「勝者のゲーム」と資産運用入門

金融引き締めで米国など先進国で逆イールドが蔓延。景気後退のシグナルだが世界的な景気減速は回避か。金融緩和&円安で投資妙味が高い日本に資金流入続く太田忠の勝者のポートフォリオ 第91回

2023年7月4日公開
太田 忠
facebook-share
x-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

米国の逆イールドは42年ぶりの大きさとなる-1.06%まで拡大!

 米国の逆イールドは6月30日に-1.06%まで拡大した。米国債の2年物と10年物の金利差は、通常は10年物の金利が2年物の金利を上回るという「順イールド」になる。しかし、その反対の現象である「逆イールド」が起き、金利差が-1.0%を超えるレベルが6月下旬から定着しているのだ。

 2年債の利回りが10年債を上回る逆イールドが発生したのは2022年3月29日だ。2019年の夏以来となる約2年半ぶりの出来事だった。あれから1年3ヶ月が経過した今、逆イールドはますます大きくなっている。6月30日時点の逆ザヤの-1.06%は、今回の逆イールドで最大レベルであり、1981年以来42年ぶりの大きさとなる。

 通常、債券の利回りは年限が長くなるほど返済リスクを踏まえて金利は高くなる。将来の経済や物価が不確実で見通せない分、投資家は高い利回りを求めるからだ。そのため1年債よりも3年債、3年債よりも10年債、10年債よりも20年債の方が利回りは高くなる。当たり前の話だ。今起きている2年債の利回りが10年債の利回りを大きく上回る現象は普通は考えられない。どうしてこのようなことが起きているのだろうか?

逆イールドは景気後退のシグナル。過去の多くがこの経験則に従ってきた

 理由は、短期金利は足元の金利動向の影響を受けやすく、長期金利は長期の景気見通しの影響を受けやすいからだ。足元の金利動向とはずばり、米連邦準備理事会(FRB)の政策金利である。フェデラルファンド(FF)金利は2022年3月にゼロ金利(0.0%~0.25%)を解除した後、ものすごい急ピッチで利上げし現在は5.0%~5.25%まで上昇。実に5.0%もの金利上昇である。急ピッチで利上げをする目的は、急速に進展しているインフレ抑制のためである。この利上げに大きな影響を受ける形で短期金利は急騰。一方、長期金利は景気見通しの影響を受けるため「こんなに金利が上がれば景気は減速するだろう」との観測が強まり金利上昇が抑えられる。中長期的な景気減速と、それに伴う利下げを同時に織り込んでいるのだ。

 一般的に逆イールドは「景気後退のシグナル」と解釈される。FRBが金融引き締めに動くことで景気が冷え込む展開を投資家が読み取り、債券市場で起こった現象が時間をおいて、その後の景気動向に反映されるからだ。過去の動きを見ると経験則に従うことが多い。逆イールドは実際の景気後退の1~2年前に発生している。2000年代初頭のITバブル崩壊やリーマン・ショックの前にも出現していた。直近では米中貿易摩擦が激化した2019年に一時発生し、その後の新型コロナ感染拡大で世界経済が大幅なマイナス成長に陥った。

先進国で蔓延する逆イールド。主要10カ国中、日本を除く9カ国で発生

 実はこの逆イールドは米国だけではなく先進国で蔓延している。「G10」と呼ばれる主要先進10ヵ国のうち、日本を除く9カ国で債券の長短金利の逆転が発生する異例の事態が起きている。インフレが長期化する中、先進国の中央銀行は大幅な利上げを行っており、金融引き締めが継続している。逆イールド拡大で景気の先行きに対する警戒感が一段と増している。英イングランド銀行は6月22日に政策金利を4.5%から5.0%に一気に0.5%引き上げた。米国と同じレベルである。逆イールドの深さもカナダで-1.2%、ドイツで-0.75%と非常に大きくなっている。

