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多くのメディアが挙げる日本株上昇の理由は誤りだ。バフェットの日本株投資は関係ない!日本株上昇の真の理由とは?

2023年6月28日公開
ポール・サイ
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日本株の上昇が話題に。日本株上昇の真の理由とは?

 このところ、日本株の上昇が結構話題になっています。日経平均は6月26日までの1年で27.21%、3年で48.26%、5年で47.73%上昇しました。

日経平均・月足日経平均チャート/月足・5年(出典:SBI証券公式サイト) ※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます

 多くのメディアがその理由として、今の日本ではコーポレート・ガバナンス改革が進んでいること、ウォーレン・バフェットが日本に投資していることなどを挙げています。

 しかし、私はそうではないと思います。

 日本企業の根本的なところに変化はありません。一番大きく変わったのは為替です。円安になったのです。

 日本の株価指数は米ドル/円レートと強く相関しています。日本株で上昇している企業には輸出企業が多く、基本的に円安になるとそれらの企業には追い風です。

 また、円安によって日本のデフレ脱却が確固としたものとなり、インフレ時代に入りそうということがあります。

 誤解のないように先に書いておくと、インフレそのものが企業の利益に直結するとは限りません。また、私は今、トルコを旅行していますが、トルコのように悪いインフレになると、景気は悪くなります。

 けれど、インフレは企業が投資などを増やし、イノベーションを進展させやすくするため、本質的な企業成長の起爆剤になり得るものと言えます。

 一方、メディアが報道しているコーポレート・ガバナンスなどの改善は日本株を米国株に追いつかせただけと言えるでしょう。

為替の影響は、外国株でも日本株でも結局、似たようなことに…

 ところで、外国株投資を評価する際は、為替を考慮しないといけません。同じ通貨で比較しなければ、実際に投資家が得られるリターンとは異なる数値が出てきます。為替込みのリターンは実際に投資家が得られるリターンです。

 先ほど述べたとおり、日本の株価指数は米ドル/円レートと強く相関しており、日本株の主力である輸出企業には円安は追い風です。逆に円高になれば、日本株は下落すると考えられます。

 私は為替は、中長期で円安になると考えていますが、それは日本人が外国株へ投資した際のリターンをアップさせることになります。

 仮にその見通しが間違っていて、これから円高トレンドに転じるならば、外国株のリターンはその分、減ってしまいますが、前述したとおり、日本の株価指数は米ドル/円レートと強く相関しているため、日本株も外国株と似たような感じで為替の影響を受けることになります。

ドルベースで比較すると、日本株は直近1年では米国株に追いついたが、長期だと大きな差をつけられている

 為替込みで米国株と日本株のリターンを見てみると、日本株は過去1年で見て米国株に追いついただけで、長期の3年、5年、10年ではまだ大きな差が残っています。

 ドルベースで米国株指数と日本株指数のリターンを比較してみましょう。

 過去1年だと、SPY(S&P500連動のETF)は17.6%の上昇で、EWJ(米国上場のMSCI Japanに連動するETF)は17.44%の上昇でした。

 これが3年だと、SPYは45.9%の上昇、EWJは12.73%の上昇です。5年で見ると、SPYは71.58%の上昇、EWJは12.03%の上昇です。10年だと、SPYは227.1%の上昇、EWJは60.12%の上昇です。

 このように、EWJは直近1年ではSPYに匹敵するリターンを出していますが、もっと長期の3年、5年、10年で見ると、かなり大きな差をつけられています。

 これはなぜでしょうか?

日本株が米国株に長期的に大きな差をつけられた理由とは?

 私から見ると、日本株には、イノベーションを起こす力が強い銘柄が米国株と比べてかなり少ないです。日本株には強いテック系企業があまりありません。日本で強いのは従来型の企業で製造業や素材の会社などです。

[参考記事]
米国株に投資する意義はどこにある?なぜ、イノベーションは米国で起こりやすいのか? その根本的な2つの理由とは?

 そういう企業はソフトウェア企業、ネット企業、設計を中心としたアセットライト(※)な企業(アップル(AAPL)、エヌビディア(NVDA)など)と比べて利益の増え方が緩やかになります。

(※編集部注:「アセットライト」とは、資産(アセット)の保有を抑えていて、財務面の負担を軽くする経営のこと)

 なぜでしょうか。

 たとえば、マイクロソフト(MSFT)がソフトウェアを1つ多く売ったとしましょう。ソフトウェアですから、それで原材料費が余計にかかることはなく、コストが増えるわけではありません。なので、このような会社は限界利益率(※)が高いのです。

(※編集部注:売上高から変動費を引いたあとに残る利益が「限界利益」であり、「限界利益率」とは、売上高に占める限界利益の割合)

 けれど、日本の株価指数は限界利益率が低めな製造業が多いので、S&P500と同じリターンを出すことは難しいのです。さらに先ほども述べたとおり、日本企業と米国企業ではイノベーションを起こす強さにも違いがあります。

バフェットが日本の総合商社へ投資した理由とは?

 私は日本株に投資すべきではないと言っているわけではありません。日本にもしっかりした技術、強みを持っている企業はたくさんありますので、ミドルリターンは期待できるでしょう。

 日本株はインデックス投資をしていればいいということはなく、個別企業への投資を考えることが米国株以上に重要です。

 たとえば、バフェットが日本株に投資したといっても、実際はグローバル企業の総合商社に投資しています。バフェットは単純に日本株がいいと思って日本の総合商社に投資したということではないと思います。

 世界で商売している総合商社なのに、本社が日本にあるため、株価が少しディスカウントされている一方、日本の金利は低く、円が安く調達できるので、バフェットは日本の総合商社へ投資したのだろうと思います。そんなふうにして、日本株の中から選別していく必要があると思います。

[参考記事]
なぜ、バフェットは日本の商社株に投資したのか? バフェットは銀行株をまだ買わない。バークシャーの株主総会でわかったことは?

日本株は長い上昇トレンドを続けられる? 続けられない?

 日本株は円ベースでかなり上昇したと見えても、日本企業や日本の経済環境は根本的には大きく変わっていません。

 日本株全体がこれから5年、10年と長い上昇トレンドを続けていくためには、コーポレート・ガバナンスの実質的な改善(たとえば敵対買収の成功)、イノベーションの進展などが必要です。今までのコーポレート・ガバナンス改革はどちらかというと、本質的な変革が少ないと思います。

 日本企業にこのような変化が起こらない限り、日本株のトレンドは今までの平均的なところへ回帰していくでしょうし、日本株と米ドル/円レートとの強い相関関係には変わりがないと思います。

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。

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