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米国企業と比べ日本企業はガバナンスに問題あり!東証がいくら「PBR1倍割れ改善」を要請しても今のままならうまくいかない!

2023年9月6日公開
ポール・サイ
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 今回は日米の株式会社における株主が持つ力とガバナンスについて、書いてみたいと思います。

アメリカ企業は株主の事実上の力が強い。その一方、日本企業は会社を社員、お客さん、株主で共有している

 短中期的には株主の声が弱ければ、社員は解雇されづらく、より安定した状態でいられますが、中長期的には株主の声が弱く、ガバナンスが効いていなければ、会社はいずれ傾くことになって、社員は仕事を失うことになるでしょう。

 アメリカの場合、会社はどちらかというと株主の事実上の力が強く、会社は株主価値を創出するためのものと言えます。

 一方、日本の場合、ステークホルダー資本主義で、会社は社員、お客さん、株主で共有しているものになります。なので、投資家の視点から見ると、株主になるなら、米国株の方がいいことになります。株主の実質的な力が強くなければ、会社が儲けても、株主はあまり儲からないことがあるからです。

アメリカの株式会社における取締役会と株主の関係は、アメリカ大統領選における選挙人と有権者の関係に似ている

 先ほどアメリカ企業について、「株主の力が強く…」ではなく、「株主の事実上の力が強く…」と書いた理由は、法的な意味での「株主が持つ権利」は日本の方が強いからです。

 たとえば、アメリカではほとんどの株主提案は取締役会に対して「アドバイザリー」(勧告)の形をとります。つまり、ある提案に対して過半数の議決権行使があっても、法律上、取締役会はそれを無視することが可能なのです。

 ただ、アメリカの取締役会は独立取締役に支配されているので、問題視されている重要な課題があれば、株主提案でそれが指摘される前に取締役会は動こうとするものです。

 もう1つ、アメリカでは訴訟を起こす文化があって、取締役会が株主を無視したら責任を追求される恐れがありますので、取締役会は株主の意思に従うことが多いのです。

 アメリカの株式会社における取締役会と株主の関係は、アメリカ大統領選における選挙人と有権者の関係に似ているかもしれません。

 アメリカの大統領選は有権者の投票で直接決まるのではなく、最終的には各州の選挙人の投票によって決まることになっています。各州の選挙人は有権者による各州の選挙結果に通常は従いますが、厳密に言うと、それに従わなくてもいいのです。

日本では問題があっても、株主主導での社長交代はほとんどない

 日本の公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)のファウンダー、ニコラス・ベネシュによると、アメリカの場合、社長交代は2年連続で選任支持率が90%を割り込むのを待つまでもなく、業績が悪化したり、倫理的な問題があれば、割と早めに行われるということです。

 一方、日本では問題があっても、株主主導での社長交代はほとんどありません。社長交代があったとしても、社内の事情で決められることがほとんどです。

 以下のグラフは日本企業のCEOの平均選任支持率の推移を示したものですが、グラフが示すとおり、2023年にはこの平均選任支持率が著しく低下しました。にもかかわらず、社長交代はほとんどありませんでした。

CEOの選任支持率出所:公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)、GoToData データベース

 2023年の90.5%というCEO平均選任支持率の数字は一見するとそこまで低く見えないかもしれませんが、日本では個人以外の友好的な株主の割合が高いため(以下のグラフが参考になります)、独立性がある株主のみで考えると、90%という数字は実質的には結構低いものになると私は推測しています。

所有者別状況出所:公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)、GoToData データベース

アメリカのガバナンスは一段と株主寄りになっているが、日本のガバナンスはそうはなっていない

 もう1つ、少し古いものですが、Peters and Wagner(2014)の論文で使われたデータを紹介したいと思います。

 2007年に日本では448件の社長交代がありました。そのうち、強制交代の割合は18%でした。アメリカの場合は190件のうち、30%が強制交代でした。

 2000年から2007年のデータを見ると、アメリカの場合、社長交代に占める強制交代の割合がおおよそ日本の倍になっていました。アメリカの場合、社長交代のスピードが速いのです。

 アメリカでは、金融機関による企業の株の持ち合いが禁じられており、企業の主な株主は個人投資家、機関投資家(年金・投資信託など)です。このタイプの株主は高いリターンを得ることのみが保有目的ですので、ガバナンス、経営に対する要求はその目的に従ったようなものになります。

 なので、アメリカ企業のガバナンスは一段と株主寄りになっているのですが、日本企業のガバナンスはそうはなっていないのです。

東証による「PBR1倍割れ改善要請」はうまくいくのか?

 日本はPBR1倍割れの会社が多く、東証は日本企業のガバナンスをアメリカ企業のようなガバナンスに変えることなどで、低いPBRを底上げしようとしています。しかし、前述したような株主構成が変わらない限り、日本企業のガバナンスが変化することは考えづらいと思います。大きな利害関係が裏に存在しているからです。

 私たち個人投資家の利害関係は大手銀行・企業などと同じではありません。そして、ガバナンスは企業にとって重要であり、それゆえに株の長期パフォーマンスにとって重要です。

 株主主導のガバナンスに変化しない限り、日本の株式市場は個人にとって不利でしょう。一方、アメリカ企業のガバナンスは株主寄りであり、その度合いは世界一です。米国株が長期投資の対象にふさわしい存在である理由はいくつかありますが、ガバナンスが優れていることもその1つと言えます。

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。直近1年の推奨ポートフォリオが+50%超の投資助言メルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。

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