NVIDIAが時価総額が1兆ドル超え! 今後の見通しをシアトル在住FIRE組がたっぷり解説。周辺の会社でオススメできる銘柄は?
2023年5月30日(火)、米国・シアトルからメルマガ&オンラインサロン「米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている元フィデリティ投信トップアナリストのポール・サイさんが、ストックボイス社が手掛ける経済・マーケット番組「WORLD MARKETZ」(TOKYO MX 月~金 22時~23時)に生出演した。
前回の放送では、米国の債務上限問題について、マーケットがどれくらい深刻に受け止めているのかを、ポールさんに詳しく解説してもらい、地銀の預金流出問題も踏まえたうえで、日本人が何に投資をすべきなのかをオススメしてもらった。
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そして、今回の放送で主に注目したのが、5月に時価総額が1兆ドルを超えたNVIDIAだ。NVIDIAの社長は台湾系アメリカ人なのだが、5月にアジア系アメリカ人への注目が高まる理由をまずは紹介。NVIDIA急騰の背景や今後の見通し、周辺の会社でオススメできる銘柄についても、たっぷり語ってもらったので、さっそくチェックしていこう。
5月の決算に注目が集まったNVIDIAの社長はアジア系アメリカ人。「アジア・太平洋諸島系米国人の文化遺産継承月間」にも重なった
番組冒頭、アシスタントの木村カレンさんが初めに聞きたかったことが、NVIDIAの株価上昇の話題だ。
NVIDIAの社長が、ポールさんと同じ台湾系アメリカ人の、ジェン・スン・フアンさんであることに注目しているかとの質問に、ポールさんが紹介したのが、米国で5月に行われる「アジア・太平洋諸島系米国人の文化遺産継承月間」だ。
この「アジア・太平洋諸島系米国人の文化遺産継承月間」というのは、アジア系アメリカ人によるアメリカへの貢献や活躍を祝う月間のこと。
NVIDIAの社長もアジア系アメリカ人であり、決算に注目が集まった5月という月間にも、ちょうど重なったとのことだった。
そんな「アジア・太平洋諸島系米国人の文化遺産継承月間」は、1843年5月に初めて日本人移民が米国に到着したことと、1869年5月に、多くの中華系移民が携わって大陸横断鉄道が完成したことを記念して、設定された月間だそう。
第二次世界大戦時は、白人社会のイメージだったアメリカも、現在はかなり多様化してきているとポールさん。
アメリカ副大統領のカマラ・ハリス氏はインド系アメリカ人、アメリカ通商代表のキャサリン・タイ氏は中華系アメリカ人というふうに、経済、政治などいろいろなところでアジア系の人が活躍しており、アジアへの関心度や親和度が全国的に高くなっているそうだ。
その一環で、日本食やアニメといった日本文化への注目も高くなっていて、円安の恩恵も受けて、アメリカ人が日本に観光に行くようになっているようだ。
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現在のAIはインターネット初期の感覚に似ている。不確定要素もあるが、これから何年も長い時間をかけて、社会、経済、政治に影響が出てくる
続いて、スタジオMCの渡部一実さんから、NVIDIAの株価に関する質問が飛ぶ。
NVIDIAは5月の決算やガイダンス(来期以降の決算に対する企業側の見解)がよくて、株価が急騰して時価総額が1兆ドルを超え、バリエーション(企業価値評価)も高くなっているけれど、この勢いをどう見ているかと聞かれたポールさん。
ポールさん曰く、NVIDIAは今回、AIの材料で上昇していて、現在のAIは、1990年代後半にインターネットができたばかりころの感覚に似ているとのこと。AIが大きな話題になってまだ数カ月しかたっていないため、まだこれから何年も長い時間をかけて、社会、経済、政治に影響が出てくるとみているようだ。
現在のAIがインターネット初期と考えると、この技術がどうなるかわからないという不確定要素があり、影響が大きいのはわかるけれど、どういう風に影響してくるかを市場はまだ模索中とのこと。
もっとも、今回のNVIDIAの上昇は、ショートカバーというよりは、みんないいと思って買いに行っているとポールさん。
データセンターのインフラ設備が従来のCPUから、DPUといった加速コンピューティングに切り替えなければいけない需要と、AIに対応するための、全体的なパソコンのアップグレードがこれから見込めるので、しばらくはいいと考えているようだ。
不確定要素の面などからボラティリティが高く、急上昇した反動で下落することもあり得るけれど、これからのAIのトレンドは変わらないと思うと答えてくれた。
NVIDIAとビットコインとの連動性はおそらく、かなり弱くなりそう
次に、渡部さんが気になっていたのは、NVIDIAとビットコインの連動性が低くなってきていることだった。
AIの話が出る前まで、NVIDIAとビットコインの連動性が高いと言われていて、チャートを見比べてみると、途中までは連動していたものの、AIの話が出てくると、連動性が低くなってきていることが確かにわかる。
このことについて、ポールさんはまず、NVIDIAが得意とする画像処理のチップの仕組みについて説明してくれた。
画像処理のチップは人間の脳細胞と似たような仕組みで、神経を並行に並べて処理するシステムであり、AIにもビットコインのマイニングにも必要になるものだという。
NVIDIAとビットコインが連動していたのは、ビットコインの価格が高いときに、マイニングのためのデータセンターの需要が高まったからというのが、理由の1つ。
別の理由としては、NVIDIAが、ビットコインや暗号資産に直接賭けられないときの代替投資先となっていたから、ということも挙げられるようだ。
ただ、これからはAIの需要がもっと出てくるため、NVIDIAとビットコインとの連動性はおそらく、かなり弱くなるのではないかとポールさんは見ている。