 肝心の米国景気だが、先週発表された消費者信頼感指数、耐久財受注額、新築住宅販売件数などの経済指標は軒並み予想を上回り、金融引き締めが続く中でも経済は底堅い。また、FRBが実施した銀行へのストレステストの結果が発表され、大手23行が不況時でも十分な自己資本を維持可能との見通しが示され備えも十分である。本来ならば、これだけ大きな逆イールドが発生すれば、すでに景気のあちこちに綻びが見られ、マーケットも身構えるはずなのに、2023年の年初からのパフォーマンスを見るとNYダウは+3.8%とプラスを堅持、ナスダックに至っては+31.7%と大幅高となっている。1983年以来、40年ぶりの上昇率だ。

金融引き締めでも米国経済は底堅い。深刻な景気後退は回避されそう

 格付け大手フィッチ・レーティングスは6月21日に、2024年の世界の成長率見通しを従来の2.4%から2.1%に引き下げた。「金融政策の調整とそれが経済に及ぼす影響が長期化する」との見方からだが、この程度の減速ならば「堅調な経済成長が続く」と表現した方がよさそうだ。インフレも鈍化する兆しが見えており、経済に悪影響を及ぼすショックは弱まりつつある。米国の-1.06%もの逆イールドは数字こそ非常に大きいが、これはやはり短期で最速ペースで大きな利上げをおこなった面が色濃く出ているのが要因であって、実際の景気減速は「それほどでもない可能性が高い」というのが私の見方である。

 ところで、為替市場ではドル円レートが再び145円を付けて円安が加速している。FRBはあと2回の利上げを行う可能性を示し、一方の日銀は大規模金融緩和を継続するという対照的なスタンスの違いから日米金利格差が拡大していることが背景にある。2022年10月21日に151.94円という円安を付けたものの日銀による為替介入で円高へ転換。今年1月16日には127.21円まで押し戻されたが、そこからほぼ一直線で円安が進行している。「再び為替介入されるのではないか?」「そろそろレートチェックがあるのでは?」と為替トレーダーはやきもきしていると思うが、こちらの動きも目が離せなくなってきた。日本企業の業績や株式市場にとって為替はもはや重要な要素ではなくなってきているのはご存知だと思うが、海外投資家からすれば「日本の資産を魅力的にしているのは円安」という見方は根強くある。

利益確定売りで下押しも、個人投資家の買い意欲高まり日本株は好調持続

 6月第3週の海外投資家は3604億円を売り越し、13週ぶりに売りに転じた。12週連続での買い越し累計額は6兆1000億円で、その6%にあたる。日経平均株価は12週間で6300円もの急ピッチな上昇となっていたため、6月末の需給悪化を見越して利益確定売りとなった。あくまでもポジション調整であり、海外投資家の「日本買い」の流れは終わっていないと見るべきだ。一方、個人投資家は3446億円の買い越しとなり、4月の第1週の2103億円以降初めて顕著に大きな買い越しとなった。今更ながら「おぉっ!」という感じだ(笑)。なお、日本の年金基金の売買を反映する信託銀行は4074億円の売り越しで、売越額は前週(821億円)の約5倍だった。リバランス目的の売りが顕著だったことがわかる。

テンバガー(10倍株)候補を組み入れ。詳細は7月5日のWebセミナーで

 さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」。先週は週間&月間ベースでの過去最高値を更新した。来たるべき金融相場に向けて6月は新興系グロース株を3銘柄組み入れた。もちろんテンバガー、すなわち10倍株の候補だ。着々と準備を進めていることがおわかりいただけると思う。

 いよいよ7月5日(水)に毎月恒例のWebセミナーを20時より開催する。テーマは『金融相場に向けて着々と準備中』。海外投資家の現状と見通し、金融相場に向けた投資戦略、今後大きなパフォーマンスが期待される個別銘柄についても詳しく解説。セミナー後半では皆さまからのすべてのご質問にお答えする形で進めていく。会員限定だが、10日間無料お試し期間中でも参加可能。セミナー当日14時までのお申込み(15時URL配信)。毎回大きな盛り上がりを見せているが、誰でも参加できるのでご都合がよろしければぜひどうぞ。非常に重要な話をするので、多くの皆さまのご参加をお待ちしております。

●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。

※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。

 

国内外で6年連続アナリストランキング1位を獲得した、
トップアナリスト&ファンドマネジャーが
個人投資家だからこそ勝てる

「勝者のポートフォリオ」を提示する、
資産運用メルマガ&サロンが登場!

