シアトル在住FIRE組のポールさんが、SVB破綻の生情報をたっぷり語る!
2023年3月15日(火)、米国・シアトルからメルマガ&オンラインサロン「米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている元フィデリティ投信トップアナリストのポール・サイさんが、ストックボイス社が手掛ける経済・マーケット番組「WORLD MARKETZ」(TOKYO MX 月~金 22時~23時)に生出演した。
前回、前々回と、イーロン・マスク氏が率いるスペースXの衛星インターネット「スターリンク」を駆使して、カリブ海のヨットからの生出演を果たしたポールさん。
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今回の放送は、普段生活しているシアトルからの出演となったのだが、カリブ海からシアトルに戻った感想は、曇りが多く「やっぱり寒い」とのこと。これから春に入り、だんだん暖かくなって、日が長くなるのを楽しみに待っているポールさんだった。
そして今回は、いま金融市場を席捲しているテーマである「SVB(シリコンバレー銀行)破綻」について、ポールさんに現地からの生情報をたっぷり語ってもらったので、さっそくチェックしていこう。
SVB破綻は与信リスクではなく、金利リスクによる破綻で、事情が特殊だった
まず、スタジオMCの渡部一実さんから、SVBの破綻をきっかけに、シグネチャーバンクやシルバーゲートキャピタルも連鎖的に破綻に追い込まれるなど、大変なことが起きていると、話題を振られたポールさん。
SVB破綻について、ポールさんは「事情が特殊だった」と見ているようだ。
SVBは、米金利の上昇により、保有債券の含み損が膨らんだことで破綻したのだが、ポールさん曰く、保有債券の多くが米国債などの優良債券であり、普通に満期を迎えられれば、元本も金利も返ってくる状況だったとのこと。
ただ、SVBの預金者はテクノロジー会社やスタートアップ会社が多く、テクノロジー会社の不況により、預金が過剰に流出。その資金不足を、保有債券の含み損確定や、資金調達で埋めざるを得なくなり、預金者が余計にパニックになったことで、破綻に追い込まれたようだ。
つまり、今回のSVBの破綻が、与信リスクではなく、金利リスクによる破綻だったというところに、「事情が特殊だった」とポールさんが評価するポイントがあるようだった。
日本の金利が上昇すると、日本の地銀が要注意となるワケは?
ここで、ポールさんが日本のみなさんに注目してもらいたいことがあるという。
それは、SVBの平均残存期間(保有債券の満期までの長さの平均)が6年ほどだったということ。
平均残存期間が長ければ長いほど、金利上昇によるネガティブな影響を受けるのだが、日本の地銀も、日本国債の平均残存期間が6年ほどであり、日本の金利が上昇すると、特に地銀は要注意だという。
それでは、日本の大手銀行はどうかというと、平均残存期間を減らしているので、金利上昇には強いとのこと。米国の大手銀行も同じ状況で、例えば、JPモルガンも平均残存期間を減らしており、米金利上昇による含み損をそんなに抱えていないとのことだった。
ポールさんの弟さんは、SVBのお客さんだった! それでも、ポールさんが少し心配するだけで済んだワケは?
