経済番組にトルコから生電話出演! 通貨安とハイパーインフレに悩むトルコ。日本も通貨安とインフレになる中、日本人ができる対策とは?
2023年6月27日(火)、米国・シアトルからメルマガ&オンラインサロン「米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている元フィデリティ投信トップアナリストのポール・サイさんが、ストックボイス社が手掛ける経済・マーケット番組「WORLD MARKETZ」(TOKYO MX 月~金 22時~23時)に生出演した。
前回の放送では、これから一気に発展するAIの恩恵を受けやすいのは、大型テック株やテスラなどで、AIはこの先、3年、5年、10年と息の長いテーマとなると語ったポールさん。
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今回の放送は、ポールさんが在住するシアトルからではなく、なぜかトルコからの生電話出演に。トルコのホテルや食事、バザール(商店街)、モスクなどの様子を紹介し、通貨安、ハイパーインフレに悩むトルコのこれまでの金融政策と、現在の金融政策を解説。トルコと少し形は違うものの、通貨安やインフレになっている日本で、日本人ができる対策は何なのかを教えてくれたので、さっそくチェックしていこう。
ポールさんは欧州旅行中で、現在はトルコに滞在中。シアトル在住アナリストではなく、世界を股にかけるアナリストに肩書を変更!?
番組冒頭は、シアトルに在住するポールさんが今回なぜ、トルコから生電話出演しているのかの話題に。
ポールさんは6月から7月にかけて、お子さんたちと一緒に欧州旅行中とのこと。今はトルコのイスタンブールにいて、翌日はギリシャ、そのあとイタリア、スイス、ドイツ、チェコ、オランダと周り、最後はイギリスのロンドンからシアトルに帰るという計画のようだ。
この話を聞いて「うらやましい! 私も行ってみたい!」という気持ちがあふれ出るかのように、キラキラした顔が止まらなかったのが、アシスタントの木村カレンさんだ。
木村さんはこの番組で、ポールさんのことを「シアトル在住アナリスト」と紹介しているのだが、以前もカリブ海から出演していたし、今回もトルコから出演ということで、シアトル在住と言うより、「世界を飛び回るアナリスト」と言ったほうがいいのではないかと提案した。
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これには、番組MCの渡部一実さんも、「世界を股にかけるアナリスト」に変えて、シアトル在住を取りませんか、とノリノリで話を進めていた。
ポールさんのトルコ観光の写真に、木村さんや渡部さんはうらやましそうなリアクション
そんなこんなで、ポールさんはトルコのイスタンブールに滞在中なわけだが、現地ではモスクやバザールに行ったり、電車に乗って街の風景を見たりしたそう。
以下は、ポールさんが番組に提供したトルコ観光の写真だ。木村さんや渡部さんは「すてき!」「おいしそう!」「あらまあ」と、うらやましそうなリアクションを見せていた。
インフレは低金利で対策できるという、エルドアン大統領の対策が効かずに、通貨安、ハイパーインフレに。2018年の物価は、今の10分の1未満
続いては、そんなトルコの物価の話題に。
トルコと言えば、インフレ、通貨安、経済政策めちゃくちゃという印象があり、トルコ中銀が政策金利を8.5%から15%に引き上げたものの、トルコリラ安は止まっていないと渡部さん。
インフレインフレと言われているが、実際にトルコでモノを買ったり食べたりして、どうですかとの問いに、ポールさんはまず、トルコのエルドアン大統領のインフレ対策から説明を始めた。
エルドアン大統領は、インフレは低金利で対策できると言っていたが、それが全然効かずに、通貨安、ハイパーインフレになっていたとの話に、渡部さんも「謎ですね」と相づち。
ポールさんが泊っているホテルに、オガワさんという方が2018年に旅行した際の体験記が、『地球の歩き方』という本に書かれていて、それを見ると、2018年の物価はなんと、今の10分の1未満だったそう。それだけモノの値段が上がっていることをポールさんは実感して、木村さんも「えーっ!」と悲鳴を上げていた。
そして、ポールさんがバザールに行くと、3種類の店がほとんどだったそう。3種類の店というのは、バッグの店、金と宝石の店、ビットコインの店で、ハイパーインフレでも価値を保つモノを、トルコ人は好むのかなとポールさんは分析していた。
また、トルコリラは、米ドルを持っている人にとって特に安く、ユーロを持っている人にとっても安いとポールさん。そういった旅行者は、トルコの物価の安さを感じていて、買い物をするときも値段をそんなに見なくていいくらいだそうだ。
そして、それは米ドル/円が144円まで上昇した日本にも、同じことが言えるとポールさんは指摘した。
トルコ中銀が金利を引き上げて通貨を守るという姿勢は、一応正しい政策
先ほど書いたとおり、エルドアン大統領が、インフレは低金利で対策できると言っていた時代から、6月22日(水)に、トルコ中銀が2年3カ月ぶりに利上げを行い、政策金利が8.5%から15%に引き上げられたのだが、トルコリラ安は止まっていない状況だ。
それでもポールさんは、金利を引き上げて通貨を守るという姿勢は、一応正しい政策だとコメント。トルコ中銀の総裁も、元米銀幹部だった女性に変わったため、もう少し良くなるとは考えているようだ。
その反面、金利の引き上げで景気はスローダウンするし、ある程度プレッシャーがかかることになるので、庶民にとっては大変だという。