老後を不安なく過ごすための資産を自助努力で作らざるを得ない時代には資産運用の知識は不可欠。「勝者のポートフォリオ」は、投資の考え方とポートフォリオの提案を行なうメルマガ&会員サービス週1回程度のメルマガ配信+ポートフォリオ提案とQ&Aも。登録後10日間は無料!

太田忠の勝者のポートフォリオ

10日間無料 詳細はこちら※外部サイトに移動します


一番売れてる月刊マネー誌『ダイヤモンド・ザイ』の“決算入門講座”が開講!詳しくはこちら!
ダイヤモンド・ザイのウェブ会員登録はコチラから 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
moomoo証券は「米国株」投資におすすめの証券会社! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
moomoo証券は「米国株」投資におすすめの証券会社! マネックス証券の公式サイトはこちら 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

株主優待
人気株500激辛診断
最新理論株価

11月号9月20日発売
定価990円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[株主優待/人気株500激辛診断]
◎巻頭特集
優待の達人へのアンケートでランキング!
目的別株主優待カタログ88
●桐谷さんは優待新設ラッシュをどうみる?&
実際に買った優待新設株35銘柄

●2大優待賢人ようこりん&桐谷さんが語る
暮らしも投資もトクする株主優待の魅力」
●ようこりんが大盤振る舞い!
株主優待BIGプレゼント
<家計応援優待>食品/日用品/買い物
●<プチ贅沢優待>グルメ/レジャー・エンタメ/リッチ雑貨

◎第1特集
買っていい高配当株は98銘柄!
<2025年秋>
人気の株500+Jリート14激辛診断
●儲かる株の見つけ方[1]旬の3大テーマ
業績の初速好調で上ブレ期待/株価出遅れで上昇余地大/値上げが順調などインフレに強い
●儲かる株の見つけ方[2]5大ランキング
第1四半期の進捗率が高い/アナリストが強気/配当利回りが高い/初心者必見の少額で買える/理論株価より割安
●2025年秋のイチオシ株
10万円株/高配当株/株主優待株/Jリート
●気になる人気株
大型株393/新興株86/Jリート10

◎第2特集
関税の影響は?AIってどこまで浸透?
人気の米国株150激辛診断[2025年10-12月]

●米国在住プロのリアルレポート
●GAFAM+αの8銘柄を定点観測

●買いの注目優良株&高配当株
●人気の124銘柄の買い売り診断
ナスダック49/ニューヨーク証券取引所
●株価10倍を狙う!米国IPO株

◎第3特集
大幅上昇を狙う!
未来を変える革新的な企業を買う投資信託

●テーマ型投信に投資するメリットと注意点
●最新テクノロジーはすべての土台!半導体/AI

●次世代を担う最有力テーマ!宇宙/ロボット
●いま勢いのあるテーマに乗る!暗号資産/エンタメ/サイバーセキュリティ

【別冊付録】
増益予想で割安な株は1501銘柄
上場全3889社の最新理論株価

◎連載も充実
​●読者参加型企画・1カ月で上がる株を当てろ!
「エア・ウォーターが1番!任天堂は利益確定売りで失速」
●ZAiのザイゼンがチャレンジ!目指せ!お金名人Vol.14
「後払い決済のトラブルに注意」
●17億円トレーダー・ジュンのFX成り上がり戦略Vol.09
「大相場を生む『要人発言』」
●おカネの本音!VOL.39 小川コータさん
「マイクロソフトにフリック入力を売却した発明家の稼ぐ思考法」
●株入門マンガ恋する株式相場!VOL.107
「添い遂げる!? 生成AIと米国企業」
●マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
「大幅値上げは不可避!日本の水インフラは深刻な危機」
●人気毎月分配型100本の「分配金」データ!
「株価上昇や円安で利回り10%超が16本と急増!」


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報