そんなSVBの破綻は、ポールさんの身近にも大きな影響を与えていた。なんと、ポールさんの弟さんがSVBのお客さんだったというのだ。
ポールさんの弟さんは、スタートアップの会社をやっていて、SVBから数百万ドルを調達していたため、SVB破綻のニュースが出たとき、ポールさんも少し心配したという。
もし、記者に弟がいて、同じ状況になったとしたら、少しの心配どころか、心配し過ぎて夜も眠れない…ところだが、ポールさんが少し心配するだけで済んだのは、ある予想を立てていたからだ。
その予想というのは、米国の1口座あたり預金保護上限である25万ドルが撤廃され、25万ドル以上の預金も保護されるだろうというもの。弟さんにもその予想を伝えていたようだ。
ポールさんがそんな予想を立てられた理由―――それは、米国の政局にあった。
米大統領選を来年(2024年)に控えるなか、与党・民主党にとってカリフォルニアは重要な地盤であり、カリフォルニアの一部であるシリコンバレーのSVBを救いにいかないというのは、政治的にも経済的にもあり得ないと、ポールさんは踏んだのだ。
3月12日(日)には実際に、米財務省・FRB(米連邦準備制度理事会)・FDIC(米連邦預金保険公社)が、SVBとシグネチャーバンクの預金を全額保護すると発表。ポールさんの予想は見事、的中したことになった。
週明け、3月13日(月)のマーケットが乱高下し、預金全額保護とは言ってもパニックが収まらない可能性もあったけれど、3月14日(火)の株価が戻ってきたことで、これからはいい方向になるとポールさんは考えているようだ。
SVB破綻とリーマンショックの違いは、与信リスクがあるかないか
ここで、スタジオMCの渡部さんから、SVB破綻とリーマンショックの違いを質問されたポールさん。
ハイリスク・ハイリターンなジャンク債などが破裂したリーマンショックと比べて、SVB破綻では、米国債やMBSなど、商品として信頼性があるものの含み損が膨らんだものであり、意味合いが違うのではないかとの問いに、ポールさんも同意した。
リーマンショック時も金利は上昇したけれど、銀行が抱えているものの価値がどれぐらいあるか把握できず、どちらかというと与信リスクの問題だったとポールさんは指摘。
今回のSVB破綻に与信リスクはなく、金利上昇に対する経営陣の読み間違い、リスク管理の甘さ、パニックという3つの条件がそろったことで爆発したため、リーマンショックとは違うということだった。
銀行株は長期投資に向いていない
すると、渡部さんからすかさず、リーマンショックとSVB破綻が違ったものであり、大手銀行の株価も戻っているということは、個人投資家が銀行株を買ってもよいのかとの質問が飛ぶ。
渡部さんは「買ってもいい」という答えを待っている雰囲気だったが、意外なことに、ポールさんの答えは「銀行株は長期投資に向いていない」というものだった。
銀行株はなぜ、長期投資に向いていないのか。それは、ポールさんが先ほど話したとおり、銀行株は持っているものの価値がわかりづらい、ブラックボックスのようなものだから、だという。
そして、パニックが引き起こされると、数時間で何千億、何兆円の価値がゼロになる可能性もなくはないので、リスクが大きいとのこと。
逆に、銀行株は短期・中期の投資に向いているとポールさん。今回のSVB破綻で、銀行株はパニックになって過剰に反応したので、少し買ってもいいそうだ。
銀行株は景気がいいと上昇するけれど、これからは景気が良くない時期で、そのときに上昇の組み合わせだと、なにか問題は出てくるというのも懸念点。そのため、ポールさんの銀行株投資は短期・中期で、しかも少額でということなのだろう。
実物を作っている会社のほうが、株価の動きはゆっくり。個人投資家には向いている
銀行株が長期投資に向いていない理由について、ポールさんの解説はさらに続く。
銀行はパニックになると、普通の会社より悪くなるのがすごく速いというのだ。
最近の金融システムは効率が上がった分、パニックにもなりやすいうえ、テクノロジーの発達によって、悪い話が一瞬で広がってしまうとのこと。
個人投資家が、銀行のややこしい中身を把握するのは難しいし、毎日毎秒見ていられないということも、銀行株が長期投資に向いていない理由だという。
逆に言えば、iPhoneが一晩で売れなくなることはないし、これからみんな電気自動車だといっても、トヨタが一晩でつぶれることはないとのこと。
つまり、実物を作っている会社は比較的動きが遅く、ゆっくりな動きでも反応できるため、個人投資家には向いていると教えてくれた。
SVB破綻で金利は過剰に上昇しないとマーケットは見るようになり、テクノロジー株は狙い目
最後は、SVB破綻で金利が下がったため、テクノロジー株は狙い目なのかという話題に。
SVB破綻は悪いニュースだけれど、テクノロジー株にとっては、悪いニュースがいいニュースになるとポールさん。
SVB破綻によって、金利が過剰に上昇しないとマーケットは見るようになり、SVBの預金者も守られて、金利も安定すると、アップルやグーグル(現アルファベット)といったテクノロジー株はいいということになると結論づけた。
次回、4月4日(火)の放送では、ポールさんの予想どおり、SVB破綻の影響は落ち着いているのか、そして、テクノロジー株は上昇しているのか、引き続き様子を見ていきたい。
冒頭でも紹介したとおり、ポールさんはメルマガ&オンラインサロン「米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている。登録後10日間は無料だ。米国株投資をしてみたい、すでにしているけどもっと現地からの情報が欲しい、ポールさんが推奨する個別銘柄やポートフォリオを見てみたいという人は、こちらをぜひ登録してみてほしい。
(ザイ投資戦略メルマガ)
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。
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