヶ月で5000円近くも上昇している。個人投資家はさぞかし儲かっているだろうと思いきや、現実はそうではないようだ。果たして皆さんはどうだろうか? 投資行動をいくつかのパターンに分類してみよう。

投資行動別にパフォーマンスを考察。あなたはどれに該当する?

①「新興銘柄や小型グロース株」重視派

 個人投資家に非常に多いのが値動きの軽い新興銘柄や小型グロース株への積極的な投資だ。確かに金融相場における金余りでバリュエーションを気にしない相場なら、こうしたイケイケ投資は短期間で儲かるが、今はまだ逆金融相場から逆業績相場に移行したばかりの局面。このような相場での株価上昇は期待薄どころか、業績悪化で急落する銘柄が目立っている。年初からのマザーズ指数のパフォーマンスは+2.3%に過ぎず、日経平均の+18.1%と比較して全く冴えないのは一目瞭然だと思う。

②「大型株」重視派

 こちらは最も報われているタイプ。やはり投資の王道は、「経営基盤がしっかりしていて、収益が伸びている大企業」への投資である。このところ低PBR(株価純資産倍率)株や主力半導体株などの活躍が目立っている。回転売買が少ない人ほどパフォーマンスが良いという傾向が出ていると思う。

③「早々に利益確定売り」派

 日経平均が2万8000円を超えたあたりで利益確定売りをした人が多い。これは投資家別動向をみればよく分かるが、2万8000円を超え始めた4月14日の週から5週連続で個人投資家は売り越しとなっており、その金額は1.37兆円にも上っている。一方、海外投資家は3月31日の週から7週連続で買い越しており、その金額は2.88兆円と物凄い勢いである。日経平均が33年ぶりの高水準まで上昇した今、「あー、早く売り過ぎた」という後悔の念の強い人たちが数多くいる。いったん降りてしまうと、なかなか高値では買えなくなってしまうのがつらいところだ。

④「金融不安や米国破綻に怯える」派

 「金融不安でリーマンショック並みの暴落が来る!」や「米国破綻で株価は暴落する!」などSNSでの書き込みや怪しげな評論家のコメントやデマのような噂に怯えて、保有株を売却したり、投資を控えたりしている。そういう人たちに向けて私はコラムで「日本の銀行株は問題なし」「大暴落は来ません」「安心してください」と言い続けてきたが、怯える派はもっと冷静な判断力を養う必要がある。

⑤「先物ショートやインバース型ETFへの投資」派

 これはもう壊滅的にヤラれているはずだ。先週の1週間だけでも日経平均は1400円も上昇している。「もうそろそろ下がる」や「割高感が出てきた」との勝手な思惑で猛烈な上昇相場に対して売りポジションを持つと、一気に大きな損失を被ってしまう。

⑥「やっぱり米国株でしょう」派

 米国株はGAFAMなどごく一部の銘柄の上昇しか起こっておらず、しかも割高な株をさらに割高に買っていくというゲームになっている。過熱の中での投資行動に支えられているため、いびつな株価形成になっている。米国市場は日本市場に比べると高金利&高インフレ&厳しい企業収益という三重苦を抱えている。かなり条件が悪そうだ。

日経平均3万円は通過点。ドル建てでは直近高値20%下にあり上値余地

 今、日本株に大きな流れが来ている。従来なら「日本企業は成長しない」「日本企業は株主還元に乏しい」「日本企業は割安で当たり前」「だから買っても意味がない」との見方が海外投資家のみならず、日本の個人投資家たちを支配していたように思う。それが東証による低PBR是正のムーブメントにより、その状況から脱却しようという銘柄が大企業を中心に続々と出ているのだ。そもそも欧米市場に比べると割安すぎる日本市場。これはもう疑いの余地がない。したがって、新たな潮流が起こっているのなら、日経平均3万円は通過点に過ぎず、投資を考えるべきだと思う。

 NYダウから日経平均を引いた単純株価格差は一時8000ポイントも開いていたが、今や3000ポイントを切るレベルにまできている。では、これで買われ過ぎか? といえばそうではない。日本人にとっては、過去の高値だったバブル期とのバリュエーション比較をすれば明白だと思う。その状況を踏まえた上で、外国人投資家からすれば日本人とは違う景色が見えるからだ。それは彼ら彼女らが投資をする際のドルで見た「ドル建て日経平均」の姿である。今ちょうど2021年9月のバブル崩壊後の高値を更新したものの、ドル建て日経平均だと株価はまだ20%も下のレベルにある。個人投資家もドル建て日経平均には常に注意を払っておいた方がよい。

「ごちゃごちゃトレード」は厳禁。安値売りの高値買戻しを招くだけ

 最後に、皆さんへのアドバイスがある。それは「ごちゃごちゃトレードしない」ということだ。私に多数寄せられた質問の中に「金融不安だからいったん売って、安くなってから買い戻したい」とか「米国の債務上限問題でマーケットが下がると思うので、いったん売ってから安く買いたい」というのがあったが、自分の思い通り都合のいいことは起こってくれない。結局、安値で売ってしまい、高くなって買い戻せないという結果を招いてしまう。

 さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」。先週も日々&週間ベースでの過去最高値を更新した。年初来高値は15銘柄とポーフォリオ組み入れ銘柄の半分以上が該当し大活躍している。

 その中には銀行株も含まれており画期的である。欧米の金融不安でとばっちりを受けた日本の銀行株。一時は相当下落したが「日本の銀行株は問題なし」「安心してください」「安くなれば買いチャンス」と私が言っていた通りの展開である。きちんと息を吹き返してきた。

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 また1銘柄の新規投資もおこなった。この銘柄は2024年3月期の営業利益が過去最高を更新する計画にも関わらず、高値から半値以下になっているちょっと変わりダネである。株価的には明らかに底入れしているので、これから大いに期待できると思う。

 まだ逆業績相場である。思わぬ季節外れの「お年玉」をもらったかのようであるが素直に受け取っておくことにしよう。このところ毎週過去最高値を更新しているが、ここからさらにパフォーマンスを積み上げていきたいと思う。

 「勝者のポートフォリオ」では毎月恒例のWebセミナーを開催している。会員限定だが、10日間無料お試し期間中でも参加可能。次回は6月7日(水)20時からの開催予定である。誰でも参加できるので、興味のある方はぜひ一度顔を出していただきたいと思う。

●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。

※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。

 

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