NVIDIA周辺の注目銘柄は、大きいソフトウェアの会社。Adobe、アマゾン、マイクロソフト、グーグル、TSMCなどがいい
続いて、NVIDIAの周辺で、注目している銘柄について聞かれたポールさんは、大きい会社で、ソフトウェアの会社がいいと答えた。
まず、AIがもたらすこれからの影響はまだはっきりしていないけれど、大きな変化が幅広く出るのは間違いないため、大きい会社がいいとのこと。
そして、AIはソフトウェアであり、現実世界で実際になにか変わらなくても、ソフトウェアの変化だけでも恩恵が受けられやすいため、ソフトウェアの会社がいいとのことだった。
そんな大きいソフトウェアの会社として、ポールさんが具体的に挙げたのがAdobeだ。
Adobeで画像処理する場合、いままで何十分もかかったものが、AIを使って数分間で自動的にできるようになったため、最近注目されているそう。
また、先ほども書いたとおり、現在のAIはインターネット初期のようなレベルであり、NVIDIAのチップが浸透することによって、AIのレベルが上がるため、Adobeに限らず、アマゾン、マイクロソフト、グーグルなどが飛躍していくのではないかと、ポールさんは考えているようだ。
そのほかだと、台湾のTSMCも、NVIDIAと密接な関係にあるという意味でよさそうとのこと。TSMCは、台湾の地政学の問題で少し安くなっており、PERが20倍以下で割安感もあるようだ。
一方、NVIDIAのPERは46倍くらいと割高だけれど、競合もほとんどないため、結構先行してしまっているという。
NVIDIAを昔から保有していたポールさん。なにもないところから、すごく上昇する最先端の会社を多く保有していたからこそ、FIREを達成できたのかも
ここで、渡部さんが「やらしい話だが、ポールさんはNVIDIAをお持ちでしょうか」と質問。
これに対し、ポールさんは、NVIDIAを昔から保有していたことを明かした。実は、ポールさんがメルマガで推奨しているポートフォリオにも入っているため、ポートフォリオのパフォーマンスもよいようだ。
そもそもポールさんは、ビットコインには強気ではなかったものの、パソコンやIoTには画像処理が不可欠だと考え、画像処理には強気だったとのこと。AIがここまで進化するのは予想できなかったけれど、うれしい誤算だったとホクホクしていた。
そして、ポールさんは「アメリカ株で最先端の会社は、なにもないところから、すごく上昇するものが多い」と結論付けた。
なにもないところから、すごく上昇する最先端の会社を多く保有していたからこそ、ポールさんはFIREを達成することができたのかもしれない。
大統領選がまたしても、年寄りのバイデン氏とトランプ氏の争いになって心配
最後はマーケット全体の話題に。
アメリカの債務上限は一応クリアしたということになっているけれど、ほかに考えられるような不安要素があるのか、渡部さんが聞いてきた。
まず、債務上限については最後の最後まで来ていて、法案は通ると思うとポールさん。通らないとマーケットはがっかりするし、政治家にもツケが回ってくるため、おそらく通らないことはないと思うとコメントした(編集部註:6月2日に上院で可決済み)。
それ以外に、ポールさんが心配しているのは、またしてもバイデン氏とトランプ氏の争いになりそうな大統領選だ。
ここから、バイデン氏とトランプ氏に対する、ポールさんの遠慮のない人物評が始まる。
バイデン氏は左翼であり、独禁法の強化などビジネスにはフレンドリーでなく、結構年寄りとのこと。
トランプ氏も年寄りだが、バイデン氏から見ると若く、減税などビジネスにフレンドリーなのはグッド。ただ、地政学やいろんな不確定要素が出るので、あまりウェルカムではないとのこと。また、トランプ氏が大統領になる可能性は、賭けサイトでは3割以上と意外に高いそうだ。
そんな年寄りのバイデン氏とトランプ氏だけの大統領選になっていることを、アメリカ人は心配しているらしい。
それでは、若い政治家が全然いないのかというと、そうでもないという。
フロリダ州知事のデサンティス氏や、カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム氏など、若い政治家はたくさんいるけれど、資金集めが上手で、知名度もある従来の人がいると、新しい人がなかなか出にくいという構図のようだ。
例えば、JPモルガン社長のジェイミー・ダイモン氏の話も出てくるけれど、大統領候補にはならなそうとポールさん。
JPモルガンはかなり成功していて、みんなの評価は高いものの、左翼にとってはあまり魅力がないので、民主党の中では勝てそうにないとのことだった。
今のアメリカ社会や政治は分断している
そして、ポールさんは、今のアメリカ社会や政治が分断していることを憂いている。
カルチャーウォー(文化戦争)や、キャンセルカルチャー(著名人などの過去の言動を、主にSNSで糾弾し、社会から排除しようとすること)などによって、米国の社会に亀裂が広がっており、トランプ氏もそれを利用して人種主義をあおり、コロナ時に暴動も起こるなど、不安定になっているとのこと。
アメリカが多様化して、アジア系、黒人系、白人系、いろんな人がいるなかで、全体で1つのアメリカという考え方にはならず、分散してしまっていることを懸念していた。
ここまで、5月30日(火)放送の「WORLD MARKETZ」に電話出演した、ポールさんのマーケット解説を中心にお届けした。
冒頭でも紹介したとおり、ポールさんはメルマガ&オンラインサロン「米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている。登録後10日間は無料だ。米国株投資をしてみたい、すでにしているけどもっと現地からの情報が欲しい、ポールさんが推奨する個別銘柄やポートフォリオを見てみたいという人は、こちらをぜひ登録してみてほしい。
(ザイ投資戦略メルマガ)
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中
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