そもそも、庶民はいままで、ハイパーインフレで大変だったとポールさん。貯蓄をトルコリラで持っていると、価値がゼロに近くなるという大変さは、どんな方でも自分の事としてイメージするだけでゾッとするだろう。
それが、これからは反対に金利高になるということで、それもまた大変だとポールさんは考えているのだ。
トルコの景気は、ポールさんが実際に見た様子だと、値段が安かったり、金や宝石の店が多いといったことはあるものの、乞食がたくさんいたり、犯罪が多かったりするわけではないため、表面上悪い感じはしないようだ。ただ、ガイドさんに話を聞くと、最近はかなり大変だと言っていたとのこと。
庶民の大変さはすぐによくはならないけれど、金融政策は一応正しい対策なので、時間はかかるけれどいつかは良くなると思うと、ポールさんは結論付けた。
ロシアが内戦になったら、ウクライナ戦争よりもっと大きな不安定要素に
次に、渡部さんが話題にしたのは、エルドアン大統領とロシアの関係だ。
トルコはNATO(北大西洋条約機構)に加盟しているものの、エルドアン大統領はロシアのプーチン大統領と仲が良いと渡部さん。ウクライナとロシアの戦争があって、トルコでは大地震もあったが、現地ではピリピリしている雰囲気や、緊迫感が漂っているのか気になるようだ。
ポールさん曰く、表に出ている緊迫感はないとのこと。ただ、観光地に行くと、有名なモスクがあるところなどには、機関銃を持った警察がチェックしており、入口と出口も制限されていて、テロ対策は取られているようだ。
それは日本では見られない光景で、日本人からすると心配するか安心するかわからないとポールさん。
ただ、トルコではいままで数回テロ事件があったことから、モスクなど観光客が多いところでのテロをポールさんは警戒していて、警察がチェックしているということに、ポールさん自身は安心したそうだ。
すると、渡部さんがロシアに関連して、ロシアの民間軍事会社ワグネルを率いるプリコジン氏がベラルーシに行くと言っていることについて、ポールさんは気にしているかと質問する。
ポールさんは、ロシアの事件は一番注目しているとコメント。今は終わったように見えるけれど、完全に終わったとポールさんは思っておらず、不安定な状況は続くと考えているようだ。また、プーチン大統領の弱さがはっきり出てきたため、それがすぐに落ち着くとも思わないとのこと。
ウクライナ戦争だけで、原油価格の上昇など、いろんなことが不安定になったのに、ロシアが内戦になったら、もっと大きな不安定要素になると警戒。中国、アメリカ、ヨーロッパなど、全体的な地政学リスクもすべて絡んでくるため、かなり注目しなければならず、影響は長く深くなると懸念していた。
トルコの通貨安やインフレは、少し形が違うものの、日本にも当てはまる。その対策は分散投資しかない!
トルコやロシアの例から考えても、1つの通貨や1つの国の株に資産を集めるのではなく、分散投資をしたほうがいいというのが、ポールさんの考えだ。
これまでの日本はデフレで、地政学的にもある程度安定していたため、預金に置いておくだけでも大丈夫だったけれど、今は円安などで防波堤が崩れ始めており、預金だけで安全ということはなく、ある程度分散させたほうがいいとのこと。
そして、ポールさんがトルコに来て実感したのは、イスタンブールは新興国といってもよくできている街で、アジアの大都市である台北、上海、北京のほか、日本の地方都市とそんなに変わらないのに、通貨安とハイパーインフレで景気に大きな影響が出ていることだ。
そんな通貨安やインフレは、少し形が違うものの、日本にも当てはまるのではないかとポールさん。日本がトルコと違うのは、外貨の借金が少なく、内部の借金が多いところだが、日本も通貨安とインフレで、庶民にじわじわ影響が出てくることを心配していた。
今は非常に値上がりしているところで、手を出しづらいかもしれないけれど、特にロシアのこともあるため、少しずつタイミングを見て、アメリカ株や世界中の通貨に分散したほうがいいと、真剣に語ってくれた。
トルコの人がトルコの株とトルコの通貨しか持っていなかったら、大変なことになるというポールさんの意見に、渡部さんも深く納得。
同じことが日本に起きてもおかしくはなく、日本は金利を引き上げることに企業や社会が耐えられるかは未知数で、そうなると通貨がもっと安くなるかもしれないとポールさん。その対策としては分散投資しかないと結論付けた。
世界を股にかけるFIREアナリスト、ポール・サイさん
最後に、ポールさんがトルコの株や債券を持っているのかどうか、渡部さんが質問すると、ポールさんは一時期トルコのETF(上場投資信託)を持っていたけれど、今は持っていないとコメント。
トルコがすごく悲観されたときに、もしかしたら大丈夫かなと思ってETFを持っていたものの、エルドアン大統領の政策に同意できず、持つのをやめたとのことだった。
番組終了間際、木村さんが「ありがとうございました。シアトル在住アナリスト、ポール・サイさんでした」と締めくくろうとすると、渡部さんがすかさず、シアトル在住の肩書を取る話を思い出し、「世界を股にかけるFIREアナリスト、ポール・サイさんです」と突っ込んで、番組は終わったのだった。
ここまで、6月27日(火)放送の「WORLD MARKETZ」に電話出演した、ポールさんのマーケット解説を中心にお届けした。
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(ザイ投資戦略メルマガ)
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中
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