今回は現在のアメリカ社会の雰囲気について書きたいと思います。
日本人は一般的に政治への関心がそこまで高くないと思えるので、気がついていないかもしれませんが、アメリカ社会では分断が深刻化しています。アメリカは今、2つの国に分裂していると言えるほどなのです。それぞれの国にはその国の真実、価値観、宗教などがあります。両者は対立し、決して妥協しません。
民主党サイドのリベラルな考え方、共和党サイドの保守的な考え方、対立している7つのポイントは?
ご存じのとおり、アメリカは民主党と共和党の二大政党制ですが、この両者が対立の2つの軸になります。そして、民主党サイドに立つ人たちと共和党サイドに立つ人たちがここまで分裂し、対立している感じはずっとなかったことです。
両者の考え方をまとめると…
●民主党サイドのリベラルな考え方、左派的な考え方のポイント
(1)税金は増やすべき
(2)企業、特にテック企業を規制すべき
(3)アフリカ系アメリカ人、ラテン系アメリカ人は優遇すべき
(4)銃規制
(5)中絶の自由
(6)性別の自由。LGBTQの権利を認める
(7)アメリカの価値観には外国も従うべき
●共和党サイドの保守的な考え方、右派的な考え方のポイント
(1)減税
(2)規制緩和
(3)人種の優遇政策はやめるべき
(4)銃の自由
(5)中絶禁止
(6)性別は男女のみ。LGBTQは優遇しない
(7)国内に集中、外交には消極的
ご覧のとおり、正反対のことがほとんどなので、来年(2024年)の大統領選は「生き方」の戦いとも言えます。トランプにはいろいろな問題がありますが、上記7点について、右派の人たちに約束していますので、トランプが勝つ可能性は少なくないと思います。
「アメリカの価値観には外国も従うべき」という民主党サイドの考え方によって、アメリカ政府は中国の政府要人に制裁を科した
アメリカがアメリカ以外の国に影響を及ぼす例として、「アメリカの価値観には外国も従うべき」という民主党サイドの考え方があります。
最近、アメリカ政府が中国の政府要人を制裁するというニュースがありました。ビザ発給を制限したのです。
中国政府はチベットの子供を全寮制の寄宿学校へ送り、中国語を勉強させて、チベット文化を抹消しようとしているとアメリカ政府は主張しています。その対抗措置として、このような制裁を科したとのことでした。
けれど、中国では、中国文化、中国語がわからないと、出世は考えられません。そう考えると、これが弾圧に当たるのか、そうでないのか、一概には言えないと思います。
そして、少し矛盾もあると思います。
アメリカには差別の問題がかなりあります。黒人をはじめとして、差別の被害を受けている人たちがいます。アメリカは、これまでかなり欧州系白人文化を優先しようとしてきました。
チベットの話はただの口実で、本当の狙いは他にある可能性もありますが、こんなふうにして、アメリカは世界でいろいろと敵を作っているのです。
グレナダの魚市場を日本が援助している背景にはアメリカの反捕鯨の姿勢がある
このところご紹介しているとおり、私は今、カリブ海の島国、グレナダに来ていますが、ここグレナダでも、アメリカがその価値観を自国以外の国々に押しつけている影響が見えることがあります。
[参考記事]
●似たような島なのに、なぜカリブ海の島国グレナダは工業発展できず、台湾では最先端工業が発展したのか? その重要な3つのポイントとは?
●本格的に長期で投資したらFIREできるのに人間は短期で大儲けしたい心理になりがち。それを克服してFIREするための3つのやり方とは?
グレナダの魚市場はほとんど日本からの支援金で成り立っているのです。それはなぜでしょうか?
その背景にはアメリカが捕鯨に反対していることがあります。アメリカは代表的な反捕鯨国なのです。
一方、日本では非常に古くから独自の技術で捕鯨が行われ、日本には捕鯨文化がありました。そして、日本は捕鯨を続けたいので、グレナダの魚市場を援助する代わりに、グレナダに捕鯨支持を打ち出してもらいたいということなのです。
トランスジェンダーのインフルエンサー起用によって、アメリカでシェア№1のビール「バド・ライト」に猛烈な不買運動が巻き起こった
もう1つ、カルチャー戦争の例を紹介したいと思います。
アンハイザー・ブッシュは世界有数の大手ビール会社です。同社のバド・ライトはアメリカではビールのブランドでずっとシェア1位でした。バド・ライトは共和党を支持する人たちに特に人気です。
アンハイザー・ブッシュはハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した女性をマーケティング・マネジャーとして採用したのですが、彼女は全然お客さんのことがわかっていませんでした。
トランスジェンダーのインフルエンサーであり、俳優でもある人物をキャンペーンキャラクターに起用し、その似顔絵が描かれた限定ビール缶を作るというプロモーションを行ったのです。
これにお客さんが激しく怒り、その怒りはバド・ライトの不買運動を巻き起こすこととなりました。普通の不買運動なら特に大きな影響はないのですが、バド・ライトのこの件の場合は、不買運動が業績を大きく悪化させるほどの影響を与え、親会社のアンハイザー・ブッシュ・インベブ株(米国株式市場でのティッカー:BUD)も暴落することになりました。
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