今回は私が株式投資信託を買うときに注目するポイントを紹介したいと思います。ポイント分析に際しては、例として、フィデリティの有名なContrafund(フィデリティ・コントラファンド 運用実績50年以上のフィデリティを代表するファンド。日本では、「フィデリティ・米国株式ファンド」がほぼ同様の値動き)を使いたいと思います。
[参考記事]
●高いアクティブファンドの手数料を節約する米国株だからできる究極の割安投資方法とは? 回転率からみるよいファンドの選び方も伝授
(1)まずは手数料(販売手数料、信託報酬)に注目します。
手数料はなるべく低いものがいいと思います。私は1%以上の信託報酬の株式投資信託は、特別なファンドでなければ通常、買いません。特別というのは、たとえば、流動性が低い投資対象(例:インド小型株、ニッチな新興国株)に投資するファンドです。
フィデリティのContraFundは信託報酬が0.55%です。これは絶対値としては割と手頃な数字だと思いますが、SPYというETF(上場投資信託)の信託報酬、0.0945%と比べると高いです。しかし、その信託報酬の差、約0.45%を株式を運用して得るアルファ(※)でカバーすることは、そこまで難しいわけでもないので、大丈夫だと思います。
(※編集部注:「アルファ」とは、投資信託や個別株が市場平均に対して、どれだけ超過リターンを得られたかということを示す指標)
たとえば、アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信の信託報酬は1.727%です。これはContraFundやSPYと比べると、かなり高いものになります。
個人向けのファンドで、毎年安定的に出せるアルファは3%あればかなりいい方になります。なので、信託報酬が3%ぐらいだと、ほとんどアルファは帳消しになってしまいます。これなら、インデックスファンドを買った方がいいことになります。
また、特別な理由がなければ、販売手数料がかかったり、解約時に手数料がかかったりするファンドは基本的に買いません。
(2)評価会社のファンドレーティングなどは過去のパフォーマンスに左右されすぎているので頼りにしません。参考までとします。
ファンド評価会社はファンドの過去のパフォーマンスに重きを置いて評価しています。しかし、株式は平均へ回帰する傾向があるため、ある年にすばらしいパフォーマンスを残したファンドは次の年に苦戦する可能性があります。
レーティングを見る場合は、ファンドのリスク(変動性)をあわせて見なければいけません。
(3)そのファンドがベンチマークとしているインデックスに連動するETFを見ます。
そのファンドがベンチマークとしているインデックスに連動するETFは上場しているでしょうか? もし、そのようなETFがあれば、ファンドとETFで手数料がどのぐらい違っているか、見てみましょう。
(4)好パフォーマンスを出していてもいいファンドとは限りません。
ETFであれば、ファンドの成績がどれだけインデックスと乖離しているか、見てみましょう。インデックスよりも、かなり好パフォーマンスを出していたらいいというわけではありません。ETFはインデックスと連動させることを趣旨としたものであり、インデックスから乖離しているのはいけません。
また、たとえば、高配当ファンドなのに、成長株ばっかり持っていて好成績を出したとしても、いい評価はできないと思います。またはバリューファンドなのに成長株ばっかり持っていて好成績を出していれば、それも良くないことです。
それと、特別な理由がなければ、現金の割合が大きいファンドも良くないと思います。ファンドの信託報酬は純資産総額に対して何%といった形でかかります。つまり、そのファンドが現金を多く持っていれば、その部分に対しても信託報酬がかかってしまいます。投資家はわざわざ手数料を払ってファンドマネジャーに現金を持ってもらう必要はありません。
流動性のない株をたくさんもっているのならば仕方がない面もありますが、流動性の高い株を投資対象としているファンドであれば、現金の割合が大きいことは評価できないと思います。
(5)ポートフォリオ回転率が100%以上あるファンドは良くないです。
ファンドは回転率が100%以上あると、たいていはいいパフォーマンスが出せません。これは経験上、そのように言えます。フィデリティでは、回転率が100%以上のファンドマネジャーには注意するようにしていました。そうすると、ファンドマネジャーはどうして回転率がそこまで高いのか、説明しなければいけませんでした。
[参考記事]
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(6)ファンドマネジャーのバックグラウンドを確認します。
そのファンドのファンドマネジャーはどういう人でしょうか? ファンドはどんな人がファンドマネジャーになっているかで大きく変わります。
チーム運用であれば、どういうチームでしょうか? ファンドマネジャーは途中で変わりましたか?
もしもあなたが検討しているファンドが中国株ファンドだったら、そのファンドを運用しているファンドマネジャーは中国語を話せるでしょうか? 中国での経験はどれぐらいあるでしょうか?
たとえばS&P500をベンチマークとしたファンドを運用しているファンドマネジャーで英語を話せない人はいないと思います。同じく、中国株を運用しているのに、中国語ができない人がファンドマネジャーであれば、かなり能力の高いアシスタントがいない限り、ハンデになると思います。
今回は、ファンドを買うときに考えるべきポイントをいくつか簡単に挙げてみました。これらのことが読者のみなさんのお役に立てば幸いです。
最後に、証券会社の営業マンの話を鵜呑みにすると損すると思います。なぜかというと、営業マンにとっては手数料が一番大きなインセンティブになっているからです。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
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